青い空は動かない、
雲片一つあるでない。
夏の真昼の静かには
タールの光も清くなる。
夏の空には何かがある、
いじらしく思わせる何かがある、
焦げて図太い向日葵が
田舎の駅には咲いている。
上手に子供を育てゆく、
母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
山の近くを走る時。
山の近くを走りながら、
母親に似て汽車の汽笛は鳴る。
夏の真昼の暑い時。
今日は中也をとりあげた。
何かを浄めているような夏の光と、夏服の母の幻影がしじまのなかで結ぶ。
母親は上手に子供を育てられるのか。その声は汽笛に似ている。
何を言っているのか。
人間を育てるのはだれだろう。
真実との間に一瞬ひらめく傷が痛い。
詩人は親に上手に育てられたのだろうか。
かぞいろの夢となりたき子は病みてかなしかりけるゆがみゆく骨 揺之