Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

●第11回「大学 グローバル大競争時代に生き残る ~豪名門メルボルン大学の挑戦~」

2007-04-29 15:40:38 | ■日本人はどこへ往く?

●メルボルン大学は来年の2008年からスタートする、新メルボルン大学のキャンペーンを4月17日から始めている。連日、テレビ・ニュースなどで副学長(事実上の学長)のインタビューや大学のアドがなされている。

これは、グローバルな大学競争時代を生き残ろうとする試みで、The Melbourne Modelと呼ばれている。

1853年に英国の教育制度の下で、大学が設立されて以来、大幅な大学教育システムの転換となる。

中身を見ると、英国システムから米国の大学システムへの転換のようだ。

従来の10以上もある大学学部を6つ(arts, biomedicine, commerce, environments, Music, Science)に絞り、3年間の学部教育のあいだ、学部間の単位取得が幅広く選択でき、学部間の垣根が緩やかになっている。これは、学部教育では、幅広く学び、その後、大学院で専門分野を極めるということらしい。欧州の大学でも2010年を目途に、同様の大学改革が進行中とのこと。

確か、19世紀末のハーバード大学で、当時のチャールズ・エリオット学長が、大学学部の変革を行った内容と共通しているようだ。

メルボルン大学の学生数は、42,704名(2005年12月)で、内訳は、大学生28,822人と大学院生13,882人、その内留学生が9,522名と全体の22.3%を占めている。(大学学部では、24.2%。大学院では、18.4%が留学生)。

ご多分にももれず、欧米系の大学卒業率は、日本に較べて、極めて厳しい。入りやすくて、出にくいのだ。コースレベル(講義主体のコースで、リサーチレベルを除く)で平均59%(2004年末のデータ)、つまり、10人に4人は卒業していない(転学か退学?)ことになる。内訳は、大学卒業率60%、大学院卒業率57%となっている。

これは、大学経営の観点から見ると、入学金、授業料はプリペイド方式を取っているため、採算面ではかなり有利になる。事実、当大学は、自主財源が豊富になってきているため、国からの補助金削減に相当寄与している(参照、ABC記事)。

☆The Melbourne Modelのプロモーションビデオ
http://www.dreamlarge.edu.au/?pageID=video
☆生徒数のリスト
http://www.upo.unimelb.edu.au/public/StatsBook/sb_ts.04_2005.xls
☆関連ABC記事
http://abc.net.au/news/newsitems/200704/s1899828.htm
http://abc.net.au/news/newsitems/200704/s1897603.htm

※ジョンさん、コメントありがとうございます。国立を削除、副学長は、日本語での通常表記を使用して、「事実上の学長」との説明を入れておきました。(6月9日追加、修正)
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●第10回「破壊的な害をもたらす、赤カミアリのお話」

2007-04-17 21:11:20 | ■日本人はどこへ往く?

●本日の豪ABC The7.30Reportより、

みなさん、赤カミアリって知ってますか。

アリの一種で、南米から侵入したRed Fire Antのことです。

米国では、この赤カミアリの封じ込めに失敗したため、このアリによって、毎年、数百万ドル(日本円で数億円)の農作物被害が出ています。

一方、ここオーストラリアのクイーンズランド州では、破壊的な新型害虫退治に、6年前に科学者が立ち上がり、命がけの闘いをスタート。ついに、この厄介な害虫赤カミアリの撲滅に成功したという、うれしいレポートでした。この被害に遭っている諸外国に対して、その対策を利用してくれたら、と述べていました。

空港の検疫で、世界で一番くらい厳しいと思っていたオーストラリアだからこそ、出来たのかもしれません。

ブログで検索したら、

●TBS 報道特集をみて・・(4.10二胡とbikeのブログ)
http://blogs.dion.ne.jp/erhu2/archives/5406717.html
●殺人アリの日本への上陸の可能性!(4.11五感教育研究所)
http://ameblo.jp/senses/entry-10030462441.html

が出てきたので、

検疫の甘い日本には既に、上陸してそうな気がしますが、早めに対策をしないと、湖のブラックバス状態になりそうですね。

■ABCテレビ The7.30Report (2007.4.17Winning the War)
http://abc.net.au/7.30/

■TBS報道特集「“殺人アリ”・・・日本に上陸間近!」(2007.4.8.頭出しだけ動画real playerあり)
http://www.tbs.co.jp/houtoku/2007/070408.html
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●第9回「盗用問題について、もう一つの見方から」

2007-04-14 21:19:26 | ■日本人はどこへ往く?

●第9回「盗用問題について、もう一つの見方から」

学界の論文盗用から始まり、社説の盗用、テレビ番組の企画内容の盗用と、日本国内では、盗用が日常茶飯事のように行われている。

また、音楽界では、2006年の10月19日に、「松本零士氏、槇原敬之に歌詞パクられた」と日刊スポーツが松本氏の言い分をのせ、2007年3月23日には、「盗作の証拠出せ!」と槙原敬之氏が松本零士氏を提訴(日刊スポーツ)、2008年7月7日に両者出廷となっている。
ちなみに、問題の歌詞は以下の通り。

松本「時間は夢を裏切らない 夢も時間を裏切ってはならない」
槇原「夢は時間を裏切らない 時間も夢を決して裏切らない」

さて、今回は、この盗用問題自体ではなく、なぜ盗用が行われるのか?その背景を考えてみた。

盗用とは、ぬすんで使用すること。文章などでは、「剽窃」(ひょうせつ。他人の詩歌・文章などの文句または説をぬすみ取って、自分のものとして発表すること(広辞苑)、と言われている。

欧米の書き物文化では、剽窃(plagiarism)については、厳しくルールが設定されている。それも、「知ってやった(意図的)」と「知らないでやった(無知や不注意)」のどちらであっても、その責任は免除されない。だから、著作者は、一生懸命他の著作を勉強して、それを防ぐ。一方、日本では、どうも、その教育がなされていないようだ。

欧米では、盛んにplagiarismを避けるために何をするかが言われている。

1.直接引用(カッコやインデントで他人の文章・言葉を明示する)
2.パラフレーズ(自分の言葉に直して、言い換えをする)
3.サマリー(他人の言葉やアイデアを要約する) 
などである。

また、plagiarismではないことは、
1.自分自身の、考え・議論・理論・図表・研究成果
2.一般的な常識
3.一般的な参考文献からの引用
(例えば、教科書・辞書・百科事典など。明示すべし)
といわれている。

このため、書き物文化では、引用する場合の細かな表現法がルール化され、学界論文では、文末には参考文献リストが必要になってくる。

さて、ここまで厳格ではない、マスコミや一般社会ではどうなんだろうか?

以前、経営関係の書物を読んだ時に、ある著者(達)のずさんな原稿を見たことがある。いろんな関連の書物から、換骨奪胎、自分の記述はほとんどないと言ったくらい、寄せ集めも甚だしいものだった。参考文献のリストもない。出版社も、剽窃のチェックまでは行っていない。著者のモラルだけに頼っているのが実態ではないだろうか。これは、専門家だけでなく、一部のマスコミ人やテレビ制作者にも言えることではなかろうか。そうでなければ、上記のような盗作は、起こることは考えられないのだから。

以前、この種の事柄について、欧米文化の一端を垣間見たことがある。英国人のジャーナリストが書物を出版するに当たって、関係していたこちらの出版物から引用をしたいといって、20~30箇所の図表の掲載確認を求めてきたことがあった。当時は、何だこれはと思ったが、これが、やはり欧米文化では普通なのだなあと分かったのは、それから大部経ってからの事だった。

この、誰にもわかりはしない、分かったときに考えればいいや、との思いは、企業倫理にとどまらず、個人の倫理(モラル)までもが、知らずしらず破綻をきたしていることの兆候なのだろうか。

スピードが求められる社会の中で、脇目もふらず生きてきた日本人は、その代償として、ここまで、倫理観を喪失してしまったのだろうか。

※写真は、槇原氏の歌詞を収録している「約束の場所」のCDと松本氏の「銀河鉄道999」のDVDのタイトルより使用した。

■テレ朝がMBSに「酷似番組」謝罪(4月14日8時1分配信 スポーツ報知)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070414-00000005-sph-ent
■松本零士氏、槙原敬之に歌詞パクられた(日刊スポーツ2006年10月19日8時27分)
http://www.nikkansports.com/entertainment/p-et-tp0-20061019-105561.html
■「約束の場所」の歌詞
http://music.yahoo.co.jp/shop/p/53/266851/Y035960
■「盗作の証拠出せ!」 槙原敬之が松本零士氏を提訴(日刊スポーツ2007年3月23日7時23分)
http://www.nikkansports.com/entertainment/p-et-tp0-20070323-173630.html
■「槙原敬之vs松本零士氏が法廷で対決」(日刊スポーツ2008年7月8日9時0分)
http://www.nikkansports.com/entertainment/news/p-et-tp0-20080708-381095.html
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●第8回「タスマニアと公害(空気汚染) ~議論沸騰の世界遺産地域~」

2007-04-13 13:48:43 | ■日本人はどこへ往く?

●第8回「タスマニアと公害(空気汚染)~議論沸騰の世界遺産地域~」=最近のABC 時事番組から=

ユネスコの世界遺産に登録されているタスマニア原生地域をもつ、オーストラリア・タスマニア州で今、大問題になっているプロジェクトがある。

Gunns projectと呼ばれ、AU$2 billion(20億豪ドル。日本円で約2千億円)が費やされているパルプミル(製材工場)プロジェクト のことである。このプロジェクトは、雇用促進など地域経済の発展に大きく寄与している一方、空気汚染(公害)によって、周辺の住民に対して、慢性の鼻・胸など呼吸器関連の健康被害を生み出していることが知られている。この問題を、当事者、専門家のインタビューを中心に構成されたものだ。

この番組は、THE 7・30 REPORTという時事問題を取り扱う、ABCテレビの看板番組の一つで、司会者は、数々の賞に輝く、ジャーナリストのKerry O'Brienが務めている。(NHKの「クローズアップ現代」のようなものでしょうか。)

この番組を見ながら、これらの難題解決のために日本の先進環境・公害技術は適用できないのだろうか、公害を乗り越えてきた日本の智(医療など)が活かせられないものだろうか、はたまた、現在議論中の日豪自由貿易協定(FTA)に将来関係してくるような(先進日本の環境技術輸出による貢献など)予感がした、というのが率直な感想でした。

また、ABCニューズ(電子版)には、「ABOの血液型よ、さようなら」とのAFP電(4月3日)が掲載されています。
最新のnature biotechnology(2007年4月号Vol 25 No 4)によると、誰にも輸血できるO型によく似た、「ユニバーサル」(万人のため)の血液型を創る方法を発見した、と科学者のClausen とそのグループが発表しています。
これは、A、B、AB型の血液型を、輸血の際に用いられるO型に安全に転換できる2種の酵素を発見したことによるということです。もしこの予備研究の成果が血液銀行に応用されるとすれば、これらの酵素はO型血液の供給を促進し、O型不足を解決する手段になるかも知れない、と述べられています。

なお、nature関連で、先月でしたか、nature publishing group (英国のネイチャー出版グループ)の新しい編集部が、東京に本社を開設したようです。

nature photonicsといい、光通信・光電子工学関連の最先端の基礎研究・技術論文を掲載していくようです。日本では、日経サイエンスが米のScientific Americanの日本語版を出版しており、日経BP社からは、種々の最先端ジャーナルが出版されていますが、英語→日本語への変化球と英語直球でのスピードの差は、かなりありそうですね。

今では、研究論文は、スピードが命の時代ですから、Online submission (オンライン論文投稿)が一般的になっているようです。初期の半導体関連の論文発表で、西澤潤一博士に以前お話を伺った時のような、郵送による論文到着・掲載の時間ロスの問題は、遥か昔のことになってしまいました。

さて、ABCは、オーストラリアで最も親しみのあるTV・ラジオ局で、日本のNHKと同じ公共放送局ですが、なかなか、NHKとは趣の違った人気番組があります。
例えば、the new inventorsという番組は、町の発明家の作品をプレゼンさせ、辛口の批評と共に、視聴者参加のランキングが示されます。日本にも大分昔に不真面目な似たような民放番組があったような気がしますが、この番組は、とても真面目な番組で、環境に優しい作品(商品)が多いようです。

※ABCとは、Australian Broadcasting Corporationの略で、オーストラリア放送協会のこと。オーストラリア連邦の公共テレビジョン放送局。

■ABCテレビ番組 THE 7・30 REPORT
http://www.abc.net.au/7.30/default.htm
「世界遺産地域のタスマニアで公害論争」2007年4月11日放送(番組録音原稿)
http://www.abc.net.au/7.30/content/2007/s1895040.htm

■ABC News (電子版)「ABOの血液型よ、さようなら」News in Science "health & medical"より
http://www.abc.net.au/science/news/stories/2007/1888637.htm?health
■ABCテレビ番組 the new inventors (ビデオ・オンデマンド)
http://www.abc.net.au/tv/newinventors/txt/s1889939.htm
■どんな血液型もO型に変換、輸血へ活用期待(YOMIURI ONLINE)
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/news/iryou_news/20070402ik04.htm

■nature biotechnology
http://www.nature.com/nbt/index.html
■上記4月号の要約
http://www.nature.com/nbt/journal/v25/n4/pdf/InThisIssue.pdf

■ネイチャー:日本に編集部なぜ?…光関連産業分野でリード(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/kagaku/news/20070320k0000e040078000c.html
■nature photonics 日本本社
http://www.natureasia.com/japan/nphoton/marketing/about_journal.php
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●第7回「不老長寿の最先端遺伝子研究、どの国が勝利を?」

2007-04-11 13:34:05 | ■日本人はどこへ往く?

●第7回「不老長寿の最先端遺伝子研究、どの国が勝利を?」

20世紀末から21世紀初頭は、インターネットに代表される情報技術の舞台、21世紀初頭以後は、遺伝子工学による新しい世界がスタートしています。

当地メルボルン大学で世界的に有名なものの一つが、遺伝子治療研究(Gene Therapy Research)。

Ageing (老化)研究だけでも、Faculty of Medicine, Dentistry and Health Sciences (医学・歯学・健康科学学部)の傘下に、5つの専門研究機関がある。
Department of General Practice (一般診療学科)
Department of Medicine: The Royal Melbourne Hospital and Western Hospital (王立メルボルン病院・西部病院内科)
Department of Pathology (病理学科)
Department of Physiology (生理学科)
School of Physiotherapy (物理療法学専門学部)

Genetic Physiology(遺伝子生理学)では、老化抑制・寿命延長に関わる研究、心臓血管リスク、身長や脱毛研究が行われている。

ある生物種(人種=ヒトは代表的生物種)の遺伝子の総和はゲノムと呼ばれ、ゲノムの末端にあるのがTelomere DNA(テロメアDNA。DNAとは遺伝情報を担う物質)です。

このテロメアが、細胞の寿命、つまり、人間の寿命と深い関係があると言われています。このテロメアの長さと人間の特徴の相関関係が測定できれば、たとえば、寿命がどれくらいになるか、若さの秘訣はなんなのかなどの秘密が解明されるのではないか、と言われています。つまり、テロメアが老化のカギを握るのであれば、テロメアの生存期間を長くしておくことで、細胞は死なないで分裂を続け、不老長寿の夢を実現する可能性があるのではないか、との仮説です。

そして、テロメアを合成する酵素「テロメラーゼ (Telomerase)」 も見つかっている。「このテロメラーザは、ガン細胞でも大量の存在が確認されており、ガン細胞の不死化の原因の一つと考えられている」(『ウィキペディア(Wikipedia)』)ため、テロメアとテロメラーゼをめぐる研究が世界的に激しくなっているようです。

こうなると、遺伝子レベルで人間の寿命が測定できるようになり、黒澤明監督の「生きる」ではないけれど、死の時期を悟った人間のその後の行動が変わってくるような気がします。現実の寿命は、環境などの影響要因が関わって、これほど運命論(決定論)的な結末になるとは思いませんが、死を意識した生活とそうでない生活の差はかなり大きいのではないかと思われます。

オーストラリアだけではなく、ヨーロッパ、アメリカなどでは、この種の研究費がたっぷりとつけられ、若い有能な研究者が世界各国から集まってきているようです。

さて、日本の現状は?

ハリウッド映画の「Xメン」やミュータント(突然変異体)の登場も、SF世界だけでなく、ひとつ間違えば、現実となる日が近いようです。そういえば、あのホリエモンも『人の寿命や「不老長寿」などを科学的に研究する「ライフサイエンス」分野に興味を寄せている。』との報道がありましたが、彼のビジネス的な嗅覚は衰えていないようですね。

参考
■メルボルン大学大学院での老化研究 http://www.mdhs.unimelb.edu.au/courses/postgrad/clinscience/ageing.html
■テロメアDNA(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%AD%E3%83%A1%E3%82%A2
■再生医学(フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%86%8D%E7%94%9F%E5%8C%BB%E5%AD%A6
■不老不死への科学
 http://genetics.fc2web.com/file/gairon.html
■遺伝子治療と臨床研究(大阪大学大学院医学系研究科)
 http://www.cgt.med.osaka-u.ac.jp/cont/c_index.html
■理化学研究所ゲノム科学総合研究センター
 http://www.gsc.riken.go.jp/jpn/group/human/contents.html
■不老長寿の薬・鮎沢大さん
(asahi.com マイタウン神奈川【できたらいいな】)
 http://mytown.asahi.com/kanagawa/news.php?k_id=15000160701090002
■BT(バイオテクノロジー)戦略会議(首相官邸)
 http://www.kantei.go.jp/jp/singi/bt/index.html
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●第6回「感性系の勝利(日本人の良さを見直す)」

2007-04-10 12:26:23 | ■日本人はどこへ往く?

●第6回「感性系の勝利(日本人の良さを見直す)」

どうも人間の能力(アビリティ)には、カルチャ系とインテリ系があるらしい。
カルチャ系とは、感性を基盤に行動する系統で、インテリ系とは、知性を土台に行動する系列としましょう。

ご存知のように、戦後日本は、アメリカン・カルチャーの影響を多大に受けてきた。ミュージック、若者文化、ファッションなどである。一方、知識人予備軍の多くは、アメリカへ留学し、当時の最新知識(技術、政治、経済、文化など)を獲得してきた。フルブライト奨学金を利用した数多くの人たちやアイビーリーグの大学院卒業者が、戦後日本の ザ・エスタブリッシュメント(権力の中枢)を構成していたのではないでしょうか。

今、日本のカルチャー、特に、Manga、ゲーム、ファッションなどがアジアの若者を中心に全世界に展開しています。この分野は、国内的に見ると、特に、規制というものがなく、感性の優れた日本人観客に対して、自由に、絶え間ない競争を通して、独自に発展してきたものと思えます。ファッションは、ヨーロッパ(特にフランスを中心に)、アメリカ双方の要因が強く影響しながら、伝統的な日本の美意識がうまく絡まったものだと考えられます。また、細かさを特徴とするデザインへの感覚だけでなく、グルメブームも手伝った味覚に対しての感覚も、個性的な洗練性を完成させてきたのではないかと思う。

日本のインテリ系はどうでしょう。インテリ系の評価の一つである、ノーべル賞の日本人受賞者では、文学賞・平和賞以外は、理工系の学問がほとんどで、社会科学系統の受賞者はいません。(だから、ノーベル賞がどうだという訳ではありませんが、専門の経営学の分野では、野中郁次郎博士くらいしか国際的に評価されている人は知りませんが。)

どうしてなのでしょうか。

理工医生物学分野と違って、社会科学の分野というのは、特に規制が強い分野なのかも知れません。学界から目を離してみましょう。たとえば、身近なTV、政治分野で考えてみると、ジャーナリストの未成熟と相俟って、この分野での真剣勝負は、田原総一郎氏を除いてあとは見当たらないようです。政府・行政からの産業界や市民への規制は、まだまだ、たくさ~んの見えない枠がありそうです。これまでの日本人の知識輸入元としては、時間軸から言うと、中国の儒教思想を取り入れ、その後、文化・社会面ではヨーロッパやアメリカから、経済・経営面ではアメリカから、というのが一般的な流れだったように思います。

感性を育んだカルチャーに限って言えば、規制がなく、激しい自由競争の中で、比較優位性が、結果的に確保されてきたのではないか、と推測しているのです。

さて、日本人の良さは何か?
他国の国民性と比較して、これらのことがよく言われています。コミュニケーションツールとしての英語を除き、日常文化的な側面、つまり、「きれいずき」、「繊細さ」、「時間にルーズではない」、「一定の文化・教養を備えている(特に、先ほど言った感性分野など)」、「階級や階層意識がなく、どのレベルとも分け隔てなく交流ができる」という特徴がありそうです。

では、日本人の弱さは何でしょうか?
世界の異なった価値に不明、日本以外の出来事を知らない(除く自然災害/大事件)、性善説に立つ傾向がある、セキュリティ分野に無頓着、積極的に表に出るタイプ(文化)ではない、等々。

さて、まとめ段階に入りかけていますが、
昨年から今年にかけて、日本の将来の国家戦略として、「グローバル経済戦略」(2006年4月経済産業省)、「イノベーション25」(2007年2月中間報告)、「アジア・ゲートウェイ構想」(2007年3月中間報告)が発表されています。すべてカタカナなのが興味深いですが。

「グローバル経済戦略」では、東アジア経済統合の推進と日本のイニシアティブを中心に、世界各地域への経済戦略が述べられており、「イノベーション25」では、日本をイノベーション立国(2025年を目標に科学技術・社会・人材の革新国家)とすべく、科学技術投資の拡充、環境技術分野を基盤とした経済成長と国際貢献、大学での英語による授業の実施などが提言されています。「アジア・ゲートウェイ構想」においては、アジアとの交流について、インフラ(航空、貿易手続)、人材ネットワーク、金融ネットワーク、農業変革・構造特区、研究ネットワーク分野の提言がなされています。

これらの戦略構想は、将来の日本・日本人にある枠を設定することですから、官邸・行政・シンクタンクとエスタブリッシュメントの方々だけではなく、日本人の全智を傾ける必要があると思うのは、私だけでしょうか。

※写真は、ヨーロッパ最大の日本カルチャーのイベント、「パリ・ジャパンエキスポ」のバーナーより。

参考
日本人ノーベル賞受賞者
http://www1.odn.ne.jp/haru/data-result/nobelsho.html
グローバル経済戦略
http://www.meti.go.jp/press/20060412001/g.senryaku-p.r.-set.pdf
イノベーション25中間とりまとめ(総理官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/innovation/chukan/chukan.pdf
アジア・ゲートウェイ構想(中間論点整理)(総理官邸)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/asia/ronten.html
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●第5回「冷泉彰彦さんの視点と日本文化」

2007-04-09 12:51:55 | ■カルチャからの解放

●第5回「冷泉彰彦さんの視点と日本文化」

作家冷泉彰彦(米国ニュージャージー州在住)氏は、
JMM『from 911/USAレポート』 
第294回「自己都合か強制か」の中で、

『アメリカの場合は「人間が半強制的な住居移動を伴う転勤を命令されることはない」ということと、「チャンスを求めての移動は本人が自分のコストで胸を張って行う」という発想が確立していると言って構わないと思います。』に続けて、日本の雇用慣行の中にある「会社都合」と「自己都合」に触れ、海外での日本外務省による日本人の取り扱われ方、従軍慰安婦連行の問題などが、自己都合か強制かの視点で述べられています。

さて、冷泉さんの分析の視点にはいつも新鮮さを感じている者ですが、特に、海外での日本人の取り扱われ方について、もう一つの視点で、述べたいと思います。

■自分の意思で国を出た人には、同情をしない。一方、会社(組織)派遣で、つまり、自分の意思ではなく、会社や組織というグループからの命令で派遣された人には、同情の余地がある。それに、会社員は また日本へ帰る予定があるから、もとのグループへと戻れる。
これは、従来から言われている、「内と外の論理」、つまり、日本国というグループを出るか、出ないかという、判断が隠されているような気がします。

江戸時代には「脱藩」と言う言葉がありました。これは、武士が藩から脱して浪人となることを示し、浪人という言葉は、「古代、本籍地を離れ他国を流浪する者。浮浪人」と広辞苑ではネガティブなイメージとして定義されています。会社(組織)の命令ではなく、自己意思で、一度日本国というグループを出た人は、グループ外の人となってしまうようです。
言い換えると、「内部者(日本国内にいる日本人)」対「部外者(日本国外にいる日本人および外国人)」という暗黙の了解(区別)があるようです。

外国人(籍)ということだけで、内部者になることが非常に難しい日本社会。例えば、ドナルドキーンさんの話は衝撃的でした。また、一度日本を出て、海外で活躍する研究者に対する評価基準など、日本の権威主義的な風土との闘いは想像以上のものがあります。例えば、古くなりますが、都留重人氏と森嶋通夫氏の論争など。

「同じ土俵で話をする」、「外野が何を言うか」というのは、よく聞かれる言葉です。G.ホフステードを出すまでもなく、「集団主義と個人主義」の違いがあるのだから、しょうがない、「権威に従順か批判的か」というのは、ある種のDNAに組み込まれたものだから、何を言っても変わらないよ、という意見をよく聞きます。

つまり、日本の土俵とは、
「村のルールに従えば、共同責任(責任の所在があいまい)。自由意思による自己責任は、別の土俵だよ。」ということにおちつきそうですね。

でも、そろそろ、
「自分の頭で考え、自分の判断によって行動する、自律した市民」(司馬遼太郎)の誕生が求められているような気がしますが、いかがでしょう。

※写真は、JMM(Japan Mail Media)のFront Web pageのロゴを使用した。

参照:
from 911/USAレポート/冷泉彰彦
 2007年3月17日発行JMM [Japan Mail Media]                 No.418SaturdayEdition   http://ryumurakami.jmm.co.jp/dynamic/report/title3_1.html
ドナルドキーン「日本との出会い」 中央公論新社 文庫 (1975.1)
G・ホフステード「多文化世界-違いを学び共存への道をさぐる」(岩井紀子・岩
井八郎訳)有斐閣(1995.2)
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●第4回「批判するって、どういうこと? (健全なる批判精神のかたち)」

2007-04-08 10:24:06 | ■カルチャからの解放

●第4回「批判するって、どういうこと?(健全なる批判精神のかたち)」

欧米人の考え方、文化の背景には、「健全な批判精神」があるように思われる。

欧米系の大学、大学院では、Critical Thinking/Reading/Analizing(批判的精神を持って考える/批判的精神を持って読む/批判的精神を持って分析する)、というのが常識らしい。

一方、日本語で、『批判的に』」というと、「反対する」、「反論する」というような相手を陥れる、あるいは、相手と(妥協点・解決方法を見つけるのではなく)議論するという受取り方が一般的だと思います。

欧米流の「批判的精神」に基づいて、考えること、読むこと、分析することには、一つのルールがあるようです。

つまり、(よりよい解決策を求めるために)批判的に考えること/読むことでは、

一般的に認められたアイデア、信念、価値や行動を規定している「前提/仮説」が何なのかを探し、それが正しいのか公平なのかについて議論する(あるいは自問自答する)。
それには、積極的な疑問をまず投げかけてみる。つまり、最初から、味方や敵と判断して肯定的か否定的かを基準に議論を進めるのではなく、よりよい解決策を求めるといった生産的な議論を行うことだと考えられる。
お互い証拠や根拠を示しながら、(生産的な)議論の過程で、相手を説得する試み、のようだ。これは、欧米では、議論が合理的、理知的な土台からなっているようで、反省的熟慮的な懐疑主義とも呼ばれている。
どうも、ここら辺の議論のアプローチ、議論する場合のルール(土台)が、権威主義的な日本と相当違うような気がしてならない。

ここでは、別に、日本の議論のやり方がおかしいと言っているわけではなく、欧米人と議論する場合は、彼らのルールを踏まえた方がベターなんじゃないかなと考えている次第。さらに、彼らのルールで優れているものは、取り入れるべきじゃないかとも思う。

批判的に分析するとは、

その筆者(話者)の内容を、その強み/弱みを検討し、彼/彼女がよって立つ見方/観点が何なのかを考えながら、自分なりに判断を下し、評価することが必要。その場合、他者の別な意見と比較対照しながら、評価をする。評価とは、フィルターの役割を果たすもので、吸収するスポンジであってはならない。当然、自分の評価は根拠がなくてはいけません。

次のようなことを自問自答しながら、分析をはじめます。

この筆者/話者は、どんなスタンス(立場)に立っているのか。
バイアス(偏見や先入観)はないのか。
彼/彼女の意図は。
(言っていることの)主旨あるいは主張は何なのか。
どんな一次・二次ソースが使われているのか。
言っていることを支えている証拠や根拠は何なのか。その根拠は確固たるものか、信頼できるか。
彼/彼女が述べていないこと、言い残していることは何なのか。
自分の知識・経験から判断して、そのアイデア、主張、言葉、支持していることについて、自分はどう考えるのか。
著者/話し手は、自分の言いたいことをどのようにうまく組み立て、相手を説得できたか。

この欧米的批判手法は、ブレンストーミングをやる時に、決められている約束みたいなものですね。

更に、Writing(英文) の基本として、最初に言われるのが、Task Response=質問に的確に答えているか、的のはずれた記述になっていないか、です。

これはWritingではなく、Speakingの分野になりますが、欧米のニュース・議論を見ていると、このTask Responseの能力が、 どうも、その人の能力、信頼性、誠実さと繋がっているようです。この点、日本の政治家の受け答えは、禅問答のまんまで、これを受容している報道機関の役割は何なのかなって、いつも疑問ギモンの連続です。

「これが日本文化よって」、今後もすまされるものでしょうか。

※広辞苑第五版には、批判とは、「人物・行為・判断・学説・作品などの価値・能力・正当性・妥当性などを評価すること。否定的な内容のものをいう場合が多い」と記されている。

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●第3回「日本人の英語力について (外国人英語能力検定試験IELTSの結果から)」

2007-04-07 17:45:48 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

●第3回「日本人の英語力について (外国人英語能力検定試験IELTSの結果から)」

最近、米国だけでなく、英国連邦The Commonwealth of Nations (特に、イギリス、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等)への留学/移住希望者がふえているようです。そこで、彼らを対象にした外国人向けの英語能力検定試験IELTS (International English Language Testing System)のことがよく話題になっています。

今回は、このIELTS試験の結果から見える日本人の英語能力の話です。

調査対象国は20ケ国で、総合評価Overall Band scoreの高い国から挙げると、
1 Germany、2 Malaysia、3 Philippines、4 Hong Kong、5 Nigeria、6 Russia、
7 Sri Lanka、8 India、9 Iran、10 Nepal、11 Indonesia、12 Pakistan、
13 South Korean、14 Vietnam、15 Japan、16 Thailand、17 Taiwan、18 China
19 Bangladesh、20 UAEとなっています。

日本は、20ケ国中15位、ベトナムの次で、タイよりランキングは前になっています。

IELTSは、聴く、読む、書く、話すの4セクションからなりたっており、「聴く」部門では、日本は総合評価から一つ上がって14位、「読む」部門も14位、「話す」部門が最高の12位、「書く」部門は16位となっています。

この結果(ランキング)をどう見るか、ということですが。

日本を含め、総合15位までの国で、公用語が英語なのは、3 Phillippines、
4 Hong Kong、5 Nigeria、7 Sri Lanka(連結語)、そして 8 Indiaも知識人層では英語が第1言語と言われている。
1 Germanyも、英語やオランダ語と同系のインド・ヨーロッパ語族・ゲルマン語派の西ゲルマン語群に属する言語の一つなので、除外すると。
 
Malaysia、Russia、Iran、Nepal、Indonesia、Pakistan、South Korea、Vietnamの次が、日本となり、アジア・中東・ヨーロッパ地域で9位となる。

この結果をグローバル時代(おお、長らくこの言葉が使用されている!)の21世紀に、日本人として、どう考えたらいいか、ということです。

ソース:
2005年 IELTS受験生(アカデミック)の成績結果より、
Test-taker performance 2005
Mean band score by most frequent countries or regions of origin (Academic)
http://www.ielts.org/teachersandresearchers/analysisoftestdata/article238.aspx
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●第2回「日本での国際ニュース報道の乏しさ」

2007-04-06 18:04:17 | ■カルチャからの解放

●第2回「日本での国際ニュース報道の乏しさ」

これだけ、海外への旅行客がふえ、海外在住者数が増加しているのに、国内向けの国際ニュース報道関連では、「NHK海外ネットワーク」くらいしか見当たらない。(「アジアクロスロード」などBSを除く)

BBCやCNN、Fox、SkyNewsといった全世界向けの国際報道だけでなく、当地のABC(オーストラリア放送協会。公共放送局)などの国内向け国際報道と比較すると、その報道量や編集面に、日本人国内向けへの国際情報には、国内報道に較べて、さほど重きがおかれていないように思われる。尾身財務相の大リーグ情報への発言も、このコンテクストからと考えられますが。(個人的には、日本人の活躍報道は、海外在住者ほどメリットがあると思いますが)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070406-00000004-yom-ent

情報輸入過多とは、よく言われることですが、国内向けへのニュース報道の面から見れば、輸入過多とはいえないようです。今後ますます、海外とのつながりが、ビジネス面だけではなく、生活面でのかかわりがふえてくると思われますので、より積極的な国際報道(世界各地域での出来事を日本国内の日本人に報道すること)が望まれます。なお、海外向けの英語放送の充実については、言を俟ちませんが、諸外国との格差がより激しい印象がぬぐえません。特に、昨今の中国の国際放送を見ていると、日本の国際放送の乏しさを実感します。

※海外への旅行客数は、2005年で約1,740万人(観光白書)、一方、海外在住者数は、2005年10月で101万2547人(外務省海外在留邦人数調査統計)。
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●第1回「英語の流暢さ」

2007-04-06 16:39:46 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

●第1回「英語の流暢さ」


周りのインド人、メキシコ人、香港人など、流暢に英語をしゃべる留学生が多い。一方、日本人や中国人の中には、流暢ではない人たちがいる(多い)。

なぜなんだろう、と観察(傾聴)する。

シラブル言語とストレス言語の違いと言う人もいる。日本語は、一語一語シラブル(音節)単位でしゃべるために、同じリズムで文章が長ければ長く話すけれど、ただ、発音の高低さがあることが特徴。反対に、英語は、ストレス(強勢)を単語や文章の重要部分に置くため、あまり抑揚がなく、文章が長くても、短くても、時間的にはさほど変わりがないため、日常のネイティブの話は聞き取り難い、と。

なんか、根本的に、英語のしゃべりを誤解していたようです。その誤解とは、「英語の強勢は、強弱ではなくて、高低のように思っていたらしい」、「英語の流暢は、はっきりとした発音で淀みなく話す」等など。

キャンパスで得られたSpeakingのtips。
今のところ、「抑揚をつけず平板でもいいから、重要語を強く(たまにはゆっくり)発音する」「とにかく、話すスピードを加速させること」で、他人に分かりやすくなるのでは、と実践中です。
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