教科書採択を考える会ブログ

愛媛県松山市内の中学の歴史教科書が「育鵬社」版に変わるのを機に発足した会です。教科書比較の学習会も行っています。

第5回学習会 「60 日本の産業革命と国民生活の変化」

2016-04-23 15:05:36 | 学習会
4月12日(火)の第5回学習会では、「60 日本の産業革命と国民生活の変化」の記述を中心に学習しました。

参加者は19名、チューターは元中学校社会科教員のNさんでした。



今回学習した日本の産業革命についての記述は、他社と比較して育鵬社の特徴がよく表れている箇所だと感じました。

ちょっと比較してみてください。


育鵬社


東京書籍


学び舎





育鵬社の教科書では、労働者の生活にかんする資料が一つも無いのがわかります。

かわりに三菱財閥やトヨタ自動車の創設者となった実業家が顔写真つきで載っています。



東京書籍。

ちゃんと労働者のきつい生活のこと、具体的にわかるような記述・資料がありますね。


これは学び舎。

こちらはさらにきつい生活を具体的に想像できる資料になっています。

記述のなかでも、労働者の貧困や格差がひろがっていった様子がわかります。


育鵬社の教科書では、財閥・産業発展に肯定的で、労働者に関する記述は驚くほど少なく、一般の人々がどのような生活をしていたのかがわかりません。




ちょっと気になる記述もありました。


厳しい労働環境から労働運動や社会主義思想がひろがったとありますが、「もっと丁寧な記述が必要だ」と多くの学習会参加者から意見が出ました。

欄外には社会主義運動についての記述もあり、幸徳秋水らが死刑になった大逆事件も載っていますが、東京書籍のように無実だったと判明したことの記述はありません。

参加者からは「本文から続けて読むと『社会主義者は死刑』って書いてあるようにも読める」と指摘がありました。

『社会主義』の意味も詳しく説明しないとわからないでしょうけど、公民の授業は3年生になってからだそうです。

意味を理解する前に、悪いイメージ付けをしようという意図があるのなら問題だ、と意見が出ました。


また、まとめの課題
「資料②をみて、日本の近代産業の発展について、次の語句を使って説明しましょう(日清戦争/八幡製鉄所/日露戦争)」の質問も

「質問が誘導的で、日清戦争の賠償金収入で八幡製鉄所を建てた事実から“戦争で産業発展がすすんだ”と書かざるを得ない。

戦争を肯定的にみることにつながるから問題だと思う」と意見が出ました。




そして、育鵬社・松山の偉人が出ている箇所。


教科書採択で、育鵬社が選ばれた理由に「松山の偉人が出ているから」と教育委員が発言したそうですが、欄外にちょこっと載っていただけでした。




子どもたちの視点から考えてみても、その当時に暮らしていた人たちの生活を知ることで自分につなげて考えると、

歴史の出来事もグっと身近に感じ、理解しやすくなるのではないでしょうか。

その当時の人々の暮らしについての記述の乏しい育鵬社の教科書は、歴史事実と偉人の羅列で歴史が遠いもののように感じます。




Nさんが作成してくれた資料。


Nさんの意向で、今回は講義の時間は少なめ、意見交流に時間を割いた学習会でした。

「せっかく参加したんだから、意見を言わなきゃ!」との言葉が印象的でした。