「65 大正デモクラシーと政党政治」
更新遅くなりました。
松山市内中学校の運動会、台風の影響でずいぶん延期になりました。
仕方ないとはいえ、お天気に左右されて、先生方もお弁当を準備する保護者の方々も、生徒さんも落ち着かない連休を過ごされたかもしれません。
ずいぶん延期になってしまったこと、平日実施による観覧者の声援が少なかったことで、もしかしたらモチベーションが上がりきらなかった子もいたかもしれませんが、無事開催できたようでよかったです。
関係者のみなさま、おつかれさまでした。
さて、9月13日の第10回学習会の報告です。
参加者は20名、チューターは元中学社会科教師のFさんでした。
育鵬社での範囲は
「65 大正デモクラシーと政党政治」から
「66 ワシントン会議と日米関係」
「67 文化の大衆化・大正の文化」
の6ページ(pp.216-221)。
同じ範囲を見比べてみましょう。
【東京書籍】
【学び舎】
さすがに6ページずつだとデータ量が多いですね(^^;)
ざっとページをめくって読んでみた私の個人的感想は、
育鵬社版は、「この単元、政党政治の概要と文化人の人物名を穴埋め問題にするしかテストになりそうにない」
東京書籍版は、「朝〇か毎〇新聞の文化面をを読んでいる感覚」
学び舎版は、「おばあちゃんが小さかった頃の宝物や手記を手に取って読んでいる感覚」になりました。
そして、特に資料の扱われ方が違うと感じたのは、全国の資料でした。
育鵬社版は、「演説する山田少年の写真」と「全国創立大会宣言の一部抜粋」。
東京書籍版と学び舎版は、同じく「演説する山田少年の写真」を採用していますが、その隣の資料は「山田少年の演説」内容でした。
「資料の写真にうつっているこの少年は何を語ったのか?」
中学生の頃、同じ写真を教科書で見て、こう思ったのを覚えています。
創立大会宣言の「人の世に熱あれ、人間に光あれ。」の言葉は有名ですが、中学の頃は意味がわかってなかったように思います。
それよりも年が近いこの少年が、自分と自分の環境のことをどのように感じ、考え、ことばを発したのかが知りたかったのです。
こういう意味で、育鵬社版よりも東京書籍版・学び舎版教科書の取り上げ方の方が子どもたちの目線に合わせているなと感じました。
みなさんはどう思われましたか?
そして、学習会当日に配られたFさん作成の資料がこちら。
4の各教科書の本文記述比較は、こちらの資料にまとめてくれました。
こうやってまとめたものを見ると、やはり育鵬社版の”社会運動への関心の無さ”が浮き彫りになります。
同時に、学び舎版の米騒動の資料(p.214の③)は、
「(収入の1/3以上が米の値段と)いかに米価の上昇が異常だったか」が生活実感をもってわかる、よい資料だとも気づきます。
3ページ目は、Fさんが調べてくれた「治安維持法」についてです。
本文記述ではさらっと書いてあり、怖さが伝わらないのでは?とも発言されていました。
資料4ページ目では、本文記述以外(資料コラム)の関東大震災の記述比較をまとめてくれました。
各教科書の記述内容、切込み方がここまで違うのかとびっくりします。
「など」でいろんなものを全部くくってしまうと、ある事実が隠れてしまうというおそろしさを改めて知らしめられました。
そして、学び舎版の補足資料の「虐殺された朝鮮人の人数」の調査機関ごとの数のひらき!!
学習会の意見交流のなかで、「検定教科書には”わからないことは並列表記せよ”というルールがある」と聞きましたが、
当時の政府調査が約230人に比べて、朝鮮人たちによる調査は約6650人。これはひどすぎる差別だと感じました。
流れがわかるようにと作成された年表資料はこちらです。
Fさんの発表後の意見交流では、
〇「米騒動」の呼び方について
富山の漁師の配偶者である女性たちが米価高の生活苦から立ち上がった運動である米騒動。
地元富山の研究者が、著書『女一揆の誕生』の中で「女一揆とよぼうではないか」と2008年に提起している。
前回の学習会で川岡先生が「歴史学の最近が教科書に書かれるべきだ」と言われていたが、そのとおりで、
歴史教育についても最新の研究結果に合わせた記述を取り入れていくべき、との発言がありました。
「リアリティ・地域・子どもに考えさせる」ことが大切だと思う。
固有名詞・地域・年代がわかるプリント資料を作って子どもに考えさせる歴史の授業をしたい、との発言。
〇愛媛での米騒動について
「女性史サークル」の学習会で、愛媛県内での米騒動について学んだ。
松山・松前・宇和島であったと史料で確認されている。特に宇和島では、民衆が焼き払われ死者が出るような激しいものだったと聞いたとの発言。
戦前でも、女性、特に女工さんのストライキはあった。娯楽がなかったせいか、市民が野次馬のようにストライキを見に行っりしていた。
松山の中央にある伊予かすり会館も、昔はしらかた機織りと言ってたくさんの女工さんがいた。マスコミも労働者寄りの報道をしていた、との発言。
〇治安維持法と普通選挙法の記述について
治安維持法は市民を監視する悪法で、普通選挙法と抱き合わせで通った法律だ。
学び舎でも治安維持法についての記述が少ないように思う。
治安維持法が労働運動の分裂のためにつかわれたことについてもっと記述があってもよいと思う、との発言。
〇「大正デモクラシー」の呼び方について
「大正デモクラシー」という呼び名について違和感がある。
アメリカの研究者が天皇制下の民主主義であるから「IMPERIAL DEMOCRACY(帝国主義的 民主主義)」と提唱しているのに賛同したい、との発言。
〇関東大震災の虐殺事件の記述の差について
前の版では「育鵬社はひどい、東京書籍はいいな」という感想をもっていたが、今回の学習会で「関東大震災の虐殺事件」記述の差を見てびっくりした。
主体をどう書くか?で表現がここまで変わってしまうと思わなかった、との発言。
〇石橋湛山について
大正時代のこの時期に石橋湛山を取り上げてほしいと思った。
軍部大臣武官制をやめること、参謀本部を廃止すること、貴族院を縮小させることなどを提唱したおもしろい人物。
吉野作造や美濃部達吉と一緒にあつかってもらいたい、との発言がありました。
〇山本宣治について
労働運動、農民運動を支えた山本宣治について、もっと記述があってもいいのではないか?との意見が出されました。
学び舎版教科書では、単元外(p.220-221)であつかわれています。
次回学習会は、10月11日(火)13:00より 教育会館にて。
育鵬社版教科書「69 共産主義とファシズムの台頭」から、各教科書の記述や資料の扱われ方などを比較していきます。