鴨川日記

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巨大銀行がなくなる日

2006-11-18 00:59:39 | 経済と株
11月12日付けの朝日新聞社説は「巨大銀行 公的資金は
生きたのか」と題して、不良債権問題が事実上の幕を降ろした
ことを報じていた。しかし、その社説の内容は、金融や
銀行の問題が解決して建設的な方向に向かっているという
ものではなく、むしろ、公的資金を注入して建て直しを図った
7年間で銀行業界は結局のところ何も変われなかったのでは
ないかと疑問を投げかけるものであった。

多くの人が、その社説の論旨に頷いたのではないかと思う。

そう思っていたら、18日付週刊ダイヤモンドの特集が
「銀行がなくなる日 メガバンクを浸食する異業種パワー」
というものであった。旧態然としたメガバンクのサービスや
会社組織では生き残りが難しいということを様々な視点から
描いていた。

しかし、一方で、メガバンクがもっとしっかりとしていたら
消費者はわけのわからないほどこみ入ったポイントサービスや
電子マネーに翻弄されることなく、もっと他のことに
頭を使えるようなスマートな社会になるのではないかと
思ったりもした。

多くの人が、どこの店で買って、どこのポイントとポイントとが
どう変換できるかとか、どの携帯の機種で、どこのコンビニなら
電子マネーで決済できるとか考えているよりも、「教育基本法
改正案」の原文にでも目を通して、それが本当に意味のある
法律かと考えたり、ユニークな展示をしている美術館に行ったり
しているほうが、もっと人間や社会を豊かにするのにと
思ってしまう。

巨大銀行 公的資金は生きたのか
  朝日新聞 11月12日付 社説

 「3メガ」と呼ばれる巨大銀行グループの三菱UFJ、みずほ、三井住友が公
的資金を完済した。不良債権に端を発した金融危機のなかで、国から銀行に注入された公的資金は総額で12・4兆円にもなった。そのうち8・1兆円が返済された。りそなホールディングスや地方銀行などの分が残ってはいるが、3メガが払い
終えたことで不良債権問題は事実上、幕を下ろした。

 東京・霞が関ビルに、険しい表情の銀行首脳が人目を忍んで出入りしていたの
は99年早春のことだった。ビルには、破綻(はたん)した銀行を一時国有化したり、銀行に公的資金を入れて恐慌を防いだりするために設けられた金融再生委員会がオフィスを構えていた。

 前年に日本長期信用銀行、日本債券信用銀行が行き詰まった。だが、放漫な融
資で破綻した金融機関を救うことへの世論の風当たりは厳しかった。

 銀行に国の資金を入れるのだから、リストラや再編はむろんのこと、バブルに
つながった不動産頼みの融資からの決別や金融サービスの充実が求められていた。頭取らは公的資金の前提となる経営改革の青写真を説明に来ていたのだ。

 主な公的資金の注入は3回あり、99年春は15行で計7・5兆円と最大の規
模だった。その後、大手行はさらに規模の拡大に走り、統合を繰り返した。02年に登場した竹中平蔵金融相は不良債権処理の加速を迫り、りそなが実質国有化され、UFJは東京三菱の傘下に入った。

 大銀行の経営者たちは、長い間の呪縛だった公的資金を返し終え、胸をなで下
ろしていることだろう。では、この間に経営や仕事ぶりはどれほど変わっただろうか。

 統合を決めた大手行の首脳は再生委に「たすきがけ人事はしません」と誓って
いたが、出身行ごとのバランス人事は続いている。古い体質を見限った優秀な人材が外資に流れ、投資銀行など新しい専門分野はなかなか育たない。

 他行に出し抜かれるのを気にするあまり、相変わらずの横並び融資が幅を利か
せている。国際業務、法人、個人など特定の分野で強みを発揮するという理想は色あせた。

 店舗や人員を減らし、機械化を急いだことで、窓口や現金自動出入機(ATM
)の待ち時間が長くなったという不満を持つ利用者は少なくない。午後3時で閉まる店舗が、今も大半を占める。

 ゼロに近い金利や、不良債権の処理にともなう法人税免除のおかげで、過去最
高水準の利益を計上したが、本業での収益力はまだまだ低い。それなのに政治献金を復活する話まで出ている。

 8日には、みずほがニューヨーク株式市場に上場した。金融危機のなかで内向
きになっていた各行も、再び海外に目を向けるまでになった。だが、経営の体質を根底から改めない限り、また公的資金が必要になる日が来ない保証はない。


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