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ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

気負わず、気取らず、ありのまま。
ゆるりと思ったことを書いていってます。
お気に召したらうれしい限り。

原田マハ 「本日は、お日柄もよく」 読了

2023年10月18日 22時09分00秒 | 読書
こんばんはジニーです。

溜まりに溜まっている読書感想文。
少しずつ書いていかないと、内容が思い出せなくなる。

そんな強迫観念に晒されながら、滞りがちな10月の投稿です。


今回は原田マハさんの「本日は、お日柄もよく」について書いていきます。

結婚式などの冠婚におけるスピーチで、この本のタイトルはよく使われたりします。
そう、つまり本作はスピーチがテーマの小説です。

もう少し正確に言うと、「スピーチライター」という仕事がテーマとなっています。
まだあまり馴染みの少ない仕事ですが、結構重要な仕事でして、言葉によって人の心を動かすという、この仕事ならではのやりがいがあります。

例えばそれは政治家であったり、企業の社長であったり。
人前に立ち、誤解なく、飽きさせることなく、伝えたいことを伝えることを求められる方々はこう言った職業のプロにスピーチをお願いするようです。

しかし、1から全てスピーチを書くのではなく、伝えたいことを聞き、大筋を描いてもらったものに添削を行う感じです。

なので、その人の生きた言葉のまま、伝えるべきが伝わるというものなのです。
(うまく説明できてるかな?)


主人公の二ノ宮こと葉が、最悪な気分で幼馴染の結婚式に参加するところから物語は始まります。


そこで聞いた幼馴染の仕事の取引先の社長のスピーチが、とんでもなく眠気を誘うくらいつまらない。
実際に寝てしまってとんでもないことをやらかすのですが、その後トリを務めるかのように現れた、久遠久美というスピーチライターのスピーチに涙が溢れるほど感動します。


この出会いが、こと葉のスピーチライターとしての扉を開くことになりました。

素人同然の、駆け出しスピーチライターのこと葉が色んな壁にぶつかりながら成長していく、そんなサクセスストーリーでもあります。




とにかくこの作品は読んでいてとても励まされます。

人を鼓舞するような言葉や、悲しみに寄り添うような言葉。
色んな言葉が、文字を通して言霊のようにスーっと胸に染み込んでくる感覚さえあります。

今年読んだミステリー以外の小説ではダントツで面白かったです。



本作の中でスピーチライターの才能として、人の話を聴く重要性が語られています。
ここは、仕事柄からも激しく同意したところで、いかに相手を知ることが大切なのかと言うことを改めて考えさせられますし、コミュニケーションの根底は自分を知ってもらう以上に相手を知ることなのだと考えさせられました。


こういうのがお仕事系小説の良いところですよね。
人は人生の多くを「働く時間」として過ごすのですから、仕事に活かせるようなエッセンスがあると、グッと身近なものにも感じられる気がします。


もうすでに読まれている方も多いかと思いますが、まだこれからという方はぜひ手に取ってみてください。
とても読みやすいし、オススメです!






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井上真偽 「その可能性はすでに考えた」 読了

2023年09月25日 23時12分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

秋、という季節はもう日本にはないのかも知れない。
そんな気がしてしまうほど暑い日が続いていますが、最近は朝夕が涼しくなってきています。
秋の気配というやつでしょうか?
読書したくなりますね。


さて、今回は井上真偽さんの「その可能性はすでに考えた」の読書感想です。

タイトルから何となく伝わるものがありますが、ちょっと変わったミステリーです。
普通、ミステリーといえば時間が起こり、その謎を解くというのが流れです。
犯人がいて、トリックを看破していくというところに面白さがありますよね。

ところが本作ではちょっとアプローチが違う。
謎の否定を証明して見せるのです!

主人公は上苙丞(うえおろじょう)という探偵。
青髪にコート姿、厨二病要素たっぷりの人物で、奇跡の実在を信じてやまない。
この探偵は奇跡を証明するために、人の手で行われた事件であることを反証とともに否定していくのです。
つまり、普通のミステリーの流れを真っ向から逆らっていくという手法の作品なのです。


事件は、とある山間に拠点を構えるカルト教団での集団殺人事件です。
ここに巻き込まれるのではなく、その事件の唯一の生き残りである少女の当時の記憶があり得るものなのかを証明してくれという依頼が舞い込むのです。

すでに起きた事件に対して奇跡を証明する。
依頼を受けて数日後、奇跡の証明を辞書ほどの報告書にまとめて依頼人に提出します。

そしてここから本作は多重解決ミステリーとなっていきます。

まず、奇跡の証明とは何かというところからになりますが。
考え得る人の手による犯行を全て否定できたらそれはすなわち奇跡であるという筋書きです。
それを報告書にまとめているのですが、後から後から計4人の人物が現れ、それぞれの推理にて人の手による犯罪だと唱えられます。
この多重解決をことごとく否定していくのです。


一言で否定と言っても、「違うと思う」なんていう感想や根拠のない言葉では否定できません。
事件発生後に警察が介入して確認された状況証拠や物証などをもとに理論を展開し、根拠に基づいた形で、それが成り立たないと言わなければ否定、反証にはなりません。

これが本当に難しいことで、推理については確証のないことでも道理が通っていれば、そういう可能性もあると言えるのですが、否定においては確証のないことを論じた時点で空論となってしまいます。

もうね、こんなアプローチの作品を書くなんて、正気の沙汰じゃないと感じてしまいます。

果たして上苙丞は奇跡を証明できるのか?



なんか小難しいこと書きましたが、際立ったキャラ設定やコメディ的な要素もある作品なので、意外とライトに読めてしまいます。

これまでになかった読書体験を本書を通してしてみてはいかがでしょう?

と、書きましたが、本作はどうやらシリーズものの2作目だったようです。
読み始めからそうなんだろうなと思っていましたが、やはりそうだったようです。
続きでなくても楽しく読めましたが、まずは一作目である「恋と禁忌の述語論理」を手にとってからの方がいいと思います。

僕も遅からず手にとってみようと思います。






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王城夕紀 「青の数学」 読了

2023年09月11日 20時40分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


今日は読書感想を書いていきます。
王城夕紀さんの「青の数学」です。

古本屋で本の発掘をしているときに、見つけた本です。
タイトルがいいですよね、なんかオシャレ。
表紙の絵も印象的である意味ジャケ買いをした感じです。
(ダウンロードが主流になったいまジャケ買いは死語なのかも)

内容は、最初から最後まで数学だらけです。
かと言って数学ができないと意味がわからないとかはなく、数学をモチーフにした青春小説と思って読むこともできる内容です。


主人公は栢山(かやま)という少年。
物心ついた時から数学を続けできた人物。
彼を数学の道に招き込んだ柊(ひいらぎ)との約束で続きてきた数学。
「数学って、何?」という問いかけにいくつもの問題と、競い合う仲間とを通して見つけていくというストーリーです。

数学と聞くとなんだかクールな印象も持ちがちですが、この小説は一言で言うとバトルものです。
端末から接続する「E2」というネット上のステージで数学の問題を解くという決闘を行うのですが、これがなかなかにハードで熱い!
栢山はひたすら問題を解いてます。
ほぼ最初から最後まで問題解きっぱなしです。
問題そのものはあんまり出てこないのですが、それに取り組む様子が、水中にいるかのような息苦しさを感じるほど。

ああ、数学の問題解くのってこんな感じだよな、と思い出しました。


多分この作品って読後に数学をとても好きになるか、めっちゃ嫌いになるかなどちらかなのではないかと思います。
願わくば、前者の人が多いと嬉しい。

なんとなくライトノベルの雰囲気も持つ作品。
著者の数学をよりライトで身近なものにしたい、という想いが伝わってきます。


数学は苦手という方には手を出しづらい作品かと思いますが、ぜひ一度よんでみてほしい。
数学って熱いんだぜ!
っていうのを感じてみてほしいです。







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島田荘司 「御手洗潔の挨拶」 読了

2023年08月31日 20時33分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

少し暑さにやられて頭痛がする中更新しております。
8月も今日でラスト!

今回は島田荘司さんの御手洗潔シリーズです。
短編集としての最初の作品、「御手洗潔の挨拶」を読みました。

収録されているのは、
•数字錠
•失踪する死者
•紫電改研究保存会
•ギリシャの犬
の4編。

どれもタイプの違うミステリーであり、いずれもが非常に完成度の高い内容だなと思いました。
このレベルの話を短編でまとめるというのはなんとも読み手としては贅沢なものです。

特に好きなのは「数字錠」と「ギリシャの犬」。

「数字錠」ではある殺人事件の複数の容疑者から犯人を絞り込むタイプのミステリーですが、トリックがシンプルながらも読んでいて気づくことができない巧妙な展開になっていて、まさしく『やられた!』となる感じです。

普段変人のようにしか感じられない御手洗潔の美学(これはそのまま著者の美学でもあるのかな?)を垣間見ることができたのも面白かったですね。
キャラクターの深掘りがよりこのシリーズを面白くしているのだと思います。

「ギリシャの犬」では、誘拐事件の謎を解くのですが、なんとなくトリックはわかるんですよね。
ただそのトリックの解説の過程で、なんてことないと思ってた時間が急に繋がって、こちらは伏線回収の妙を味わえるものとなっています。
ちなみに暗号問題もあり、ミステリー好きにはたまらないと思います。


他にも物理的にありえない状況で見つかった死体の話、胡散臭い組織と関わることになった男が知らずに失っていたものの話。

前述の通り、それぞれにテイストの違う話なので、全く飽きがきません。
なんなら満腹感にも似た充足を味わうような感じすらします。

本作を通してますます御手洗潔が好きになりましたし、がぜん他の作品も読みたくなってきました。
このシリーズが長く愛されることが理解できる完成度の高い本作、ぜひ手に取ってみてください。







他の御手洗潔シリーズの読書感想

島田荘司 「斜め屋敷の犯罪」 読了 - ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

島田荘司 「斜め屋敷の犯罪」 読了 - ジニーの、今日も気まぐれな感じで・・・

こんにちは、ジニーです。何の予定もない日曜日の午後。プロ野球の試合を観戦しながら、読書感想文を書いております。今回は島田荘司さんの「斜め屋敷の犯罪」を読みました...

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連城三紀彦 「小さな異邦人」 読了?

2023年08月28日 20時46分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

今年は例年以上にアクティブな8月でした。
色んなところに出かけて、ほんと疲労困憊がずっと続いていた感じです。

それを言い訳にするつもりではないのですが、読書感想もめちゃめちゃ溜まってしまってます。

一つずつ、時間を作っていきましょう。
一つずつ。

というわけで、今日は連城三紀彦さんの「小さな異邦人」について書いていきます。

本作は短編集となっており、
•指飾り
•無人駅
•蘭が枯れるまで
•冬薔薇
•風の誤算
•白雨
•さい涯てまで
•小さな異邦人
の全8編からなるミステリー小説です。

中でも表題の「小さな異邦人」はすごく面白かったですね。
ある日8人の子供がいる家庭に電話がかかってくるのですが、実はそれは誘拐犯からの脅迫電話でした。
「子供の命は預かった」と。
しかし、不思議なことにその時8人の子供は全員家にいて確認できています。
命を預かられた子供とは?
そしてこの謎の真相は?


僕自身、本作は何かの紹介で知ったのですが、まさしく上に書いたような紹介のされ方をしていまして、これは読むしかない!となったわけです。


他にも「風の誤算」は好きですね。
なんだかちょっとポップな感じを受けられた作品でした。

一方で「蘭が枯れるまで」や「無人駅」のような濃ゆいミステリーもありますし、どれも読み応えバッチリです。


しかし、ここで困ったことが。
読み切ってから感想を書くまでに時間を置きすぎたせいで、オチが思い出せない話が…。

「白雨」。
どんな結末だったっけ?
断片的にしか思い出せず、オチは完全に飛んでしまってる💦

これは再読しないといけないですね。


そんなわけでタイトルも「読了?」です。


ところで著者の連城三紀彦さんは、もうお亡くなりになってるのですね。
本作はお亡くなりになったあとに発表された小説らしく、ある意味で著者の様々なミステリー体系や一気に味わえる集大成的なものとして読むこともできそうです。

他にも直木賞を受賞した作品もありますし、これを機にいろんな作品を読んでみたいと思います。







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三浦しをん 「舟を編む」 読了

2023年07月31日 21時22分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

暑い日が続きますね。
エアコンがこの世に無かったらどうなってしまうのだろうと、無意味なことを考えてしまうのも、きっと暑さのせいでしょう。

そんな中、三浦しをんさんの「舟を編む」を読みました。

なぜなのか、夜の海を連想するんですよね、この作品。
そういう描写があったことが影響してるのかな。


最初、タイトルから漁師の話なのかなと思いましたが、大外れ。
実は辞書の編纂をテーマとした小説です。
このタイトルは、「辞書は言葉の海を渡る舟、編集者はその海を渡る舟を編んでいく」という意味から来ているそうです。
その辞書の名は「大渡海」(だいとかい)。
物語の始まりから、編纂が終わるまでの15年の物語です。


こう書くと、なんだか物々しい雰囲気を感じそうですが、内容はとても読みやすく、憎めないキャラや一癖あるキャラが全体にライトな雰囲気をもたらしてくれています。
原作が女性誌の連載小説だったのもそういう色を持った作品になった要因かと思われます。


主人公は玄武書房の営業マン、馬締光也(まじめみつや)。
名前に負けず劣らず真面目を地でいく男です。
彼を中心に、自社に魅せられた人生を歩む松本先生、先輩社員荒木、チャラい同僚西岡、スーパー事務佐々木、イマドキ女性営業岸辺といういずれもクセのある登場人物が脇を固め、ともすれば難解にもなってしまいそうな辞書編纂という物語を読みやすくエンターテイメント性の高い小説に昇華しています。

物語は各人物の視点での話がそれぞれ紡がれている形です。
それぞれがどんな想いや視点で辞書編纂に取り組んでいたのかが分かり最後の方には全登場人物に愛着が湧いている状態になっています。



それにしても、読めば読むほど辞書を作るということが、どこまでも途方もないものだと痛感します。
これはひとつの冒険のようでもあり、浪漫を感じずにはいられない小説でした。

調べたところ、本作は2012年に本屋大賞を受賞しているようです。
そりゃそうだよな、面白いもん。

また、映画化やアニメ化もしておりいずれも評価は高いようです。
実は僕もアニメ化の方が先に触れていました。
アニメ化している小説を読むと、登場人物の声が脳内再生されるのが良いですよね。
たぶん、それも読みやすかった一因です。

とても面白かった作品、まだ読んでない方はぜひ手に取ってみてください。







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桜庭一樹 「荒野」 読了

2023年07月11日 23時13分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

今日は読書感想文。
桜庭一樹さんの「荒野」について書いていきます。

本作は僕が好んで試聴しているYouTube、「ほんタメ」で
紹介されていたのを見て知りました。



10代で読むべき小説として紹介されていました。

普段ならあまり気にせずスルーしていた
内容だったかと
思いますが、ちょうど娘が中学生になるタイミングでもあり
娘に読ませたいかもという思いから興味を持ちました。

しかし、一方的に読ませるというのは良くない、
ということでまずは自分が読まねばなりません!


この「荒野」というタイトル。
主人公の少女の名前です。
山野内荒野、12歳。
鎌倉で小説家の父と暮らす少女が主人公です。


中学入学からはじまり、14歳、16歳と4年間を
描き出した作品です。
まだ恋を知らない少女が、ひとりの少年との出会いや
取り巻く環境の変化を通して少しずつ変わっていく
様子を切り取っている作品です。

物語は荒野視点で進んでいきます。
年を重ねる中で、自分の中に生まれた変化を
戸惑いつつも受け入れていく様子は
同じ10代の多くの少女か同じように辿っていく
シンパシーに繋がっていくのかもしれません。

残念ながら男として育ってきた僕には
戸惑うほどの変化なんて記憶のどこかにおき忘れて
きてしまったようですが、読み進める中で、
それでも感じる共感があったり、自分にはなかった
新鮮な視点があったり、とても楽しかったです。


10代のうちに本作に触れて、年を重ねると共に
何度も再読することで自分の中の変化に気づいたり、
懐かしさを感じたり、長く付き合っていける
稀有な作品でもあるように感じました。


娘にとってそういう出会いになるかはまた別の話ですが、
頃合いを見て読ませてみたいと思います。


なお、本作は元々あった三つの小説家のを
一つに
合作したものらしく、かなりのボリュームになります。
でも、せっかくなのでバラバラに読むよりは
一気に読んでしまった方が、この作品に
閉じ込められた瑞々しさをより鮮やかに
感じられるように思います。

ぜひ、興味を持っていただけるようでしたら
手にとってみてください。






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谷崎潤一郎 「痴人の愛」 読了

2023年07月06日 19時38分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。


今日は読書感想です。
珍しく生粋の日本文学に挑みました。

谷崎潤一郎(敬称略)の「痴人の愛」です。

アニメが好きな僕は、谷崎潤一郎のことを
文豪ストレイドッグスで知りました。
文豪を登場人物に据えた、異能バトルモノのアニメです。

このアニメでの谷崎潤一郎にナオミという妹が
いるのですが、このナオミが「痴人の愛」の
ヒロインであることを最近ようやく知ることになり、
無償に内容が気になったのが、読もうと思った背景です。


大正時代の作品ですので、時代背景ギャップなんかも
とても楽しく読めた作品です。


すごくシンプルに言ってしまえば、本作は
いわゆる恋愛小説に位置付けられると思います。
(著者自身は私小説としてるようですが)
主人公譲治とヒロイン ナオミが出会い、恋人になり
夫婦になり、という物語です。
しかし、この、ナオミが曲者で、とにかく奔放。
大正という時代の古い日本文化の時代背景にあって
主張し、男をたぶらかすナオミの存在は
とても異様で異質な存在です。

しかしながら、そんな異様で異質なナオミが、
破壊的なまでに存在感を放ち、固定観念にまみれた
当時の男どもを根こそぎ手球にとっていく様は
読んでいてとても痛快です。


よくこの時代にこんな作品が生まれたな、と感じます。
それくらい当時では先進的なテーマであり、
理解されにくい女性を書き上げているように思えます。

しかしながら一方で、この時代の人たちの
潜在的なところで求めていたものも、
こういった時代の枠をぶち壊すような作品だったの
だろうなとも思えるのです。
やはり、そんなパワーを感じる。


などと小難しい評論家のような言葉を並べましたが、
とにかく面白かった。
当時を知らない僕には理解し難い「当たり前」は
逆に新鮮で意味不明だったし、
本来しっかりして自立しているはずの主人公譲治が、
ドンドン流されて破滅していく様は、滑稽で痛快です。

ひょっとしたら男性よりも女性からの支持も
多かった作品かもしれませんね。


やめときゃいいのに、と何度思ったことか。
途中大きな動きがあり、ミステリー的な要素も
出てきますが、結局最後はナオミの勝ちという
本作の構成は期待を裏切りません。


タイトルからしてもっとお堅い文学かと思いきや、
思いっきりエンターテイメント作品でした。



最後に、本作を読むきっかけが文豪ストレイドッグスだと
書きましたが、このアニメは舞台化もしており、
その舞台でナオミ役を演じている齋藤明里さんが、
本作をYouTubeで紹介していたというのも
動機の大きな部分です。





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伊坂幸太郎 「陽気なギャングが地球を回す」 読了

2023年06月15日 19時37分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

久しぶりの伊坂さんの作品。
今更ながらですが「陽気なギャングが地球を回す」を
読みました。

本作は映画化もされた大ヒット作。
20年くらい前に出された作品なので既に説明の
必要もないくらい周知されている作品かと思います。


物語は4人の主人公をベースに展開されます。
ひとりは、嘘を見抜く名人。
ひとりは、演説の達人。
ひとりは、スリの天才。
ひとりは、正確な体内時計を持つ特異体質。
この4人がチームを組み銀行強盗を行うという物語。
しかし、伊坂さんの作品です。
そんな簡単にことが進むはずがありません。
4人は無事に(?)銀行強盗を果たすのですが、
逃走の道中に奪った現金を盗まれてしまうという
強盗が強盗に遭うという奇想天外な展開から
物語が進んでいきます。


とにかくテンポ感。
4人もそうですが、それを取り巻く人間たちも
クセのある人物ばかりで、キャラが立っており、
ポンポンポンと話が進んでいきます。
この独特なテンポはやはり伊坂さんらしいなと
感じられるところで、タイトルのような陽気な場面も
ちょっとシリアスな場面も割と軽く流れていきます。

話がポンポン進むというのは、つまり次が
ドンドン
気になるということで、そんな感じで気付けば読み終えて
しまっていたという感じです。

内容はミステリーになるのかな。
殺人事件も起こり、疑心暗鬼になったらもするので
実はハラハラな展開も起こってる感じです。

個人的にはわかりやすい展開で、伏線についても
そうだろうなと思ったことがちゃんと回収されて
いく感じに爽快さを覚えるほど。
裏切らない、確かな面白さがある作品でした。


しかし、伊坂幸太郎という人は、クセのある人を
書かせたら凄いですね。
読み終わる頃には登場人物のファンになってしまって
いるような愛着が生まれていました。

冒頭で説明した通り、本作は映画化もしていますし、
続編も出ています。
また時間を見つけて続編も楽しみたいと思います。






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如月かずさ 「給食アンサンブル」 読了

2023年06月13日 21時40分00秒 | 読書
こんばんは、ジニーです。

今回紹介するのは、如月かずささんの
「給食アンサンブル」
です。

これは図書館で借りてきた本で、こういった
機会でないと出会わなかった本だろうなと感じます。

内容としてはタイトルからも感じられる通り
学生向けの本です。
中学生が主人公なので、同年代に向けてという
感じですね。

連作短編という形式で、6つの話が収録されてます。
いずれも給食の献立がタイトルで、
•七夕ゼリー
•マーボー豆腐
•黒糖パン
•ABCスープ
•ミルメーク
•卒業メニュー
と言った感じです。

物語ごとに主人公が変わり、多感な年頃らしく
色んな悩みと向き合いながら気づきや成長に
繋がっていきます。


いずれも給食が絡んでいて、大人の立場で読むと
無性に給食が食べたくなってくる不思議な魔力を
待った本です。

大人からすればなんてことないような悩みにも
見えることもその年頃の子供たちからすれば
誰にも言えず、悶々と抱え込んでしまうことも
多いのだと読むうちに感じられ、こう言った
道を通って大人になっていくのだろうなと思いました。


さっき「なんてことない悩み」なんて書きましたが
振り返ってみれば自分だって同じような年頃に
同じような悩みを抱えて、爆発しそうになりながら
自分というものも見つけていった気がします。

自分の子供に読んでほしいと感じた本。
まだ多感な頃のうちに、それはおかしなことでは
ないんだよ、と読書を通じて知ってもらえたら
何よりだなと感じました。

こういう本で読書感想文とか書くのも面白いでしょうね。


物語の端々から子供たちの瑞々しさと、成長を
感じる一冊。
成長には栄養が不可欠。
給食はお腹も心もいっぱいにしてくれるんだなぁ。





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