里村専精師の「浄土真宗にようそこそ No18」をお届けします。
浄土真宗にようこそ(018)
天親( 3.4c.)菩薩は、仏教を基礎から学んで、
次第に大乗にまで研究を進められました。
前半生に学ばれたものは、小乗の説一切有部でしたが、
経量部の学問も学ばれました。
その集大成が、阿毘達磨倶舎論です。
後に、兄の無着にすすめられて大乗の学問に親しみました。
その大乗の代表的な論が、唯識論です。
問題は、天親論師は生きているサンガに包まれていたということです。
小乗にも大乗にも、ブッダは見えなくても、
ブッダの教えに生きるサンガがありました。
今でもアヨーディアと呼ばれる町がありますが、
ここで天親菩薩の後半生がありました。
この天親菩薩には、無量寿経に基づいた論が残されています。
「願生偈」とも「往生論」とも呼ばれるものです。
この論を書かれた時の天親菩薩は、一種特別な感慨があったもののようです。
その梵本がのこされていないのですが、
回向という言葉が用いられています。
その回向という言葉のもとの文字は、多分パリナーマ(pari'naama)です。
とすると、このパリナーマという言葉を用いられた頃の天親は、
まったく若い頃の…、あの天親ではないかのようです。
若き日の天親は、パリナーマは別の意味でした。
識の転変としてこの語は用いられました。
同じパリナーマなのですが、無量寿経では回向の意味に用いられています。
とすると、天親という人が2人いたとしてもよいくらい、問題を残します。
無量寿経の論を書いた天親は、
すくなくとも前半生の天親ではないと言えます。
天親菩薩自身が、大きな変革を経験されたのかもしれません。
無量寿経は、それほどに読む人を大きく改変する力を持っているようです。
それは大乗のサンガによって、論師を新しく育て上げたと言えるかもしれません。
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