Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

★☆第69回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その4)~ IPT Basicのトレーニング)に参加して~☆★

2020-08-25 15:20:01 | メンタルヘルス

第69回[欧米最新情報] 対人関係療法(IPT)の今(その4)~ IPT Basicのトレーニング(シドニー、豪)に参加して~

IPTの構造(IPT Structure タイトル上図)にあるように、治療プロセスは、4期に分けられます。アセスメント/初期フェーズ(1-3セッション)、中期フェーズ(4-12セッション)、終結期(1-4セッション)、および継続治療期です。

対人関係療法(IPT)の原則は、治療者(セラピスト)がIPTをクライアント(患者)に施すことではありません。その代わりに、クライアント(患者)とともに、IPTをすすめるのです。対人関係療法は、傾聴と指示のあいだの創造的な緊張を伴ったもので、クライアント(患者)に適するように仕立てるべきです。固定的で柔軟性のない治療法(セラピー)であってはいけません。

さて、「アセスメント/初期フェーズ」では、精神医学的な評価を完成すること、「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」と「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)」および「IPTサマリー」を、クライアント(患者)と一緒に、協同作業として、作成することです。 とくに、アタッチメントの評価については、クライアント(患者)自身に直接質問をしたり、他者からの情報、共感的な、時折指示的なProbes(探索法)により行います。

「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」は、前々回ふれましたので、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)*」および「IPTサマリー」について説明しましょう。

対人関係フォーミュレ―ション(Interpersonal Formulation*)は、対人関係の「現状分析と治療方針」をまとめたものです。「医学モデル」ではなく、「生物心理社会/文化/スピリチュアルモデル」でまとめあげたものです(上図)。同モデルに基いて、「生物学的要因」、「社会的要因」、「心理学的要因」、「文化要因」、そして「スピリチュアル要因」ごとにまとめていきます。それぞれの中身は、図を参考にしてください。

「生物学的要因」には、年齢や性別、子供、過去の病歴などが入ります。「社会的要因」では、既婚かどうか、配偶者や両親が手助けしているかどうか、身近な人と不和がどうかなどを含みます。「心理学的要因」とは、アタッチメントスタイルはどうか、パーソナリティ面での特長などを記入します。「文化要因」では、伝統的な性別の役割、家族重視かなど文化的面を含みます。そして「スピリチュアル要因」は、宗教や人生の価値観などです。

これらの「生物心理社会/文化/スピリチュアル」面が、個人に影響を与えて、対人関係の危機が起こり、IPTでは、3つの対人関係問題エリアを設定しています。対人関係の不和、役割の移行、悲哀と死、の3エリアです。この対人関係問題エリアは、単一であるというよりも、複数のエリアが混在する場合が多いので、エリアごとに、具体的な項目をあげます。たとえば、対人関係の不和-妹、役割の移行-出産後、悲哀と死-不妊、などです。

「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation*)」を作成したら、初期フェーズのまとめとして、「IPTサマリー」(上図)の作成に入ります。「IPTサマリー」は、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)」を受けて、心の不調となる原因を4つほど挙げて、本人の強み(Strengths)とともに、治療計画の目標をかかげたものです。

この「IPTサマリー」をもとに、中期フェーズへと進んでいきます。中期フェーズでは、各対人関係問題エリアに適する手法、たとえば、「タイムライン」や「不和グラフ」などを活用し『心の見える化』を図り、3S(心の整理・整頓・清掃)を促したうえで、新しいアタッチメントや社会援助の方法などを考えていきます。

注)「対人関係調査図(Interpersonal Inventory)」、「現状分析と治療方針(Interpersonal Formulation)*」および「IPTサマリー」は、講義で使用された資料を一部改変して作成している。

*なお、認知行動療法(CBT)では、Formulation (フォーミュレ―ション)の訳語としては、「問題の成り立ちを説明する仮説」であり、介入方針を定めるための作業仮説となるもの、との定義がある。(「改訂版 認知行動療法」2020年放送大学教育振興会) 



最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。