2月18日(金) プリントパック労災事件

2011-02-18 13:15:57 | 京都POSSEの活動報告です!


昨年3月22日、京都市右京区の印刷会社プリントパックで入社してわずか一ヶ月半であった、26歳の青年労働者が菊全判8色機の大型印刷機デリバリ部分(排紙部分)に頭を挟まれ死亡する労災事故が起こりました。

このプリントパックは前身が進洋製版という製版会社でしたが、「印刷通販」と銘打ってインターネット受注による365日24時間操業を行い、2005年売上7億円から2009年同52億円と5年間で売上を7.5倍に拡大急成長させています。
http://www.printpac.co.jp/(プリントパックHP)


京都ではプリントパックと同様に伏見区のグラフィックという会社が、京阪写真製版から業態変革して同じようにインターネット受注による24時間365日操業で急成長しています。
この二社は同地域でしのぎを削るライバル競合企業で、事故の背景にはこういった過酷な企業間競争もありました。

事故の翌日同社のホームページには次の様なお詫びが掲示されていました。

「機械の不具合により暫くの間受注ができません」と。
一人の未来ある青年の死は「機械の不具合」と扱われています。
 
同社の木村進治社長は顧客向けパンフレットの中で自社を次のように紹介しています。『新しい印刷のカタチを開発する』。インターネットをはじめとするIT技術を活用することで圧倒的な低価格を実現。現在会社を挙げての「日本一安い価格」への挑戦を続けている』。

インターネット受注は、24時間型物流体制に支えられて地域間距離差を取り除き、ひたすら「安さ」を競い合うベンチャー企業は全国に拡大しています。これらの企業競争は、あたかも牛丼の価格競争のようにどこかが倒れるまで単価を下げるダンピング競争となり、結果として「ひたすら受注し続ける」事でだけ企業が存立できる構造的な自転車操業を作り出しています。

どの企業も「低価格」を他社より一歩でも進めるため、コストカットに躍起となり、労務コストをカットし雇用をカットしそしてついに安全衛生もカットして労働者の命が犠牲となりました。産業構造全体の熾烈なコストカット競争の結果が今回の死亡労災事故であり、決して一企業の偶発的な事故ではありません。

一昨年末にはこの会社で働く他の労働者から「月130時間の残業が常態化しておりこのままでは身も心ももたない」と地域労組に労働相談が持ち込まれていたということです。


とにかく「安く早く」を競い合う業態は、他の製造業とは違って計画的な生産が困難な構造を持つ産業といえます。そのため、無理な受注を続けると、労働基準法諸規定を守るどころか労働者の安全や健康すらもないがしろにされかねない構造的な条件・環境があります。

支援をしている労組は、京都労働局に事故の原因究明・公開とともに、事故の背景として印刷産業に蔓延する36協定無視や協定の捏造、36協定未締結の長時間残業など重大事故に繋がる就労実態を今後監督指導することを申し入れました。

しかし、京都労働局は事故原因の調査結果公表には「絶対にそれはしないし出来ない」と頑なに拒否しています。印刷機器の構造はどのメーカーの機器も同一で、「それでは産業としてこのような事故の予防対策が講じられない」と指摘すると押し黙っていましたが、この様な重大事故の原因を当該企業内の「改善指導」に留めるのではなく同一産業内での事故防止の教訓とする指導が必要なはずです。行政としての規定があるのでしょうが、労働行政一般論ではなく労働者保護行政の視点が必要と痛感しているということです。

昨年4月7日には労組はプリントパック社を訪れ、社長らに次の申入れ文を手渡して説明を行ないました。

同社の木村社長はこれに対し、「あってはならない事故でご迷惑をおかけしている」「対策委員会を立ち上げて今対策を検討している」等と応え、真摯に対応することをその場では表明し調査結果は逐次ホームページ上で公開すると説明しましたが、今もその調査結果公開はされていません。

会社はまず事故の詳しい状況や原因を公開する責任があります。そして、長時間残業、36協定無視や協定の捏造、36協定未締結の残業など、重大事故につながる就労実態を改善することが求められています。
                              
【参考】
http://www.syuppan.net/kyoto/s2-us-81.htm






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