着物で文化人気取り

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麦の穂をゆらす風

2006-12-03 18:45:51 | 映画
上映終了が近づいてきたため、おすぎさんお勧めのこの映画、本日急いで観てきました。

アイルランドという国から多くの日本人は何を連想するだろう? 
エンヤ、アイリッシュパブ、アイリッシュウイスキー、ケルトの伝説、アイリッシュダンス・・・
どことなくもの寂しげで神秘的な国。

でもこの国がたどってきたあまりにも哀しい歴史を知る日本人は
どれほどいるだろうか?


この映画の始まりは1920年。
永い英国の支配のもと、アイルランドに生きる貧しい人々は、さらに厳しい英国武装警察隊により、家族や仲間を拷問や処刑で次々に失っていた。
医師を志す青年デミアンがロンドンの大学への進学のため故郷を離れるまさにその時、目の前で幼馴染が英国軍に嬲り殺され、また最も弱い立場であるはずの市井の人々が彼らに出来る方法でイギリスに抵抗する姿を見て、兄がいる義勇軍に入る決心をする。
そして死と隣り合わせの中で、多くの仲間を失いながら、時には裏切られ、時には捕らえられ絶望の淵ギリギリの中で、仲間と共に激しすぎる戦いに身を投じていく。

でも・・・
本当は弱い人、守るべき家族のために立ち上げた義勇軍だったはずなのに、
組織が大きくなるに従い、情愛や正義よりも「規律」が重んじられるようになり、時として「非情」な決断を強いられる場面も出てきます。
これも祖国の独立のため、自由を手に入れるため、と自分に言い聞かせるデミアン。彼の視線の先にはいつも尊敬する兄テディの背中がありました。

やがて英国とアイルランドの間で休戦条約が結ばれ、英国はアイルランドの独立を認めます。
自分たちの戦いが実ったと、勝利を確信する義勇軍兵士たち。
しかし、その実態は英国軍は撤退するものの、北アイルランドは未だ独立を果たせず、
英国王室への忠誠を強要された、およそ独立とは程遠い条約でした。

約束が違う、と激昂するデミアンら、義勇兵士。しかし兄のテッドは英国軍を追い出せただけで良しとすべしと言う。
兄テッドは新政権の中で確実な地位を得た事で、この不毛の戦いに終止符を打とうとしていた。
それが仲間への裏切りに写るデミアンら共和国派。兄の所属する自由政権に叛旗を翻し、かつて共に戦ったはずの仲間同士が今度は敵味方になってしまう。

新たな争い。果てしない悲しみと憎しみの連鎖。
そして物語は、仲の良かった兄弟の悲劇の結末へ・・・

あまりにも重すぎます。辛すぎます。
自分のおかれた環境と乖離し過ぎていて、どちら側の立場にも立つことが出来ません。
というより、どちらの言い分もわかるのです。
国家というものを奪われた人々が、一体どれほどの思いをして自尊心を保っていくのか。
今私が、この平和な時代に、平和な国に生きていける喜びをかみしめてしまいます。

お気づきの方もいるでしょう。テッドやデミアンが所属した義勇軍。これが長い時代世界を震撼させたテロ組織「IRA」です。彼らの活動の根底にはこういう背景があったという訳だが、世間から見るとテロリスト。
現実には数年前やっと停戦のテーブルにつきました。(ここ数年爆破テロも行われてないのかな?)

他国の圧制に今なお苦しむ国はまだまだあります。
チベット、チェチェン、そしてパレスチナにイラク。

インドだってかつてはイギリスの植民地でした。(な~にが紳士の国だ) 
でもインドにはガンジーが居ました。チベットにもダライラマが居ます。
かれらの平和のメッセージは世界の共感と同情を得る事が出来ました。
(チベットに関してはまだまだ独立は遠いでしょうが)

反対にチェチェン、アイルランド、パレスチナ、彼らの抵抗運動は破壊と暴力によるものです。
原因は支配する側にあるとどんなに主張しても、テロでは誰からの理解も得られずさらなる孤立を招くだけ、そんな事を感じてしまう映画でした。 

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