1sec.

2014-09-04 | チャンベク

「今朝から俺たち、一言も喋ってないよ」

ずっと、移動の車中でも、珍しく本なんか読んじゃって。

本から目も離さないで生返事ばかりするチャニョルにそう訴えると、

やっとこちらを見て、

「ごめん。あと、少しだから。」

そう言ってまた本に目を戻す。

「何が少しなの」

「…犯人、もう少しでわかりそう…カイが貸してくれた本、日本の作家のだけど、面白くて…」

上の空で呟いてる。

「待てない」

「そんなこと言わないで…あと3ページくらいだから。」

「おまえ、読むの遅い」

「ごめんごめん。」

絶対、ごめん、って思ってない。

「あなたの命が、あと、わずかしか残ってません。チャニョルならどうする?」

「え。」

突然、弾かれたようにこちらを見る。

やった。勝った。

「ねぇ。どうする?」

顔を覗き込むようにすると、その大きな目を逸らさずに、

「…ベッキョンと一緒に過ごすよ。」

と言った。

その目を離したくなくて、意地ワルなこと言ってみる。

「残念、今、一緒にいないんだ」

「会いに行くよ。」

「ざんねん!あと1秒しか、残されてないんだ」

ふふ、と、笑いが漏れる。

困った顔の君を見るのも、好きだよ。

さあ、どうする?

おれの勝ちだね。

 

するとやつは、ちょっと目を泳がせて、考えてから、

「…じゃあ、想ってる。想いなら、届くから。ね。だから、あと2ページ、待ってて」

そう言うと、また本に戻っていった。

 

クソ、負けた…。

 

 



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