今回は、Windows 11への移行によって生じる問題点や注意点を話していきたいと思います。
Windows 11はベースは古いシステムのままでありながら、OSの内部機能にさまざまな変更がなされており、互換性が高い一方、トラブルも誘発しやすくなっています。
システムと機能を一緒に進化させてきたWindows XP→7への移行やWindows 7→10への移行とは全然違う面も多いので、相当注意していただかないと、かえってセキュリティリスクを高めたり、大量のバグで業務を停止させたりする可能性があります。
■Windows 11への移行で発生する問題点
まず、最初に最も気になるであろうソフトウェアの互換性についてですが、これはほとんど気にしなくて大丈夫です。Windows 10とWindows 11はともにベースとなるカーネルというシステムがNT 10.0なので、ほとんどのソフトウェアは問題なく動作します。
しかしWindows 11は互換性を優先して古いカーネルのまま新機能を盛り込んだため、「互換性のあるソフトウェア」、特に新機能を利用するWindows 11専用のソフトウェアで問題が発生しやすい傾向にあります。
例えば、ベースとなるシステムが更新されなかったため、次のような問題が発生しています。
・Windows 10と比べて、セキュリティの問題が生じるリスクが10%も高い
・Windows 11専用ソフトがWindows 11をWindows 11と認識できず、動作が停止してしまう
・Windows 11固有の機能を正しく呼び出せず、新機能対応のアプリが止まってしまう
・カーネルが新機能に最適化されていないため、メモリなどを中心にWindows 10の約2倍程度のスペックが必要になる
・古いハードウェアではWindows 10時代のソフトを含め、多くのソフトウェアが正しく動作しなくなるおそれがある
このような問題が発生するため、Windows 11への移行は拙速に行うのではなく、十分な検討をした上で、段階的に移行していくことが重要です。社内システムの全てをいきなりWindows 11に全て置き換えるのは上記リスクの発生を大幅に高め、大変危険です。
■Windows 11への移行がセキュリティリスクを高める!?
先ほども言った通り、Windows 11はWindows 10に比べて、セキュリティ上の脆弱性リスクが10%も高いという結果が出ています。
これは常にインターネットにつながっていて、かつアップデートし続けられる環境であればそこまで問題ないですが、インターネットにつながっていないシステムではかなり問題があります。
セキュリティリスクが10%も高いので、USBメモリなどの外部機器の接続やアップデートそのもの実行時のリスクも10%高いということです。それは累積していくため、アップデートの間隔が長ければ長いほど、リスクは高まります。
アップデートが一切されていないシステムであればWindows 11への移行はせず、Windows 10のまま使い続けることを強く推奨します。このようなシステムではWindows 11への移行はセキュリティリスクを高めるだけです。
■Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021への移行という選択肢
もし、Windows 11によって生じる全ての問題を回避しなければならないという企業さんでしたら、Windows 10 IoT Enterprise LTSC 2021という長期サポート版のWindows 10へ移行することをおすすめします。
こちらは無償アップグレードこそできませんが、Windows 11への移行と比較すると、次のようなメリットがあります。
・潜在的セキュリティリスクを抑えつつ、アップデートが継続される。
・新機能の追加が行われないので、常に安定したシステムが使える(アップデートによって生じる問題も少ない)
・毎年の大型アップデートがないので、セキュリティアップデートだけを受け続けることが可能
・機能が削減されている(あとから追加可能)ので、ストレージ容量を節約できる。
ただし、注意点もあります。
・Microsoft Storeが入ってないので、Microsoft Storeを入れる手間がある
・サポート期限が2032年1月13日までである(なおWindows 11は2027年にサポート終了となります)
・ボリュームライセンス契約が必要(個人でもできるので、基本的に企業さんなら大丈夫)