「つくつく日記」

NGO代表、空手家、学校の講師とちょっと変わってる私の日々の雑感をお届けします。

台湾への旅 「台北市私立伯大尼育幼院」~その1~

2005年05月09日 | 「台湾への旅」

今回と次回は私に代わり、妻が台北の育幼院の報告をします。

今回の旅は台北から始まり、台中、台南、高雄と少しずつ南下していきます。それに合わせて、台北駐日経済文化代表処の方は、台北、台中、高雄で一つずつ育幼院を紹介してくださいました。施設を一つ訪れるだけでは多くは知ることができないと思っていた私たちは、色々な施設を訪問することを楽しみにしていました。



最初の施設は台北市の郊外にある「台北市私立伯大尼育幼院」です。到着した施設の立派な門をくぐると、何やら他にもお客さんが訪ねてきている様子。私たちは職員の方に案内され、院長室に通されました。院長さんはやさしそうな女性です。

私たちが自己紹介をし、今回3つの育幼院を訪ねることを伝えると、院長さんが「ここは台湾で私立では一番良い育幼院だと自信を持っています」とおっしゃいました。その言葉にこれから納得することになります。

その時、先ほど門で会ったお客さんが入ってきました。綺麗に着飾った50代前半くらいの女性で、話を聞いてみると、なんと育幼院を懇意にしている台北市議会議員の方でした。それから15分程度、まるで私たちがその場にいないかのように、院長さんと議員さんの間でにぎやかなおしゃべりが繰り広げられました。

時折思い出したように、「あなたたちはどういうことを日本ではしているの?」などと15秒ほど話を振ってくれます。二人の雰囲気から、今後の支援や育幼院に対する政策の話などをしているのだろうと思い、気長に待ちます。

フィリピンでも同じような状況になることはよくあります(タガログ語であれば話に加わることもできますが)。また、このようなやり手で活発な女性が多いこともフィリピンと似ています。そんなことを考えているうちに、議員さんは次の用事があるからと去って行きました。さて、ようやく院長さんとのお話です。

台湾には43の育幼院があるそうです。そのうち公立は3つだけ、あとはすべて私立です。台湾では私立の育幼院に対しての政府の補助金が運営費の4割程度で、残りはすべて寄付でまかなっています。

フィリピンでは私立の孤児院に対する政府からの補助金はゼロである一方で、日本の私立の児童養護施設に対しては運営費の9割が政府からの補助金です。台湾はその中間にあるようです。

キリスト教系のネットワークによる寄付や、民間会社などからの寄付が多く、スポンサーのほとんどは台湾人だそうです。スポンサーに対する立派な報告書も見せてもらいました。この育幼院はこうした点に長けているようで、安定した寄付により子どもたちへ十分なケアを行い、またその成果をもとに安定したスポンサーを維持するといった好循環による良好な経営が行われているようです。充実したアカウンタビリティといったところでしょうか。

この育幼院には3歳から21歳まで62人の子どもが保護されており、男女比は半々。子どもたちは政府や教会に保護され、各育幼院に送られてきます。背景としては、両親が亡くなり身寄りがない子どもが一番多く、両親が病気や服役中というケースもあります。また、ここ10年で虐待や育児放棄が原因であるケースが増えています。

経済発展により核家族化が進み、親戚や近所付き合いが希薄になっている社会の変化が、子どもの状況に大きく影響しているようです。日本の児童養護施設でも同じような影響があります。

ここでおもむろに、院長さんが「私の英語では上手く説明できないから、英語の話せる人を呼ぶわ」と内線電話をかけ始めました。代わって現れた女性は40代前半くらいのイギリス人の女性。流暢な台湾語で院長と話したあと、私たちの質問に親切に答えてくれました。

なんと彼女は教会ボランティアとして台湾に19年前にやってきて、この施設では12年間も働いているそうです。台湾語が流暢なのも頷けます。この19年間で台湾は大きく変わったことでしょう、と問いかけると、彼女は「本当に大きく変わった、いい意味でも悪い意味でも」と答えました。もっとその話を聞きたかったですが、本来の目的である施設の見学に移ります。

さて施設はどんな様子なのでしょうか。次回に報告します。