
川越城内にある三芳野神社の裏には大きな杉の老木があった。しかし、枯れてしまったので伐り倒されてしまったという。
この杉について次のような言い伝えがある。
「いつの頃からか、三芳野の田面(たのむ)の里に、毎年北のほうから初雁が、少しも時を違えず飛んできた。そして、いつも杉の真上まで来るとガアガアと三声鳴きながら、杉の回りを三度回って、南を指して飛び去ったということである。この故事によって、川越城は一名初雁城ともいわれている。
また、太田道灌がこの杉のこずえに旗を立てたということから、旗立の杉ともいっている。」
(新井博「川越の民話と伝説」)

現在、三芳野神社の社殿の裏には、「名木 初雁の杉」の石碑が立てられている。
さらにその脇には、「三代目 初雁の杉」という立て札があり、ちいさな杉の木が植えられている。
この杉の木が、伝説にふさわしい大木になるのは、いつの日のことであろうか。
周りを、大きな木に囲まれ、その前途は多難のようである。
