原題:“map of the sounds of tokyo” R15+
2009年・スペイン (98分)
監督・脚本:イザベル・コイシェ
出演:菊池凛子、セルジ・ロペス、田中泯、中原丈雄、榊英雄
鑑賞日:2010年9月22日 (新宿)
鑑賞前の期待度:★★★★
ごめんなさい。
予告編で観た、女体盛に食いついて観てしまいました。
だって、女体盛のシーンから始まるラブストーリーって、前代未聞でしょ?
主演は菊池凛子で、監督は女性。
スペイン映画で、舞台は東京。気になるじゃん。
隠れた名作となるか、単に駄作として埋没するか?
ストーリーとしてのハラハラドキドキもあるけど、
自腹で観る以上、後で後悔することにならないか、ハラハラドキドキ。
で、結果は・・・。
ひとつひとつ思い出しながら感想を・・・。
物語は、田中泯演じる録音技師のモノローグで進んでいきます。
ストーリーは、諸々紹介されている通り。
心を閉ざしたまま、不眠症のまま生きている日本人女性リュウと、
日本人の恋人に死なれ、生きている意味を見失った異邦人ダビ。
そのふたりが、とあるきっかけで出会い、
心が変化していく様をメインに描いていました。
スクリーンに映し出されるのは、
築地市場、地下鉄、地下通路、下北沢、高円寺、横浜らーめん博物館、ラブホテル、花やしき、・・・などなど。
東京のようで、東京ではない雰囲気なのは、
どこか黄色掛かった色調のせいだろうか。
ラブホテルでのシーンは、とても不思議な感覚に捕らわれました。
とくに2度目のホテルでのふたりの遣り取りは、淫靡。
さらに、ふたりが路上で口移しにいちご餅を頬張りあうシーンも淫猥な印象。
でも、それが性と食という欲望を共有することで、
互いに生きている実感、感情を取り戻していく過程なのだと、
ぼくは受け取りました。
おおむね、物語について行くことは出来たのですが、
この作品はスペイン映画。
ぼくには、
「スペイン映画は、観終わった瞬間、宙に放り出される。」
という個人的印象があるのですが、この作品も、しかりでした。
最後の最後に、「????」と疑問符が!
監督が脚本も書いているので、
かなり私的な視点の入った作品だということは理解できましたが・・・。
また、上映中、
作品の中の日本語(鏡に血で書かれたメッセージも含め)に、
些細な違和感を覚えました。
間違ってはいないけれど、丁寧すぎるという気が。
ただし、
そのことが、詩を朗読しているような、
あるいは文学作品を朗読しているかのような雰囲気も醸し出していたので、
おそらく、それが狙いなのだろうと思いました。
全体的な印象としては、掴めそうで掴めない、不思議な感じのする映画でした。
と、以上が作品を観た直後の感想です。
菊池凛子の体当たり演技:★★★★★★
イザベル・コイシェの濃さ:★★★★★
東京ではなくTOKYO度:★★★★★★★★★
ラーメンは音を立てて啜ってこそと思う度:★★★★★★★★★★★★★
長良の自殺した娘役は、あびる優だよね?:★★★★★★★★★★
鑑賞後の評価は、しないでおきます。
その理由は、以下通り。
鑑賞後、疑問がいくつか浮かんだので、
オフィシャル・ホームページの監督のコメントを読んでみました。
そこには、監督がこの作品を制作した動機が書いてあり、
「なるほど。だからか。」と、納得できるところもありました。
それでも、残った疑問は、
「本当にこの作品は、これでいいのだろうか?」ということ。
たとえば、
ダビが経営するワインショップのシーンでの違和感。
「あれ?何か省略した?」と思える繋ぎ方。
劇場では、
「本国から送られてきたフィルムの状態が良くない」という断わりが書いてあり、
実際、エンドロールでは、
キャスト、スタッフはじめ、何が書かれているのか全然読めませんでした。
(スペイン語が分からないという意味ではありませんよ。)
この作品には、なにかワケがある・・・。
そこで知ったのが、大人の事情というものでした。
ぼくは本当に知らなかったのですが、
この作品には、本来日本人俳優がもうひとり出演していたということ。
一度は完成し、2009年のカンヌに出品したにも関わらず、
その俳優の出演シーンが、演出上の理由ではなく、
俳優が事件を起こしたことにより、全てカットされ、
編集し直された作品だということを知りました。
映画作品にとって、とても悲しい事情です。
関係者も努力したとは思いますが、
監督としては、きっと不本意な作品となってしまったと思います。
非常に残念なことです。
結果として、観て後悔はしなかったけれど、
可能ならば再編集前の完成版を観て評価したいと思いました。
DVDでは、どうなるんだろう?
英語版のオフィシャル・ホームページ
Castをチェック