Think Globally, Act Regionally:『言葉の背景、カルチャーからの解放、日本人はどこへ往く』

身のまわりに見受けられるようになった「グローバル化」と生きる上での大事な「こころの健康」。さまざまな観点から考えます。

◆第39回+「世界で一番ビジネスがやりやすい国はどこだ?DoingBusiness2009」(追補)

2008-11-02 07:35:28 | ■日本人はどこへ往く?

◆第39回プラスワン「世界で一番ビジネスがやりやすい国はどこだ?
~世銀/国際金融公社の『Doing Business 2009』リポートより~」(第33回の追補版)

今回は、すこし柔らかだが、大事なリポートについて。

世界銀行(WB)と国際金融公社(IFC)は、2004年から世界のビジネス環境の改善度を追跡調査しているが、9月10日にその年次リポート、「Doing Business 2009」を発表した。このリポートは、グローバル展開を考えている企業へのある種のガイドになるだろう。

世界181ヶ所の経済圏(国と地域)を対象に、当地でのビジネスのやりやすさの比較調査を行っている。評価項目は、規制の簡素化、所有権の強化、クレジット(信用度)、契約の履行度など10つの評価項目*からなる。(2010年からはビジネスインフラが追加予定)。

トップ8までは、昨年のDoing Business 2008と同じで、

(1位)シンガポール、(2位)ニュージーランド、(3位)米国、(4位)香港、(5位)デンマーク、(6位)英国、(7位)アイルランド、(8位)カナダとなっている。
一人当たりのGDPがアジアで一位のシンガポールとリンクしている。
(参照:第30回「Samurai JAPAN と 情報の非対称性」の大前氏の指摘)

9位がオーストラリア(前年10位↑)、10位ノルウェー(前年9位↓)、
以下、
11位アイスランド(前年11位→)、そして12位が日本(前年も12位→)となっている。

13位から20位までは、13位タイ(同19位↑)、14位フィンランド(同13位↓)、15位ジョージア(同21位↑)、16位サウジアラビア(同24位↑)、17位スウェーデン(同14位↓)、18位バーレーン(同17位↓)、19位ベルギー(同16位↓)、
そして20位マレーシア(同25位↑)。


さて、日本の中身を見てみよう。


1.起業しやすいか:64位。設立日数が23日かかることと、設立資本金がゼロでありながら、コストがかかりすぎること

2.建設の許認可:39位。免許の取得容易さにやや問題

3.雇用に対する法的規制:17位。解雇コストは低いものの、雇用のたやすさに問題あり

4.所有権の登録:51位。資産価値の割合に占めるコストが高め

5.信用力:12位。可もなく不可もなく

6.投資家保護:15位。情報公開は進んでいるものの、投資家保護の強さにやや問題

7.税金関連:112位。55%と企業にかかる総合的な税金が先進国中断然高い

8.二国間・多国間貿易:17位。左程問題はなさそうだ

9.契約の履行:21位。この項目も問題なさそうだ

10.ビジネスからの撤退:1位。世界一、たやすくビジネスからの撤退ができる国が日本である。
   (追補)この「ビジネスからの撤退」の項目は、とても大事な指標だ。
   これは、「撤退したいのに撤退できない」ケースが海外では多いからだ。
   その理由。
   例えば、中国。
   ① 中国への進出形態は現地合弁企業が一般的だ。撤退に対して、合弁相手との同意
      が得られないことが多く、合弁解除の場合、多額の賠償金を払わなければならない。
   ② 地方政府による撤退への許認可が得られにくい場合がある。
   ③ 撤退ノウハウを知らない(ニッチもサッチも行かなくなり、ずるずると塩漬けになり、
      日本本社への業績の足をひっぱり、結果倒産)
 参考までに、「ビジネスからの撤退」しやすい国の順位は、
 ①日本 ②シンガポール ③ノルウェー ④カナダ ⑤フィンランド ⑥アイルランド ⑦デンマーク ⑧ベルギー ⑨英国 ⑩オランダ  (メキシコ23位、中国62位、ロシア89位、ブラジル127位)


巷で言われているように、

日本は、

企業への税金が高いこと、起業のし難さ、所有権の資産価値の割合に占めるコストが高いこと、建設の許認可の取得し難さなどが、国際的評価からすると低いことの裏づけになっていることが理解できる。

ちなみに、

経済成長率から判断した新興諸国:BRICs やVISTA
(ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチン)
のランクは以下の通り。()内は、2008年分。

125 (126↑) Brazil
120 (112↓) Russia
122 (120↓) India
83 (90↑)  China
92 (87↓)  Vietnum
129 (127↓) Indonesia
32 (35↑)  South Africa
59 (60↑)  Turkey
113 (102↓) Argentina

このリポートは、マクロな経済成長率だけでなく、グローバル展開を考えている企業に対して、現地国内の各種法整備など事業運用レベルでのガイドになるだろう。

*10つの評価項目:
1 Starting a Business(起業しやすいか)
2 Dealing with Construction Permits (建設の許認可)
3 Employing Workers(雇用に対する法的規制)
4 Registering Property(所有権の登録)
5 Getting Credit(信用力)
6 Protecting Investors(投資家保護)
7 Paying Taxes(税金関連)
8 Trading Across Borders(二国間・多国間貿易)
9 Enforcing Contracts(契約の履行)
10 Closing a Business(ビジネスからの撤退)

※写真は、シンガポール観光局のサイトからとDoing Business 2009の表紙を使用した。


【参考】

◆世銀(WB)と国際金融公社(IFC)の「Doing Business 2009」
http://www.doingbusiness.org/documents/DB09_Overview.pdf

◆国・地域別の調査データ
http://www.doingbusiness.org/Features/Feature-2008-22.aspx

◆調査の評価項目
http://www.doingbusiness.org/MethodologySurveys/

(追補08年11月1日)
◆ビジネスからの撤退
hhttp://www.doingbusiness.org/Documents/DebtEnforcement_Oct5.pdf
★「生産活動、世界で縮む:日本企業に迫る津波(1)」
(日経ビジネス 2008年10月20日p26)
http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20081016/174151/?P=6&ST=money