12月14日(火) 京都地裁にてウェザーニューズ過労自殺裁判の和解交渉があります。

2010-12-12 03:03:54 | 京都POSSEの活動報告です!

今回は気象予報士の男性(当時25)が過労自殺した事件で、両親がウェザーニューズを提訴したというニュースを取り上げます。
青年気象予報士のいのちを奪った会社の責任を追及~ウェザーニューズ過労自殺損害賠償請求事件を京都地裁に提訴~

 25歳の若い男性が入社後6ヶ月のうちにうつ病にかかり、死を選ぶというのはよほどの事情があったと考えるのが自然だろう。
具体的な状況についてはこれからの裁判で明らかにされるのを待たなければならないが、ニュースから読み取れる範囲での考察を行いたい。

 過労自殺とは厚生労働省の用語によれば「客観的に精神障害を発症させる恐れのある業務による強い心理的負荷」に起因する強いストレスやうつ病などがもたらす自殺である。

〇異様な長時間労働
 本件は以下のように報道されている。

>原告側代理人によると、時間外労働が200時間を超える月もあり、千葉労働基準監督署はことし6月、「長時間労働による過労自死」と認定した。

>訴状によると、男性=当時(25)=は2008年4月に入社後、千葉市の「予報センター」で天気予報の業務を担当。早朝から夜中までの勤務でうつ病を発症し、半年後の同年10月に自宅で自殺した。

 厚生労働省の過労自殺の労災認定においては、明確に時間外労働の基準はないが、過労死の労災認定基準をみると「時間外労働が、発症前1ヶ月間におおむね100時間を超える、又は発症前2か月ないし6ヶ月間にわたって月あたりおおむね80時間を超えると認められる場合には、業務との関連性が強いと判断する」とされている。
 月100時間の残業で過労死と認められることを考えれば、この男性の月200時間の残業がいかに過酷なものであったかを理解できるだろう。

〇上司によるパワハラ
さらに、男性は上司から「なんでこの会社に来たのか。迷い込んだのか。」などの叱責を受け、強いストレスを感じていた。
最近POSSEに相談にくる事例にも共通していることであるが、上司などのパワハラによってメンタルヘルスに陥り、体調を崩してしまうケースが跡を絶たない。
今回の事件の場合、そのような上司、そして会社の対応によって尊い命が奪われた責任は重く、会社側は実態の公開をまずは行い、遺族への謝罪や補償をした上で、再発防止をしていくべきであろう。


〇早期の選別―増える「使い捨て」企業
 そして「予選」というシステムがあったようだ。

>同社では、入社後半年間の「予選」と呼ばれる試用期間に雇用継続を判断するシステムで、自殺前日には上司が男性に「予選通過は難しい」と告げていた。

 この「予選」と呼ばれるものは、一般的な用語でいえば試用期間のことのようだ。
試用期間とは、本採用前に労働者の仕事の適性等を判断する期間のことと一般に解されている。しかし、法律に明文はなく、あくまで契約によって設定される期間である。
 報道では「試用期間に雇用継続を判断するシステム」と書かれている。あたかも会社が自由に雇用を継続するかしないかを決められるかのようだ。しかし、試用期間中だから、または試用期間が満了したからといって、理由なく辞めさせることはできない。試用期間中であっても、試用期間満了時の本採用拒否であっても、会社の一方的な意思で労働者を辞めさせることは解雇に当たる。会社が解雇をする際のハードルは高く、「合理的な理由」のない解雇は無効となる。試用期間の場合、やや要件がゆるく解釈されるが、解雇は難しいという大枠は変わらない。会社のフリーハンドで「雇用継続を判断する」ことは許されないのである。
 それにもかかわらず試用期間を「予選」と位置づけ、頑張らないと「予選通過」できないと告げる。このことが新入社員に無用な不安・ストレスを与え、今回のような異常な長時間労働を引き出していたと言えるのではないだろうか。

 このようなやり方からはもはや長期間雇用しようという意図は感じられない。むしろその逆だ。まずはたくさん採用し、すぐに戦力として厳しく使う。これについてくることができればそれでよし。限界まで働かせる。ついてくることのできない者は辞めさせる。あるいは過酷な働き方に心身を害した者がいてもかまわない――。こうした「使い捨て」をおこなう企業が増えているように感じる。

 労働者としてみれば、せっかく見つけた正社員の仕事。現在の就職難や非正規雇用の増加を考えると、「数ヶ月で仕事を辞めた自分に次の仕事はないかもしれない、あったとしてもフリーターしかないのではないか」という不安がある。将来の見えない非正規労働者(低賃金、昇給しない、いつ首を切られるかわからない)の実態が、使い捨て企業で働く正社員に「どんなに過酷であっても、なんとかここで働かなくては」と思わせているのではないか。使い捨て企業はこの心理を利用して成り立っているともいえる。

〇裁判
 以前にこのブログでも取り上げた大庄過労死裁判では、過労死が偶発的に起きたものではなく、80時間の残業を前提とした給与体系など、企業の体制が死の背景にあったことが明らかにされた。
 本件についても、裁判で過労自殺を生んでしまった具体的な要因が検証されるだろう。今回は少ない情報からの考察にとどまったが、判決が出た際には、判決文をもとにより具体的に検討してみたい。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。