原題:悪人 PG12
2010年・日本 (139分)
監督:李相日
原作:吉田修一
脚本:李相日、吉田修一
音楽:久石譲
出演:妻夫木聡、深津絵里、樹木希林、柄本明、岡田将生、満島ひかり ほか
鑑賞日:2010年9月14日 (新百合ヶ丘)
鑑賞前の期待度:★★★☆
原作は未読。
ストレート過ぎるこの作品のタイトルを見ただけで、
「きっと観終わった後、いろいろと考えさせられるんだろうなぁ。」
という予感。
観ておくべきか観ずにおくべきか・・・と、思案したあげく、
主役の妻夫木聡が、相当思い入れを込めた作品だということと、
深津絵里が、モントリオール世界映画祭で、
最優秀主演女優賞を受賞したという話題もあり、
あらすじだけを頭に入れて観ることに。
・・・で、
まず、出演者全員に拍手!!
妻夫木聡、深津絵里、樹木希林、
柄本明、宮崎美子、岡田将生、満島ひかり、
といったメインキャストもさることながら、
光石研、余貴美子、塩見三省、池内万作、
井川比佐志、永山絢斗、
一言しかセリフのないモロ師岡やでんでんなど端役に至るまで、
この映画に登場した俳優すべてに拍手を送りたいと思いました。
彼らが演じていたのは、
身内であったり、親戚であったり、近所の人だったり、
友人であったり、同僚であったり、
利用するバスの運転手であったり、タクシーの運転手であったり・・・と、
まぎれもなくぼくたちの身近にいる人たち。
彼らの存在がリアルだったからこそ、
それぞれのシーンに、
切なさや悲しみ、いらだたしさ、腹立たしさ、
憎しみ、嫌悪、孤独、絶望、そして僅かな希望を感じ、
心が揺さぶられ続けました。
派手派手しさはなく、むしろ抑制された演出にもかかわらず、
139分もの間、スクリーンから片時も目を離すことが出来ませんでした。
ただ、
この物語を観終わった後、どう受け止めるかは人それぞれ。
何も感じなかったという人もいれば、
深く頷いた人、胸が締め付けられた人もいると思います。
また、誰が本当の“悪人”なのか?
映画の中にある答えとは別に、
観客ひとりひとりに委ねられた答えもあるような気がしています。
裕一の孤独感:★★★★★★★★
光代の切なさ:★★★★★★★★
漂う閉塞感:★★★★★★★★
現代を生き抜くことの難しさ:★★★★★★★★
けっして他人事じゃない度合い:★★★★★★★★★★★★
鑑賞後の総合評価:★★★★
鑑賞前の予想通り、この映画にはいろんな事を考えさせられたのですが、
あるイメージが頭に浮かんだ瞬間、ぼくは愕然としました。
以前なら、
殺人事件を題材にしたひとつの物語として受け止め、
自分の心の中で終わらせることが出来たのです。
でも、いまや裁判員裁判が行われる時代。
こうした事件と関わりあう可能性もあるということ。
仮に、この『悪人』のようなOL殺人事件が起こり、その犯人が立つ法廷で、
ぼくが裁判員の一人として向かい合うことになったとしたら・・・。
果たして、映画の中で語られたような事件の背景や犯人の人柄まで、
見極めることができるだろうか?
遺族である父親や母親の前で、犯人に対して、どんな刑を与えればいいのだろうか?
TVや新聞といったマスコミの報道だけで、
「人間のやることじゃない。」と切り捨てて終わることはできないのだと、考えさせられました。
TB&コメント、ありがとうございました。
>それぞれのシーンに……心が揺さぶられ続けました。
同じです。
心にじーん。。。と染みてくる感満載で、ずっと映画の世界に入っていました。
静かに淡々と描かれるストーリーなのに、ドキドキしました。
様々な事を広い視点で見る事の大切さも感じた映画です。
コメントありがとうございました。
観終わっても、なお色々考えさせられるってことは、いい映画なんですよね。
また、お立ち寄りください。