教科書採択を考える会ブログ

愛媛県松山市内の中学の歴史教科書が「育鵬社」版に変わるのを機に発足した会です。教科書比較の学習会も行っています。

第13回学習会「70 中国の排日運動と満州事変」 から「72 緊迫する日米関係」

2017-01-08 14:30:32 | 学習会
あけましておめでとうございます。

また報告が遅くなってしまい、申し訳ありません。
報告を書く予定だったクリスマスからの年末、風邪でダウンしておりました。

ノロウイルスも流行っていたそうですが、皆さまはご無事だったでしょうか?



12月13日の第13回学習会の報告です。

参加者は26名でした。

今回のチューターはHが務めさせていただきました。
「ただの保護者が何を発表すればいいんだろう…?」と1ヶ月間考えながらの資料作り、
元社会科教員の先生方の前で発表するという初めての経験で、もう、胃痛が再発するほど緊張しました。

特に、今回の担当は主に中国と関係する箇所で、範囲も6ページ分×3と広く…(モニョモニョ)|(; ̄3 ̄)

でも、終わってみるとよい経験をさせてもらったと思います。


では、教科書見開きから見ていきましょう。

育鵬社教科書「70 中国の排日運動と満州事変(p.226-227)」

「71 日中戦争(支那事変)(p.228-229)」

「72 緊迫する日米関係(p.230-231)」



東京書籍
「3 昭和恐慌と政党内閣の危機(p.216-217)」

「4 満州事変と軍部の台頭(p.218-219)」

「5 日中戦争と戦時体制(p.220-221)」


学び舎
「(4)鉄道爆破から始まった ー日本の中国侵略ー(p.230-231)」

「(5)問答無用、撃て ー軍部の台頭ー(p.232-233)」

「(6)戦火は上海、南京、重慶へ ー日中戦争ー(p.234-235)」


作成資料がこちらです。







発表では、資料2ページ後半から、清朝以降の中国が欧米列強侵略にどう対応し、中国国内ではどんな動きがあったのかを確認しました。
参考文献は「中国の人が書く中国史がよい」との理由で『日本・中国・韓国=共同編集 未来をひらく歴史 東アジア3国の近現代史』高文研(2005年)を選んでいます。


資料1ページから1ページ半にかけて、歴史的事実を確認した上で、それぞれの教科書を読んでみた感想、育鵬社については疑問に感じた点を???の部分で書き出しています。

史学研究している元教諭から教えていただく部分がたくさんありました。

その中の二つをご紹介します。

●育鵬社p.226 4行目の「張作霖が率いる北京政府」という記述は適切かどうか? 
 ・袁世凱の死後、当時の中国は軍閥(軍事などで支配)が支配していた。
  育鵬社は「政府」とことばを使うことで、政府と政府(=国と国)との戦いだったと印象づけようとしたかったのではないか?
  張作霖は北京・満州一帯を支配していた軍閥の有力者だった。間違ってはいないが、よい表現ではないと思う。

●p.226資料②の山東省がピンクに色塗りされている。

 1914年の第一次世界大戦後、日本はドイツから山東半島権益を引き継いだが、1919年中国の五・四運動で国民からの返還要求が高まり、
1921年ワシントン会議で「中国は日本に代償金を支払って山東半島の権益を取り戻した」(育鵬社p.218 l.6 「66 ワシントン会議と日米関係」)はずなのに、なぜか?


・どんな意図で色分けされたのかわからないが、当時の山東省は中国領土であった。

育鵬社の記述では、日本による山東出兵(1927年1928年2度)を「1928年、(中略)現地在住の日本人保護のため(p.226 l.10)」と書いているため、“山東省の領有権がまだ日本にあった”とミスリード(誤誘導)させたい意図を感じてしまう。

特に、資料の中に色分けの理由も書いていないので、ただの間違いかも。




議論では、こんな論点が出されました。

〇学び舎教科書には、きちんとタイトルに“中国侵略”と記述されている点を評価したい。
 現役教員の頃から、「教科書に“侵略”という言葉を書くな」という圧力はあったが、実際は“侵略”に相当する行為を日本軍はしてきた。
 何が本質かということを、子どもにきちんと伝えるためにもはっきりと“中国侵略”と書く必要があると思う。

〇育鵬社p.226 6行目からの記述、「…イギリスは、(略)列強に共同出兵を強くうながしました。わが国(略)応じませんでした」から、
 “日本は仕方なく”の印象を与えようとする意図を感じる。

〇教科書にウソや誤魔化したり、迂回した言い方してはダメだと思った。現役の社会科教員にも気づいてほしい、指摘してほしいと感じる。

〇東京書籍は、くわしすぎる(一単元・見開きにのせる情報量が多すぎる)と感じた。
 ポイントだけ覚える授業になってしまうのではないか?と不安に感じる。
 学び舎の教科書は、考えることができる文章である。自分なりの歴史観をとらえることができると感じた。


〇この範囲でポイントなのは、「日中戦争はなんではじまったの?」と問いをたてることと、その答えを考えること。
 育鵬社の教科書では、それができないと感じる。


〇教科書には記述がないが、1932年の第一次上海事変(作成資料5ページ参照)の買収事実について。
 最近観たテレビドキュメンタリーで、関係者がはっきりと証言していた。最新の歴史研究が教科書に反映されていないのは残念と感じる。


〇盧溝橋事件の記述では、「…条約に基づいて北京に駐屯する日本軍の部隊が、…(育鵬社p.229 6行目)」とあるが、その根拠となる条約は1900年義和団事件の辛丑条約。
 史料によると、当時日本は条約で取り決めている5倍の人数を中国の承認なしに駐屯させており、盧溝橋で勝手な演習を繰り返していたとある。
 現地で「中国軍が撃ってきた」という報告が開戦のきっかけだったが、
 実際に中国軍が発砲したかは定かではなく(筆者注:部隊長の勘違いの可能性が高いそうです)その後現地では当事者同士で解決をはかっていた。


〇東京書籍p.219 1行目「…民衆が歓迎した」とあるが、いまの安倍政権と似通っているようでこわいと思った。

〇南京事件について、育鵬社は文中記述がなく(欄外にしか記述がない)日本の加害を隠そうとしているように思える。
 あまりに残虐な内容を具体的に中学生に見せるべきではないと思うが、加害の残虐性は隠すべきではないと思う。
 その点、学び舎はp.235資料で被害について知らせており、評価できると思う。

〇東京書籍p.221 10行目の「隣組」の記述について、今の町内会に照らし合わせて考えるとこわいと感じる。
 

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