Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

★☆第29回「NHK Cool Japanに垣間見られる自国優越主義の作り手意識」

2008-06-29 10:38:28 | ■カルチャからの解放

★☆第29回「NHK Cool Japanに垣間見られる自国優越主義の作り手意識」

NHKワールドは、ASIA 7DAYS、NHK NEWSLINE、World Weather などのニュース番組、英語でインタービューするInsight & Foresight、日本のライフスタイルや文化紹介のTOKYO EYE、 J-MELO、美の壷などを見ていますが、いずれも深い内容のある番組で、演出の切り口(編集)のなかに、日本らしさを発見することがよくあります。

先日、Cool Japanの内容を見て、首を傾げてしまった。きっと、演出家は、海外生活のない日本人がつくっているのだろうと。

司会者は、バイリンガルと日本人で、日本語。参加者は、非英語国からの外国人も含めて、彼らは、英語をしゃべっている。

『「NHKワールドTV」は、NHKのおもなニュース番組、情報番組をご覧いただける外国人向けの英語チャンネルです。。。。「NHKワールドTV」は外国人向けの放送ですので、ほとんどが英語での放送となっています。』とNHKWebサイトにあるように、基本的に外国人向けと謳ってある。

また、Cool Japanの内容は、
『日本のさまざまな文化が、外国の人たちには格好いいモノとして流行しています。来日間もない外国人の感性をフルに活かし、クールな日本を発掘、その魅力と秘密を探ります。』
とあり、番組の主旨も理解可能だ。

ただ、以下の疑問があるのだ。

疑問1.
参加者みなが英語なのに、なぜ、司会者だけは、日本語で通すのか、理解できない。
通訳(英語のテロップ)があるのだろうが、非英語圏の参加者は、彼らの自国語ではなく、英語で話している。視聴者が外国人であれば、(外国人のための日本語学習を兼ねていないのならば)、司会者が、世界共通語の英語で会話するのは、自然な演出だろう。
(この番組は、BSでの日本人向けであって、外国人向けの番組ではなさそうだ。そうであれば、外国人向けには、考えなければならない)

疑問2.
『クールな日本の発掘、その魅力と秘密を探』ることに、異議はないが、演出がお粗末だ。
私が見たのは、「自動販売機、エキデパ、、、」だったが。
日本のクールなものが、あなたの国にあるか、ないか、どうだ日本の優れたところは。といった台本のようだ。日本人に対して、日本文化のユニークさを紹介・確認するのなら問題ないが、外国人相手に、日本文化を絶対化するような演出は、海外文化への配慮に欠け、公共放送とは思われないものだ。以前民放でタケシがやっていたような貧弱な内容だった。

◆この種の外国人参加番組での解決案としては、

「クロスカルチャー下でのチームワーク、そして朝青龍問題~それぞれの国の文化・習慣をどう乗り越えるか~」で述べたように、

エスノセントリック(一民族中心主義、自国中心主義、自グループ中心主義)から、
エスノレラティブ(自国文化を、数多くの他の有効な世界観の正に一つであると感じること)への、関係者のマインドセット変革が必要となるだろう。

エスノセントリックとは、
一民族中心主義、自国中心主義、自グループ中心主義のことで、自分以外の他の文化に対して、知識も興味もない状態で、まず他文化への理解拒否あるいは否定。
次の段階では、他の文化の存在を知るが、それはその国だけに有効だと考える。
他の文化を取り入れるときは、自国文化より優れていると認めたとき、取り入れる(その国の人のようになる)、これは「守り、防御」の段階。
3番目の状態は、「守りの段階」で感じていた脅威が、自国の文化がなんだか普遍性(優位性)がありそうだという感覚になり、脅威を最小限にするために、文化の差を受け入れるという状態だ。

つまり、Cool Japanのあの番組について言えば、エスノセントリックの認識レベルであり、演出家の意識がそうであれば、海外へそのまま放送すべきではない、ということだ。

エスノレラティブとは、
自国文化を、数多くの他の有効な世界観の正に一つであると感じることで、他の文化を容認する。次に、共感の段階。つまり、他の文化を理解し、それに相応しい方法で行動できるような段階。この経験を深めることが、2元文化あるいは多元文化理解の土台になる。異なった文化世界観の中に入ったり、出たりする、融合の段階となる。

この認識であれば、あのような優越(差別)意識をもつような発言は生まれないだろうし、参加外国人の日本人への理解も、演出への共感も生まれてくるだろう。

なにしろ、
クロスカルチャーがらみの番組づくりには、こまやかな心遣いが必要だ。


【参考】
「NHKワールドTV」
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/japanese/faq/faq1_1.html
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/japanese/faq/faq2_4.html
Cool Japan
http://www.nhk.or.jp/cooljapan/
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/japanese/tv/program/index.html

●第28回「日・欧米スクリプト(台本)の違いにみる、クロスカルチャー」

2008-06-11 09:14:26 | ■ことばの背景(英語と日本語の備忘メモ)

●第28回「日・欧米スクリプトの違いにみる、クロスカルチャー」


◆クローズアップ現代を見た。
今夜は、「大丈夫か?ニッポン株式市場」(6月9日(月)放送)。

スクリプト(脚本、台本)の構成はこうなっている。

日本市場の国際競争力の低下を懸念する声

世界(海外)の投資家の日本離れ

日本の閉鎖性

海外投資家による日本の製造業社長との対話↑
代表的製造業にみる、顧客志向=株主軽視

大学院大学準教授による解説:
日本の製造業の株主に対する考え方の解説。
このままでいくと、もっと海外投資家が引き上げる

→株価が下がる→日本企業にとって買収のリスクが上がる
→企業による、買収防衛策の強化。

一方、ニッセンなどの買収防衛策の放棄
→投資を呼びこむ会社の紹介

日本企業の投資機関自体が、日本への投資比率を下げ、
海外の新興国への投資比率を上げる例を紹介。

結論:『日本株式市場が抱える課題と復活の糸口を探る』との謳い文句だが、何もない。

ただ、現状を追認しただけのリポート。


◆疑問:
1.なぜ、日本の会社は株主軽視で顧客(取引先)重視なのか、
  その分析がない、深さがない。
  本当に、海外の会社で顧客重視の会社はないのか?
  このまま、株主軽視でいくと、どのような株式市場になるのか
  株主重視の弊害はないのか、
  等々の解説や予想がない。

2.海外投資家の戦略も単純すぎる。例えば、海外では、このような株主軽視はありえない、などの発言。海外ではこうだ、というような発言では、日本企業への説得にはなりえない。

3.日本の行政の規制、例えば、経済産業省の投資家に対する規制についての是非の分析が欠けている。
  行政がどう関わればいいのかの判断、意見が皆無。
  NHKという公共放送は、世界の意見を踏まえた意見、分析を言ってはいけない?
  この役割は、解説者が果たすべき。

4.この番組の主旨は、現状レポートのみであって、議論や解決策は求めない?

5.この種の番組の視聴後のものたりなさ
 (NHKの政治討論会 vs. サンデープロジェクトの質的深さ、緊迫感でのかなりの相違)

◆さて、先日、映画づくりのショートセミナーに参加しました。
Script Writingのセクションで面白かったのは、

Structure of Storyのところで、
欧米の映画づくりでのストーリーの流れは、

1.Natural World (普通の世界)

2.Big Event (興味ある、普通でない出来事)

3.Pinch (困難、緊急的状況)

4.Crisis (最悪の危機的状況)

5.Showdown (困難、危機的状況との闘い)

6.Resolution (困難の解決)

の流れが一般的だとの解説でした。

いい作品の脚本を考えると、
なんだかこの流れを踏まえて書かれているようです。

まあ、作りが、ドラマチックなんですね。
また、
映画を見たあとに感じる「カタルシス」と同じような感覚が
特に、アメリカのTV報道番組にもみられる。

どうも、
TV番組の脚本にも、このドラマテックな
構成が生かされているようだ。
5.Showdownで終わる番組も多いけれど、
解説では、
6.Resolutionの一端が見られる。

☆さて、いつになったら、

ドラマテックな知的興奮を感じさせてくれる

番組がでてくるのだろうか。

政界と同じく、TV界にもそろそろ
changeが必要でしょう。

●第27回「メディアに見る、クロスカルチャー(交じり合う文化)」

2008-06-02 08:06:45 | ■カルチャからの解放

●第27回「メディアに見る、クロスカルチャー(交じり合う文化)」


クロスカルチャーの視点で、最近のメディア界、例えば、テレビ・コマーシャル、
ミュージック、産業からみのトピックスを振り返りましょう。


◆テレビ・コマーシャル

ソフトバンクの『白戸家「兄の白日夢」篇』(オンエア 2008年3月15日)を初めてテレビCMで見たときは、

いよいよ、日本の日常にも、クロスカルチャーの流れが来たのかな~、と一瞬、驚いた。

黒人と日本人が関わるものでは、
文学で、山田詠美の小説『ベッドタイムアイズ』(1985年)、映画が1987年に樋口可南子の主演で公開されている。
トップ写真の右には、ソフトバンクのCMに登場するお兄さん役の「予想GUYさん」。

◆ミュージック

NHKワールドTVをよく見ますが、
J-MELOという音楽番組(5月31日放映)では、
まさに、クロスカルチャー(交じり合う文化)のミュージシャンのオンパレードです。

SoulJaとjammin' Zedがそうです。

SoulJa(ソルジャ)は、24歳、東京都東久留米市出身の男性シンガーソングライター・ラッパーで、母はベルギー人。
jammin' Zebは、平均年齢23歳の男性ジャズヴォーカル・グループ。
4人の中でコージローが日本人の両親、残りの3人は日系アメリカ人やオーストラリア人、メキシコ人とのmixed parentageだ。唯一海外生まれのレンセイは日本語の特訓中で、4人のコミュニケーションは英語と日本語を交えて行われている、ということです。

彼らの両親のルーツは、スティーヴ(仲光甫)が日系アメリカ人の父と日本人の母、レンセイ(西澤連聖)が日本人の父とオーストラリア人の母、
シモン(西脇史門)が日本人の父とメキシコ人の母、となっている。
世界で悪名が高かった、日本人男性を父にもっているのが、グループの中に2人もいることに男性であるわたしも、驚いた次第。
これまでは、日本人女性との組み合わせがほとんどだったような気がしたので。

◆産業からみ
ケニアのバラを直輸入。
ヨーロッパ経由であった、アフリカの花や果物の
直輸入が増加している。

NHKワールドのInsight & Foresightでは、
「ノブ・マツヒサ」こと、松久信幸(59才)の国際的な活躍が
インタビューされていた。
ノブ・マツヒサ氏は、革新的日本料理のシェフであり、レストラン経営者。
日本料理のグローバリゼーションの最先端に立つ。
マツヒサ風sashimiやsushiなど、世界各地でのローカライゼーション(カスタマイズ、現地化)に成功し、ニューヨーク、ロンドン、ミラノ、メルボルンなど世界23ケ国に支店をもつ。
世界英語の発展に似て、日本料理をカスタマイズし、グローバルなsushi文化に寄与しているひとです。


【ソース】

●ソフトバンクの『白戸家「兄の白日夢」篇』(30秒)
オンエア 2008年3月15日
CM楽曲: くるみ割り人形
クリエイティブディレクター:佐々木 宏
CMプランナー:澤本 嘉光
ディレクター:山内 健司 http://mb.softbank.jp/mb/campaign/shared/cm/0803132b.asx

●J-MELO:
http://www.nhk.or.jp/j-melo/english/archive/index.html#200805
-SoulJaのHP
http://www.soulja.jp/
-そばにいるね。SoulJa + Yukie
http://www.youtube.com/watch?v=YArMcuLnHYg
-ここにいるよ。青山テルマ + SoulJa
http://www.youtube.com/watch?v=WuNwTO9vSdM

●jammin' Zeb
http://www.jvcmusic.co.jp/-/Profile/A021220.html

●ケニアからの直輸入
(農林水産省)
http://www.maff.go.jp/kaigai/2004/20041209africa52a.htm
(JETRO通商弘報5月20日)
http://www5.jetro.go.jp/jet-bin/pro1.cgi/report.html?3+50+4832617151f10

●ノブ・マツヒサ(松久信幸)
http://www.nhk.or.jp/nhkworld/english/tv/insight-foresight/index.html
人物紹介(ウィキペディア)
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%9D%BE%E4%B9%85%E4%BF%A1%E5%B9%B8