「つくつく日記」

NGO代表、空手家、学校の講師とちょっと変わってる私の日々の雑感をお届けします。

「押忍の心」~その3~

2005年05月31日 | 「武道の旅」

さて、話を青少年トーナメントに戻します。今大会のひとつの見所は、フィリピン支部のヘッドインストラクターを務めるビクター先生の息子ケビンとオロンガポ道場のイーグルの試合です。階級は11歳~12際の部。今までになんどか対戦していますが、いつも惜しい所でケビンに軍杯が上がっていました。

今回は最初からイーグルが押して行きます。しかし、決着はつかずに延長戦へ。手技のイーグル対足技のケビン。延長戦はイーグルがやや優勢ですが、引き分け。再延長戦へ。再延長戦になると、歓声も大きくなります。そして、ついに突きで攻め続けたイーグルの判定勝ち!番狂わせに観客は盛り上がります。

やはり、今回は勝ちたいという強い気持ちがイーグルを勝利に導いたのでしょう。そんな12歳のフィリピンのこがいる事をとても嬉しく思い、感動しました。自分が普段教えているこなのでなお更です。

オロンガポ道場から出場した女の子二人も大会ベストバウトに入るほどの戦いを見せ、アイザは惜しくも2位でしたが、準決勝、決勝とフルラウンド戦い抜き、特に決勝は体重判定でも差がつかず、再々延長を行うなど大会で一番盛り上がった試合になりました。

オロンガポ道場はイーグル準優勝(11歳~12歳の部)、レイア3位(13歳~14歳女子の部)、アイザ準優勝(15歳~16歳女子の部)と大会技能賞を受けました。出場者全員が入賞をし、オロンガポ道場にとっては良い結果となりました。アイザはお父さんお母さんそろって応援に来ていたので良いプレゼントになったでしょう。



勝っても負けても、大会が終わった後は同じ道場の仲間としてそれぞれ交流を深めていました。短気で負けず嫌いでしかもだめだとわかったら途中で投げ出してしまうフィリピン人達を多く見て来ましたが、この大会ではどんなに不利な状況でも決して投げ出すことなく最後までみんな戦っていました。



スティーブン支部長やビクター先生、エルシルをはじえとした人たちの空手に懸ける思いが実り始めているのでしょう。そんな一翼のお手伝いが少しはできれば嬉しいと思っています。未来の空手界を担うこどもたち、むしろ未来のフィリピンを担うこどもたちがこの活動を通して増えていけばよいなぁと大会の度に思っています。

さて、今回のタイトルでもある「押忍」。この言葉は空手や柔道を始めとした武道では良く使われています。しかし、実際の意味を知っている方はあまりいないかもしれません。「押忍」という言葉で連想されるのは、忍耐という言葉でしょう。厳しい練習を「押忍」の心で耐える。苦しいときでも「押忍」があれば大丈夫等。

もちろん、そういった意味もありますが、他にどのような意味があるのか。それは「押忍」という漢字を見ていただければわかります。

「忍」という漢字は「刃」と「心」から出来ています。人は誰しも心の中に刃の部分を持っています。心の上に刃があり、それが出てこないように「押」のです。人間が本来持っている凶暴な部分が出てこないように精神的な強さを身につけ、常に感情を冷静に保ち、コントロールをする。これこそが、「押忍」という意味なのです。

これって、空手に関係なく今の日本のこどもたちにも必要なのではないでしょうか。押忍!