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ゆらぎつつゆく

添島揺之歌集。ツイッター感覚で毎日つぶやきます。色調主義とコラボ。

インディアン・サマー

2018-02-04 03:05:53 | 絵画


ロバート・スウェイン・ジフォード(1840-1905)、アメリカ。


インディアン・サマーは小春日和のことである。

秋から冬に倒れていく気候の中で、ふと寒さがゆるぐ時がある。

冷えた逆風の中の日々に、つかの間、凪いだ穏やかな日が来るときがある。

それが悲しみに濡れているのは、また明日になれば冷ややかな寒さが来ることを知っているからだ。

逃げることのできない人生の中には、時にだれかが玉をおいてくれたかのように、やすらぐ日が落ちて来るときがある。


ひだまりのあかるみをとりまろめてはきみゐる野辺の陰にそへたき    揺之






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黒い帽子

2018-01-30 03:05:35 | 絵画


ジュリアン・オルデン・ウィアー(1852-1919)、アメリカ。


帽子には心を隠す効果があるものか。

女の表情には、何かを隠したいと思っている風がある。

心を隠したいと思う心には二種類ある。

見られたくないというものと。

知られたくないというものと。


からころもたもとの玉をさぐりつつまなこにいづるこひやくるしき    揺之






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六月の風景

2018-01-17 03:05:44 | 絵画


ブルース・クレイン(1857-1937)、アメリカ。

季節は合わないが、麗しい景色だ。
みずみずしく明るい緑が心地よい。
風の匂いすらしそうだ。
毎年、盛り上がっていく初夏の景色を経験できることは、人生の甘い恵みだと思う。


透くほどに明かき緑をあふぎつつ鳥鳴き渡る初夏の空    揺之





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運河を行く舟

2018-01-09 03:06:25 | 絵画


チャールズ・ハリー・イートン(1880-1889)、アメリカ。


静かな水路に一層の小さなボートが浮かんでいる。おそらく運河だろう。流れのない静かな水面が鏡のようだ。

家並みの中にかすかにうごめく人の暮らしを感じる。

運河はさまざまな生の文様を人間社会に投げかける。

どこかに悲しみがつきまとうのはなぜだろう。

神が創ったものではない川には、時々悲しいものが泳いでいるのだ。


このかはを折りて伸ばせば君が屋のちひさき窓に舟もとどかむ    揺之






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雨後の秋

2017-12-29 03:05:46 | 絵画


チャールズ・ハリー・イートン(1850-1901)、アメリカ。


秋の雨は冷たい。

その止んだ後には、憂いが拭われたようなさわやかさはない。

悲哀を浴びた後の悲しさが風景を漂う。

もうすぐ冬がやってくるのだ。


秋時雨降る野に立ちてゆふぐれのうれひのうするすべもなき人    揺之






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秋の日の出

2017-12-23 03:05:50 | 絵画


ベン・フォスター(1852-1926)、アメリカ。


おそらく曇天だろう。

静かな日の出だ。空に赤みもささず、輝かしい昼の予感もない。

森は死んでいるようだ。

冬に倒れていく秋の中でも、日の出はくりかえされる。

絶望の日々の中でも、永遠の愛の約束は繰り返されるのだ。



秋の日のしづかな光ふりくればうれひも澄みて道の辺に立つ    揺之






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空の城

2017-12-13 03:21:17 | 絵画


トーマス・アレクサンダー・ハリソン(1853-1930)、アメリカ。


少年は空に楼閣を思い描いているらしい。

傍らの砂に貝を並べ、しばし空想遊びをしていたものだろう。

みすぼらしい服は彼の暮らしが甘いものではないことを教えている。

逃げられない真実は常に、ゆるく人間の首を絞めている。

その苦しさから逃げるため、人は時にまぼろしにもすがるのだ。



ひさかたの天路に白き家を建てわがふるさとはかくなりといふ    揺之





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緑の風景

2017-12-12 03:06:09 | 絵画


ジョージ・イネス(1825-1894)、アメリカ。


初夏だろうか。

子牛を引いた、いや子牛に引かれているかのように、女が緑の中を歩いている。

悲しいことのおおい世界から逃れ、誰かに導かれて常世の入り口をさまよっているのかもしれない。


初蝉の声をたどりてゆく夏の緑は澄みて忘却の森    揺之






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産業的風景・モノンガヘラ川沿いの工場

2017-12-04 03:05:53 | 絵画


アーロン・ハリー・ゴーソン(1872-1933)、アメリカ。


都市や工場の風景をよく描く画家らしい。

19世紀後半から20世紀初頭には、まだこういう風景によいものがあったのだろう。

今振り向くと、なぜこんなところで生きて行けたのかとさえ思う。

人間は科学的進歩の階段を登っていきながら、自分の中の何かを壊し続けてきたのだ。


悲しみのつもる工場に働きて悲しみを消す薬を作る    揺之






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はまぐりを掘る人

2017-12-03 03:05:49 | 絵画


ジョン・J・エネキング(1841-1916)、アメリカ。


印象派に傾いた絵だが、色調主義の紗も見える。

痛い目つきだ。はまぐりを掘る老人は、ほかにできることがないのだろう。

いろいろと侮蔑されているに違いない。

体躯の中に、噛みつきそうなプライドを包んでいる。

苦いことをする人間とは、こういうものなのだ。


磯貝の片身のせまき世にありて恨むは逃ぐるわがみなりけむ    揺之






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