人生の大先輩から学ぶこと

定期的に通ってくれている80代の女性患者さん。毎回いろんなお話をしてくださいます。
ご家族のこと、若かった頃のこと、最近感じていること…ゆっくりとりした口調で話されるので、聴いている私もゆったりした気持ちになります。

人生の大先輩なので、当然のことながら私とは生きてきた時代背景が全く異なります。現代と違って女性が自立のために働くには厳しく、結婚するのが当然だった時代。今の女性はたくさん選択肢があるから羨ましいとおっしゃったこともありました。
この方は、社会的ステータスに価値があるという世界に放りこまれたようです。そこから新たな場所へ向かうにはあまりに障害が多く、ひたすら耐え忍んでいたとのこと。お話を伺っていると心苦しくなることもありますが、悲壮感ばかりが漂う訳ではありません。語られる言葉の端々から潔さと力強さを感じるし、ユーモアのセンスもあるので、どんな重たい内容の話でも最後には明るく終わるのです。
治療の終わりを告げると「いつも愚痴ばかり聞かせてしまってごめんなさいね」と柔らかい笑顔でおっしゃいますが、こちらは愚痴を聞かされた感じがしないのです。

お若い頃から人の相談に乗ってばかりで、自分の話ができる場所はほとんどないそうですがそれも頷けます。あの人なら、と安心して話せる雰囲気を醸し出しているからです。毎回、いろんなことを学ばせてもらっています。

時折、次の患者さんと治療院内で入れ違いますが、この患者さんを見た方数人から「今いらっしゃった方、素敵ですね」という言葉を聞きました。
そう思うのは私だけではないんだなと勝手に嬉しくなっています。