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国語屋稼業の戯言

国語の記事、多数あり。国語屋を営むこと三〇余年。趣味記事(手品)多し。

Rちゃんの伝記(2)

2007-03-16 00:06:27 | 戯言
Rちゃん、6歳のころである。

Rちゃんはスイミングスクールに通うことになった。お母さん(N子)が健康のために通わせることにしたのである。

Rちゃんは初めての習い事であり、そして本格的なプールを、ましてや、屋根のあるプールを、あ、さらに言えば温水プールを見るのも初めてであった。

スイミングスクールの先生はRちゃんを筆頭にした10余人の新しく入った子供たちに話し始めた。

「はい。みなさん、こんにちはぁ!」

「こんにちはあ!!!!!」

子供たちは元気に返事をした。特にRちゃんは初めての環境に興奮したせいか特に元気に返事をした。というか、テンションはしょっぱなから、全開である。

「よい子のみんなとこれから約束があるんだ。いいかな?」

「はぁ~い!」

「プールサイドは走らない! はい、繰り返して」

「プールサイドは走らないぃっ!!」

「特に濡れたプールサイドは危ないんだ、気をつけようね」

「うん!」

Rちゃんはプールサイドが何だか解らなかったが、とにかく元気に答えた。

大きなプール。初めて会うお友達(そうこの頃に会うすべての人たちはお友達だったような気がする)。これではしゃげなければ、子供はいつ、はしゃげばよいのだろう。

そのときである。Rちゃんのお母さんは娘が心配でスイミングスクールの初日を見に、子供たちの集まっている方向と反対にある入り口から入ってきた。
めざといRちゃんはお母さんが入ってきたのに気づいた。ちなみにRちゃんは現在もめざとい。

「あ!ママ」

Rちゃんは走り出した。全力でだ。テンションが高いままでだ。

それもプールサイドをだ。

濡れたプールサイドは危険である。あ。それはさっき書いたな。

その危険なプールサイドを走ったRちゃんは滑った。
さすがに危険なプールサイドである。滑ったRちゃんはひざをコンクリートの角で切ってしまった。そして回転しながらプールに落ちた。その激痛ゆえだろうか気絶したRちゃんは、ひざから血を流しながらプールにぷかぷかと浮いた。Rちゃんは救急車で運ばれた。

Rちゃんはずきずきとした痛みで目が覚めた。病院のベッドの脇にはお母さんがいた。

「あ、ママ」と言いかけた瞬間、Rちゃんはお母さんに殴られた。
「ママ、痛…。」「あんたね、あたしがどれほど恥ずかしかったかわかる?」

まあ、恥ずかしいよね。N子さんに一票。

スイミングスクールの初日にプールで血を流しながら、気絶して浮いているRちゃんを見てしまった同期の方々のうち4人はその日にやめたらしい。Rちゃんは小学校を出るまで続けたというのに。

その4人の方々がRちゃんのせいでプールにトラウマにを持っていないことを祈るのみである。
コメント (2)
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