おはようございます、ジニーです。
今回の読了は、大好きな瀬尾さんの作品を再び。
「僕らのごはんは明日で待ってる」を読みました。
今回も元気がもらえる瀬尾さん節。
高校生の二人の7年の恋模様を描いた作品。
ひとりは、兄を亡くして以来、ふさぎ込み、いつも「たそがれ」ている男子、葉山。
もう一人は、両親がおらず祖父母に育てられた、ズカズカ踏み込んでくる女子、上村。
全体は4つの章から構成されており、少しずつ時間を経過しながら
ふたりの関係性が変わっていきます。
周囲に関心を示さず、根暗を極める葉山と上村が、体育祭の競技をきっかけに
距離がグッと縮まっていくのですが、ここで以後の二人の関係性が完全に出来上がっている
のがとても面白いです。
基本的には葉山の目線で話が進みます。
上村の思いがけない告白から、人と関わりを持つことを再開する葉山。
進路の決断も、海外への一人旅行も、別れも、結婚も、
唐突でそれでもこの二人らしい決め方です。
読み進めていくと、二人の生い立ちも含めて、意外にハッピーの要素は少ないのですが、
とても楽しく読めてしまうのですよね。
これぞ瀬尾さん節といえる所以。
ふたりの成長に、読んでいるこちらもいつの間にか励まされている瞬間があります。
しかし、面白いもので、
人の決断というものは、非常に頑なでありながら、とても柔軟です。
ひとりでいたときに、変わりようもないと思えた世界が、
人との出会いによってがらりと変わっていく。
誰かと関わり合うということは、変化そのものなのかもしれません。
結局、ひとりで悶々と考え込んで出す答えなんて、ひとりの狭い視野の中で見えている
答えのようなものを拾い上げているようなもので、他人の価値観や人生観といった
別の視野が組み込まれることで、その狭さを知らずに受け入れ、変容していくのでしょう。
瀬尾さんの作品には、そういった他社とのかかわりの中での
実は意外に大きな変化や変革を迎えるというものが多いです。
もちろん何かのテーマをもって書かれる「小説」、「書き物」にそういった変化や変革は
つきものですが、瀬尾さんの作品はそういったものがなぜか妙に身近なものに
感じてしまう。
全く違うものでも、近しいものにスッと置き換えられて、ふとした気付きになる。
なんだかそんな瞬間が多い気がします。
もう一つ、食べ物。
瀬尾さんの作品には必ず食べ物が、おいしそうに、ていねいに描写されています。
本作ではケンタッキーや羊羹。
これまでの作品にも、おいしい白米や中華料理、なぜか葛切りのはいったカレーもありました。
これは僕の勝手な持論ですが、食べるということは最も「生きる」ことを
象徴している行為だと感じるのです。
瀬尾さんの作品は様々なアプローチこそあれど、「生きる」ことや「生きる意味」を
常に織り込んで書いています。
登場する人物が迷いつつ、戸惑いつつ、徐々に答えを見出し、再びあたたかな日向に戻ってくる
経過を、食事を通してよりリアルに「生きて」見せているように感じます。
僕自身、食事が何よりも幸せを感じる瞬間ですので、この辺りも瀬尾さんの作品が
自分との相性の良さを感じるポイントなのかもしれません。
これからも瀬尾さんの作品にはお世話になりそうです。
2017年には、Hey! Say! JUMPの中島 裕翔くん主演で映画化もされているようです。
こちらも時間を見つけて観てみたいですね。