システム担当ライブラリアンの日記

図書館システムやサービス系の話題を中心に。最近、歩き旅の話題も。

図書館資料が資産になるのって、合理的?

2018-10-04 21:23:31 | その他
国際基督教大学の黒澤さんはいろいろ詳しい方で、ブログも拝見していますが、図書資産についての記述で気になることがあったので、少しコメントを。

*私は国立大学法人の会計基準(の図書資産に関連するところは)については、それなりに知っているつもりですが、私立大学の会計基準は詳しくありません。おそらく似ている部分が多いだろうという推測で、国立大学法人の会計基準に照らして書いています。
*もし私立大学の会計基準からすると変なことを書いていましたら、ご指摘いただけると幸いです。

例えば、黒澤さんはこちらの記事で、「図書は普遍的な価値があるということで、減価償却されることなく、50年前の図書は、50年前の価格がそのまま計上される」と記されています。
https://ameblo.jp/kimito001/entry-12404593018.html
*強調は引用者。誤字は引用者が修正
*減価償却については、文末の (*1) 参照

一方で、国立大学法人の会計基準(に関する実務指針)(*2)では、
Q37-8
「図書については、償却資産という認識ではあるが、個々の図書ごとに使用の実態が大きく異なること及び比較的少額かつ大量にあることから、供用中は減価償却は行わずに、除却時に一括して償却費を計上する取扱いとしているところである」
と記されています。

ポイントは、
・償却資産
・けど(おそらく便宜的に)減価償却せず、除却時に一括償却

黒澤さんは「図書は普遍的な価値」と書かれていますが、国立大学法人の会計基準などからは読み取れず、そのような議論も私は聞いたことがありません。

この点は重要だと私は考えていて、大学図書館員の中には「図書は大事だから、会計上も資産なんだ」と思っている人が割といるように感じています。黒澤さんの記事がそれを後押ししない方がよいと思い、本記事を書いている次第。

それで、図書資産となることによって、無駄な仕事が増えていないでしょうか。

●図書資産の特徴:「比較的少額、大量、移動が容易」。上記引用部にも一部あります。

- 国立大学の場合、物品は50万円以上が固定資産です。10万円以上は管理物品(会計上は消耗品)とされていたかと思いますが、10万円未満は資産として管理はしません。
- 数も多いです。蔵書点検・棚卸・実査など呼び名は様々ですが、煩雑さは?(利用のための管理ではなく、会計上の管理という点で)
- 移動も容易なので、50万円以上の物品と比べてどうでしょうか。

●上記の「(おそらく便宜的に)減価償却せず」というのは、ある資料は経年劣化・内容陳腐化などで価値が下がったり、ある資料は絶版になって価値が上がったり、ということを含めてだと推測します。
そんなことではなく、潜在的に有用となる価値があるという意見もあるかもしれませんが、それもありだとは思います。

また、比較的大量なので(阪大で400万点、東大なら一千万点以上でしたか)仮に(便宜的に!)減価償却するとしても、システム上とても煩雑になるという意味もあるかと思います。

つまり、財務諸表の図書資産の金額は、便宜的なもの。悪く言えば、粉飾…!? いやいや、それは言い過ぎとしても、資産の残存価格を示すものでもないですし、それによって会計面から大学の経営の参考にできるものでもないでしょう。
仮に、どこかの団体に法人を売却するとしても、参考にされる数字でしょうか。
参考にならないしたら、その仕事の意味は?

先の実務指針では、「図書」は「教育・研究の基礎を形成する事項」とされています(Q6-1)。
これは極論かもしれませんが、では、教員の数は? 教室数は? とか疑問が湧いてきます。
教員の年収合計を流動資産として計上する方が、よっぽど経営の参考になる!?

図書の数値(この場合は冊数かな)が教育研究の基礎として外部に示すなら、蔵書冊数を示せばいいだけかと。
教員の数や、最近ではST比などは、財務諸表ではなく違うところで表現されていますよね?

●いきなりのまとめ
図書資産に関する論点はいずれ整理したいと思っていますが、ひとまず「図書館資料が(金額に関わらず、一定の条件で)資産になるのって、合理的?」ということをお伝えしたいと思います。


(*1) 減価償却とは、例えば、
「ウチの会社、社用として自動車・プリウスを10台買ったぞ。(300万円×10台として) 3,000万円の資産だぞ!」
…という風にならないように、その3,000万円の資産を一定のルールで毎年目減りさせて、その目減り分を毎年支出のように計上するものです。
 #大学時代に聞いた話を編集。大筋は正しいはず。

(*2) 引用元は、
http://www.mext.go.jp/a_menu/koutou/houjin/houjin.htm
の下の方。

「国立大学法人会計基準」及び「国立大学法人会計基準注解」に関する実務指針(平成28年4月21日最終改訂) 本文 (PDF:1632KB)
http://www.mext.go.jp/component/a_menu/education/detail/__icsFiles/afieldfile/2016/05/10/1289344_06.pdf

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