ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

気負わず、気取らず、ありのまま。
ゆるりと思ったことを書いていってます。
お気に召したらうれしい限り。

今村昌弘 『屍人荘の殺人』 読了

2019年09月29日 20時39分27秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


つい先日読了したばかり、久々に新作を読みました。
今村昌弘の「屍人荘の殺人」。

2017年に発表された本作。
今村昌弘のデビュー作でありながら、第27回鮎川哲也賞をはじめ、各賞を総ナメ。
新人ながら、綾辻行人や有栖川有栖を唸らせるなど、嫌が応にも気になってしまう作品でした。

僕は基本的に文庫本しか読まないので、ハードカバーは読みません。
ここ最近、こんなにも文庫本かを待ち望んだ本は本作くらいでしょうか。
そんなことを考えて幾数日過ぎたのち、ふと立ち寄った本屋で文庫本化されて
発売されているのを見たときは、すぐに購入しました。

前評判が大きすぎて、自分の中で期待が大きすぎてしまっていないかと
少し心配にもなりましたが、全く問題ありませんでした。

面白い!

読み始めも、読み途中も、読了後も、この感想は変わりませんでした。



ネタバレはしません。
が、本作の最大の仕掛けの一つが、前代未聞のクローズドサークルの設定。
人によっては、邪道ととられるかもしれませんが、割と説得力のある設定背景が
ちゃんと描かれていたので、僕は意外とすんなり受け入れられましたし、
こういうのもありだなと感じました。
この状況が、「なぜこの状況下で殺人を?」というミステリーの効果も出しています。
それだけでなく、密室、連続殺人、ペンションなど、ミステリ好きにはたまらない
要素がいっぱい詰め込まれています。

至る所にある伏線に、なんとなく気付く場面もありましたが、
犯人を決定づける部分については、全く気付けませんでした。



キャラクターの魅力も良いですね。
主人公の葉村 譲。
どこをどうしてもワトソンとしか見れない、永遠の助手役に対し、
明智 恭介という、名前からしてその雰囲気を醸し出す、主人公が所属する大学の
ホームズと呼ばれる先輩。
そして、剣崎 比留子。
危険な匂いしか感じない、女性探偵。こちらも大学の先輩。

それ以外にも、物語を演出するキャラはしっかりと個性が持たされ、
何よりもそういった個性が名前からなんかイメージできるのが
本作の読者への気遣いのようにも感じられます。



物語はとあるペンションが、前述のとおり特殊なクローズドサークル設定に
よって閉ざされた巨大な密室になります。
その中で、さらなる密室にて人が殺される。
フーダニットに目を向けつつも、作中ではホワイダニットに目を向けさせてきます。
それは動機につながるわけですが、この辺は若干凡庸かなと、


しかしですね、作品全体を見渡した時、その練られた設定に唸るばかり。
あれやこれやが、なるほど、意味を持ってくる。
いわゆる伏線の回収という点においては、無駄がなく、気持ちよさを感じるほど。
また、特殊なクローズドサークルを設定する意味や、必要性をちゃんと持たせて
文句のつけようのない、エンターテイメント性を発揮しています。



ようは、めちゃくちゃ面白かったということです。
本作に絶大な評価を寄せる綾辻行人や有栖川有栖が、一度は落ちかけた
ミステリーに新本格というジャンルで風穴を開けたように、
すべてが出し切られたかのような新本格の新たな担い手として
今後も期待されます。

すでに、本作をシリーズとする第二弾も発表されており、
その文庫本化が今からとても待ち遠しいです。



いまさら僕が宣伝するまでもないですが、本当に面白い作品です。
まだ読んでいない方がいましたら、ぜひその手に取ってみてください。




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若竹七海 『プレゼント』 読了

2019年09月29日 06時12分32秒 | 読書
おはようございます、ジニーです。


やっぱり、若竹七海さんは面白いですね。
今回読んだのは、「プレゼント」。
以前このコーナーで書いた「静かな炎天」と同じ、葉村晶シリーズです。
シリーズ最初の作品である、本作。
最初から葉村晶のハードラックな性分を楽しく事ができました。
そして僕としては、はじめましての小林警部補も、その独特なキャラクターに
どっぷりつかってしまいました。


本作は、前述の葉村晶と小林警部補を交互に主役にした短編集です。
この作品の時点では葉村晶は清掃員やコールセンター、興信所、など
色んな職を転々としているのですが、ことあるごとに事件に巻き込まれます。

しかし、なんやかんや真相に行きつくのが、葉村晶の面白さ。
謎解きをするというより、振り回されているうちに真相が見えてくるという感じ。
職や生き方に対する執着はほとんどないくせに、気になることがあると
首を突っ込みたがる性分がそうさせているんだと思うのですが、
無関心なのか、執着するタイプなのかどっちなのさ?
偏屈なんですよ、それだけに嫌われるし、人を怒らせるし、裏切られる。
彼女には申し訳ないけど、その辺が魅力なんですよね。
うん、実際にいたら関わりたくないけどw


小林警部補は警察なので、事件に巻き込まれるというより
職務として関わっている感じですが、この人も曲者です。
現場に娘のピンクの自転車で来る辺り、一筋縄ではいきません。
しかし、彼にかかると犯人はうっかりボロを出してしまう。
ひょうひょうとしている雰囲気が相手の樹を緩めて占めてしまうのかも
しれません。


全体的には、小林警部補の話のほうが面白かったように思います。
立場的にミステリーとして組み立てやすいのかもしれませんね。
最後の最後で小林警部補が、葉村晶を被害者とする事件にかかわるあたりは
なんともワクワクした気持ちで読めました。


「海の底」:葉村晶
「冬物語」:小林警部補
「ロバの穴」:葉村晶
「殺人工作」:小林警部補
「あんたのせいよ」:葉村晶
「プレゼント」小林警部補
「再生」:葉村晶
「トラブルメイカー」:小林警部補



なかでも、「冬物語」、「プレゼント」は個人的に好きですね。

まだまだある葉村晶シリーズ。
引き続き読んでいきましょう。


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