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備忘録

弁護側を胡散臭いとみるならば、検察の証拠も疑ってかからないと公平・公正とはならない

2009-06-29 14:39:24 | 雑記録

2009年6月29日

弁護側を胡散臭いとみるならば、検察の証拠も疑ってかからないと公平・公正とはならない


釈迦に説法 思い込んでいるものになにをゆっても無駄かもしれないが・・・

これまで何回か「足利事件」を取り上げてきました。というのは、事件解決には多くの時間はかかってしまったけれども事態が大きく動いた経緯の中に、「高知白バイ事件」が解決するヒントがあると思ったからです。

事件解決が遅々として進まないことにいらだちを覚えるのですが、足利事件でも高知白バイ事件でもそうですが、警察と検察による捏造、偽造などの不法行為が事件をより一層複雑なものにし、そのことが事件解決の大きな障害として立塞がっているということを認識し、理解しなければなりません。

きょうび、「警察や検察が悪いことをするわけがない」と思い込んでいる人というのは、皮肉を込めていえば同じ業界にいる裁判所の裁判官ぐらいものではないでしょうか。業界内の力関係からそうせざるを得なくなっていることもありますが、とても残念です。
世間では、自分が直接体験したことで明確にそう認識している人々をはじめとして、薄々そのことを感じている人までを含めたらいったい国民の何割がそのことに気づいていることでしょうか。このような実態がある中では、裁判に「良心、正義」や「真相解明を」求めること自体がナンセンスとなり、期待するほうがおバカということになります。

しかし、たとえ現実はそうであっても実際に事件に巻き込まれた関係者にとってはそれですまされるはずもありません。そんなデタラメな警察・司法のワンダーランドの中でもなんとか糸口を見つけ無実を晴らすべく最善を尽くそうと闘っているのだと理解しています。

足利事件では「DNAを再鑑定してくれたら必ず無実が晴れるから」と菅谷さんと弁護団が強く強く要求してきました。それをほったらかしにした裁判所、無駄に時間だけが経過し真犯人は取り逃がすわ、時効が来てしまうわ、で警察と検察が行った不正行為が事件解決に与えた悪影響は計り知れないほど大きなものがありました。
事件化され、起訴されて裁判所に場が移されたら移されたで、「警察や検察が悪いことをするわけがない」と決め付けて起訴状を判決文に書き直すだけの代書屋になり下がっている裁判官たち。これが司法の実態だと思うと嘆かわしい限りですが「ニッポンの司法は終わってる」と切り捨ててお終いとするわけにもいかず、あれこれ取り上げてみます。

こんな裁判所の実態を知ってか知らずか、官邸には「司法制度改革推進本部」という組織があります。司法の基本的制度を抜本的に見直すという大改革のフレコミで平成13年12月、総理大臣を本部長として全閣僚を構成員とする司法制度改革推進本部を作ったとあります。

・・・ 司法制度改革推進本部 ・・・
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そこの中に司法制度改革審議会という部会があり、毎回議論が行われていて集中審議第2日配付資料のなかに「日本国憲法が想定する司法とは」という文書があります。 --> こちら

こう書いてあります。(一部抜粋)

◎「すべての国民を平等・対等の地位におき、公平な第三者が適正な手続により公正かつ透明なルールに基づいて判断を示す」(『論点整理』)
  ⇒法原理的思考と具体的かつ現実的な事実認識に基づく自律的な秩序形成
  ・「理」に基づく解決であること
  ・具体的な事実関係を基礎とした経験的な判断に基づく解決であること
  ・当事者の主張に対して最大限配慮した秩序形成であること

この文書自体、とやかく文句を言われる内容でもなく、妥当な理念と思います。が、しかし実際の裁判の現場では違い過ぎていることにただただ唖然とするばかりです。この乖離は「いったいどこからくるものだろうか」って。

足利事件ではDNA鑑定が間違っていたことがテレビで大々的に流され、もはや逃げ切れないと観念したらしく、東京高裁矢村宏裁判長が6月23日に再審の決定をしました。
で、決定に至った理由が要旨として公開されました。それを読んでみて、どうも検察を庇おうとしているようで、そのために東京高裁の説明がいまひとつすっきりしないのです。なんかこじ付けの印象をうけてしまいます。

近々開始される再審では警察と検察の捜査段階で「なんで間違ったか」という技術的な検証もしなければならないのはもちろんのことですが、以下の要旨を読んでいくうちに、それよりもずっと大きな問題が横たわっていたことを悟りました。
これまで、なんで冤罪が繰り返されるのかと事例を調べているのですが、やれ「警察・検察が自白の強要をやった」とか、「証拠捏造、供述調書の偽造をやった」とか、「捜査そのものがでっち上げでデタラメだった」という事例をみてきました。警察・検察は絶対間違わない。それを前提としているからこそ、裁判官が検察の言う通りの判決を出しているから99.9%の有罪率が維持できているんだという理解でした。
表面的には確かにそうですが、なんで検察のストーリーを丸呑みできてしまうのかというところまでは、外部の人間にはなかなかわかりませんでした。その一端が以下の要旨の中に書かれていて、「なるほどな」と思ったわけです。業界内では常識になっていてそれが前提で仕事が流れていくのに、それを知らない世間の人はいつまでたっても疑問が晴れないわけです。

警察や検察の捜査の段階でやってしまう不法行為というのは既存の法律に罰則規定を新設すれば大きな抑止力になり、なんとかやめさせることもできますが、こういう暗黙の了解はどうすることもできないです。業界に流れている価値観が変わらないことにはどうにもなりません。

それというのは、

 検察官は弁護側鑑定人の鑑定の信用性を争うものの、検察側鑑定人による鑑定については信用性を争わないという。

「おいおい、おい」と思わず突っ込みを入れたくなります。
裁判にかけるどうかを決められる権限を持っているただ一人の人が検察官です。先月、一部弁護士もできるように法改正がありましたが、大本の法は変わっていません。
その検察官が弁護側が出してきた証拠が正しいものかどうかを吟味するのは当然の仕事ですが、そうかといって検察が出してきた証拠がすべて正しいかどうかは関係当事者以外は誰にもわからないはずです。警察が捏造したものかもしれませんし、検察官自身がエンピツ舐め舐め偽造したものかもしれません。その実例は足利事件や高知白バイ事件に限らずいくらでもあります。
そういう実態があるのに裁判官といったらの~天気に、検察が出してきた証拠に間違はいない、だから信用性を争うことはしないとしていいんですか、といいたいです。
弁護側が出してきた証拠は胡散臭いから信用性を争うが、検察側が出した証拠は信用性があるから争うことはしないと決めつけていいんですか。

そんな単純なものじゃないはずです。
「こんなでことでいいのか」、というのが率直な感想です。

中日新聞2009年6月24日

足利事件再審決定要旨 東京高裁

 足利事件で、東京高裁が23日、再審開始を決定した要旨は次の通り。

 一審及び控訴審判決が菅家さんを本件の犯人であると認定した根拠は次の2点に集約できる。(1)犯行現場付近に遺留されていた被害者の半袖下着に付着した犯人のものと思われる体液と菅家さんの体液のDNA型が一致したこと(2)菅家さんの一審公判廷及び捜査段階の自白供述が信用できること。本件再審請求で提出された新証拠も(1)、(2)に関して一審や控訴審で取り調べられた証拠の信用性を弾劾しようとするものである。当裁判所は証拠や事実取り調べの結果を総合し、現時点で(1)及び(2)の根拠が維持できるか否かを検討する。

 一審及び控訴審判決で認定された菅家さんが本件の犯人であることを裏付けるDNA型に関する事実は次の通り-菅家さんの体液と半袖下着に付着していた体液のDNA型は一致し、血液型も一致した。このようにDNA型及び血液型が一致する者の日本人における出現頻度は1000人中1・2人程度であった。

 再審請求で提出された新証拠は、電気泳動のバンドの位置を解析し、犯人と菅家さんのDNA型が同一との判定は誤っているというものである。

 当裁判所は再審請求で提出された検査報告書などの内容、科学警察研究所の技官が作成したDNA型鑑定書の本件の証拠構造における重要性、及びDNA型鑑定に関する著しい理論と技術の進展の状況にかんがみ、DNA型の再鑑定を行うと決定し、鑑定人を選任して鑑定を実施した。

 具体的には半袖下着を以前の鑑定により切り取られて体液の付着が判明している数カ所の中心点をつないで左右に切り分ける形で二分し、各一片に付着する体液と菅家さんから採取した血液などの各DNA型を明らかにしてそれらが同一人に由来するかを判定させた。

 検察側鑑定では、半袖下着の体液が付着していた個所の近くから切除した3カ所の部分から同一の男性のDNAが抽出され、菅家さんとは異なるDNAだった。体液の付着が確認されていない部分からはDNAが抽出されなかった。

 弁護側鑑定によると、半袖下着の体液が多く付着していた個所及びその上下部位から切除した3カ所以上の部分から同一の男性のDNAが抽出され、それは菅家さんとは異なるDNAだった。

 両鑑定で抽出された各男性のDNA型は一致し、同一人と推定される。

 検察官は弁護側鑑定人の鑑定の信用性を争うものの、検察側鑑定人による鑑定については信用性を争わないという。検察側鑑定のみによっても菅家さんのDNAと被害者の半袖下着から検出された男性DNAの型は一致していないこと、その男性DNAは、半袖下着の体液の付着が確認されている個所に近い3カ所の部分から抽出されていること、体液の付着が確認されていない部分からはDNAが抽出されていないことが認められる。検察官は検察側鑑定が用いた体液の抽出方法が適切だったと認めている。

 以上の点に照らすと、上記の男性DNAは本件の犯人のものと思われる遺留体液から抽出された可能性が高く、その型は菅家さんの型と一致しないことが認められる。そうすると弁護側鑑定の信用性を判断するまでもなく、検察側鑑定によって菅家さんは本件の犯人でない可能性が高いことになる。

 この事実は、菅家さんが有罪とされた根拠の一つでもある菅家さんの捜査段階及び一審の公判での自白についても信用性に疑問を抱かせるに十分な事実と言える。ほかに菅家さんが本件の犯人であると認めるに足りる証拠はなく、菅家さんが本件の犯人と認めるには合理的な疑いが生じてくる。

 本件再審請求は刑事訴訟法の、有罪の言い渡しを受けた者に対して無罪を言い渡すべき明らかな証拠を発見したときに該当する。よって、原決定を取り消し、再審を開始することを決定する。



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