alla marcia

こはぜの覚え書き

伝える気持ちと受け取る力☆長浜盆梅展夜間ライトアップ特別企画 山階家早春の舞

2011-02-11 21:58:12 | 見にいきました
 いつでもいけると思っていると見逃してしまうのが地元のイベント。
 思い立って、夕方から慶雲館の長浜盆梅展にいってまいりました。
 現在、夜間ライトアップ中。ほの暗い中でみるお花も風情があります。



 2階の大広間で、衣桁に唐織の装束をかけている背広のお兄さんがいらっしゃいました。地元の博物館の学芸員さん…かな?なんて思い、何を展示されているのか気軽に尋ねてしまったのですが、後で舞台の準備をされている山階彌右衛門先生ご本人だったと知って大汗。いやもう、無知のなせるわざです。平にご容赦くださいませ。

 と、いうことで、ご案内いただいた「山階家早春の舞」。近江猿楽山階座の芸統を伝えるという観世流能楽師、山階彌右衛門先生と山階弥次先生のお仕舞を見せていただけるとのこと…え、ここで?エレベーターのまん前のピンクのカーペットの上で??
 お能の世界には不案内ですが、そんなエライ先生がたが、踏んでも音もしないようなカーペットのうえで演じてくださるというのがにわかには信じられませんでした。客席だってざぶとん一枚あるわけでなし、その辺に好きなように(無秩序に?)座って見ているかんじです。これはなかなか新鮮です。

 しかし、白足袋がすべればそこは板の上。踏めば「どうん」という音だって聞こえる気がします。
 ちゃんとした舞台で見る芸もよいけれど、お稽古場で踊られる浴衣のお師匠さんがたから感じるナマのすごさというのもある。そういう、ナマの迫力を感じるにはもってこいのシチュエーションでもあります。

 端整な弥次先生の羽衣。お声の力強さにほれぼれ。
 彌右衛門先生の八島は熱演系仕舞?
 演じられる前の解説も分かりやすく、また、素人が見て受け止めやすい演目を、過不足ない長さで(もしかしたら、演じる側からすれば、相当思い切った短さなのではないかと思えるほどの…)見せるセンスがすごい。お能のよさを伝えよう、知ってもらおう、ということを本気で考えておられるのがよく分かります。
 最後には、すり足の歩き方を伝授。お客さんもみんな立ってやってみよう!これ、普通の能楽鑑賞教室なら、何人かに舞台にあがってもらって…というとこなんでしょうか。いや、白足袋ルールもあるし、そうはお気軽には舞台には上がれへんかなあ。ともかく、こうなると、「カーペットの大広間」というのが強みになります。観客も素直に全員参加。お尻を上げて、胸をはって、左足、右足、とまじめな生徒たちのぎこちないすり足大会。
 お客さんの中には、お能をよくご存じで、今日この催しがあると知ってこられている方もいらっしゃるでしょうが、わたしのように知らずにたまたま来合わせた方もたくさんいらっしゃるはずです。それなのに、すり足実技はもちろん、羽衣も八島も、しんと息を詰めて集中して見つめている客席。知らなくても、分からなくても、とにかくきちんと話を聴いてみよう、しっかりと見てみよう、何かをうけとろう。そんな心地よい空気がありました。(真宗王国の土地柄、ごえんさんのお話に耳を傾ける門徒の姿とダブりました。)

 終演後は、「皆さんどうぞ」と衣裳や道具を見せてくださいました。くだんの衣桁の唐織は羽衣のお衣裳とのこと。帯や長絹も間近で、演目の合間にも見せてくださっていた能面も、もう一度じっくりと。また、扇の細密な美しさも、息のかかるような近くで拝見できました。美しい扇もお衣裳も、博物館でいくらでも拝見しているのに、演じる方が手にして見せてくださるものの“生きている美しさ”には思わずため息が出てしまいます。

 短時間の催しではありましたが、ホンモノがホンモノを本気で見せるという舞台。こういうのに出会うとほんとに幸せです。
コメント
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