●一部の人が待ち望んでいた助動詞である。
問い 次の文の訳として最も適当なものを選びなさい。
いかばかり心のうち涼しかりけむ。(徒然草・一八段)
ア どれほど心中では平然とできるだろうか。
イ どんなにか心の中まで涼しかっただろう。
ウ どうしても心の中は平然でありたいとしていた。
エ どこまでも心中は涼やかに過ごしていきたい。
答えは瞬殺でイである。【「けむ」=過去推量=ただろう】が訳出されているからである。
このように助動詞は選択肢を消す基準となるし、訳するときに重視される点である。これから助動詞を学んでいこう。
【克服のための手順】
第一作業 接続毎に暗記する (以下のものは至急暗記せよ)
未然形接続
・客体化する助動詞(主語がずれる。当事者でない=俺じゃないですから)
「る・らる」(受身)「す・さす・しむ」(使役) → 尊敬(自分が原則として主語になれない)
・まだ起きていないことを表す助動詞
「ず・じ」(打消)「む(ん)・むず(んず)」(推量)
「まし(反実仮想)「まほし」(希望)
連用形接続
・過去・完了
「き・けり」(過去) 「つ・ぬ・たり」(完了) 「けむ(過去推量)
・ 希望 「たし」
終止形接続
・推量、推定(未然形接続のものより確度が高い)
「まじ・めり【目在り(視覚推量】・なり【音あり(伝聞推量)】・らむ・らし・べし」
※終止形が現実100%ならそれに近い意味になるの終止形接続の特徴である。「めり」の語源が【目在り】なのは目で見た分、根拠があり、現実60%~80%くらいのイメージなのだ。
サ変の未然OR四段の已然に接続(~e・エ段)
「り」(完了) ※さみしいエリカ=サ変の未然・四段の已然・~e+り・完了
第二作業 各々の活用を理解する
★ 急いで暗記するグループ
a 「ず」「き」「まし」(特殊型) b 「ぬ」(ナ変型) c 「むず」(サ変型)
d 「む」「らむ」「けむ」
※「むず」だけがサ変と思えた君は偉い! 語源が「~むとす」なので「す」の部分がサ変だからサ変型になったのだ。
★法則性を掴む
e「る・らる・す・さす・しむ」(下二段型)
f「り・なり・なり・けり・めり・たり・たり」(ラ変型)
g「べし・たし・まほし・まじ・ごとし」(形容詞型)
h「じ・らし」(無変化)
※無変化の「じ・らし」は係り結びに対応することがあるため、助詞ではなく助動詞になる
第三作業 各々助動詞の使い方を覚える(これは学校の副読本を使うといいよ)
・ グループによる整理 ・ 訳について教科書や問題演習で慣れる
・ 連続した助動詞を理解する
助動詞46を活用できます。46例文で古文の助動詞を征服するという記事群です。第四作業にも対応
第四作業 識別問題に対応
・ パターンを理解する ・ 問題演習をする ・ 訳に活かす
◆連続した助動詞の例
上が連用形の場合♪
「てむ・てき・てけり」の「て」は完了♪
「なむ・にき・にけり」の「な・に」完了♪
「てば・なば・てばや・つべし・ぬべし・なまし・てまし」みな完了♪
下に推量、強意かも♪(
※土屋博映師のソングに前後2行を蛇足しました。
◆ 助動詞の意味と訳について(対応関係に気がつこう)
らむ=(意味)現在推量=(訳)ているだろう けむ=(意味)過去推量=(訳)ただろう
※訳と意味はセットで覚えることが大事だよ。
◆ 識別の手順三大注意事項
① 接続 ②活用形 ③意味・文脈
(例)読まぬとき(未然形接続で連体形なので打消) 読みぬ。(連用形接続で終止形なので完了)
◆ 全部が助動詞に見えてくる病気がある。用言の復習をますはやっておこう。
死ぬる女 (ナ行変格活用の活用語尾の一部)
うつくしかるべきなり。 (形容詞の連体形の活用語尾の一部)
涙ぞこぼるる。 (下二段活用連体形の活用語尾。自発ではない)
※「こぼ」なんて未然形はないよぉ。あったらバ変動詞ができちゃいますよぉ