☆★第41回(欧州追加版)☆オバマ大統領のエネルギー革命は本物か?
~グリーン・ニューディール構想の姿~
(欧州追加版)
最下の参考「欧州スーパーグリッド構想」に関連して、
BBCは11月2日、
「デザートテック・インダストリアル・イニシアティブ」が
2050年までの欧州のエネルギー需要量の15%の供給を目的として、
4000億ドル(約40兆円)の新規開発事業にサインした、
ことを伝えている。
このコンソーシアムは、ミュンヘンに本拠地を置き、
太陽光発電により、2015年までに欧州へエネルギーの供給を開始する予定。
ドイツ銀行、ジーメンス、E.On(エーオン。ドイツの大手エネルギー会社)
が含まれている。
【参考】
BBC News
"Sahara Sun 'to help power Europe'"
2 November, 2009
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☆★第41回☆オバマ大統領のエネルギー革命は本物か?
~グリーン・ニューディール構想の姿~
(2009年3月1日オリジナル版)
世界の潮流として知られている
第3の波が「情報化社会」で、
その次の波は、「コンセプチュアル社会」
なのか、
「次世代エネルギー社会」なのか?
さて、その手がかりは、
オバマ政権のグリーン・ニューディール、
つまり、クリーン・エネルギー革命から読み取れる。
どこが、エネルギー革命なのか?
当分野の2大書物(パーニック/ワイルダーとT.L.フリードマン)を中心に、
あるべき姿と構想内容をひも解きたい。
エネルギー革命の柱は、
次の4つだ。
1.クリーンであること:
ビルや家庭では、太陽や風力発電など自然エネルギー(再生可能エネルギー)を使い、
従来の石油など化石燃料を使用せず、二酸化炭素を出さない(地球温暖化対策と石油エネルギーからの自立)。
2.自律・分散型のエネルギー・システムであること:
従来の集中型から、地域や自宅でも、ネットワークを介しても、
自由にエネルギーが使えること。
「どこでもエネルギー」(停電対策、電力セキュリティの確保)
3.エネルギーの流れが双方向であること:
Energy Internet (T.L.フリードマン)とも呼ばれているように、
電気が電力会社からの一方向ではなくて、電力会社への双方向(電気の売買)であること。
電気だけでなく、電気使用情報も双方向化される。
4.スマートな電力・電気管理であること:
送配電網でのロスを低減化。
ビルや家庭の電気をIT活用で、省エネへ向けて効率的な電力管理。
言い換えれば、
エネルギー革命の核は、
19世紀後半から今まで続いている従来の電力システムから、
21世紀型の次世代電力ネットワーク(スマート・グリッド)システムを構築しようとすることで、
発電ー送配電ーユーザまでの、電力インフラ(電力基盤)と電気利用のシステムを、
革新的に変えようとする壮大な挑戦になっている。
発電はクリーンな自然エネルギーで、
送配電は超伝導高電圧直流送電で、
家庭/ビルの利用者はIT化された「スマートメータ」で、電力エネルギーをスマート(賢く)にマネージし、電気は蓄電され、エコカー(電気カー)にも利用しようというものだ。
送配電は、ウエスティングハウスにより標準化された従来の交流送電から、
当初エジソンが提案していた直流送電に転換し、長距離の送電ロスを大幅に低減する。
なお、この直流送電の構想は、米国だけでなく、欧州でも進められており、北アフリカのサハラ砂漠と欧州を結ぶ「欧州スーパーグリッド」のアイデアもある。
電力ネットワークシステム全体のビジネスモデルの一新を図るだけでなく、
利用者(米国民)のエネルギー(電気)まわりの意識からライフスタイルまでを大転換しようというものだ。
ここが、エネルギー革命と呼ばれる所以だ。
インターネット以前と以後のライフスタイルの変化を思い起こせば、
この来るべき革命についても想像できるかも知れない。
オバマ政権は、
グリーン・エネルギー(再生可能エネルギー)の開発体制として、
ホワイトハウスに新設した「エネルギー・気候変動担当補佐官」にキャロル・ ブラウナー女史(元環境保護局長官)を据え、関連の政府機関全体の調整役としてリーダーシップが取れる機能にしている。エネルギー関連省庁のヘッドには、エネルギー庁長官にスティーブン・チュー氏(元ローレンス・バークレー国立研究所所長、ノーベル物理学賞受賞者)、環境保護局長官にリサ・ ジャクソン氏(元ニュージャージー州環境保護局長)、商務長官にゲーリー・ロック氏(前ワシントン州知事)を指名、年間150億ドル(10年間で1500億ドル)の予算をつけることになる。
そして、IT革命に続くエネルギー革命も、プロトコルの標準化(デファクト・スタンダード)やクリーンエネルギー関連商品の開発を通じて、米国が世界を主導していきたいとの決意を示している。
新しいビジネスモデル(あるべきビジネスの姿)を基に開発を進めようとしている米国に対して、
日本はどのような体制、構想をもっているのか(いないのか)。
次回は、日本のグリーン・ニューディールの内容と日本企業の実力を見てみよう。
※スマートグリッドを視覚的に理解しやすいのは、GE(ゼネラルエレクトリック社)のWebページだ。
上図左は、GEのSmart Gridのイメージ。中央は、欧州スーパーグリッド構想(黄丸が太陽光、青色が風力、緑がバイオマス)。右図は、T.L. Friedman (2008), "Hot, Flat, and Crowded"の表紙カバーとなっている、ヒエロニムス・ボス作「快楽の園」(http://www.thebeckoning.com/art/bosch/bosch-garden.htmlより使用した)。
【参 考】
◆Ron Pernick, Clint Wilder (2007), "The Clean Tech Revolution: The Next Big Growth and Investment Opportunity," Collins Business
ロン・パーニック/クリント・ワイルダー(2008)「クリーンテック革命~第三の巨大ビジネスチャンス」ファーストプレス
◆T.L. Friedman (2008), "Hot, Flat, and Crowded: Why We Need a Green Revolution--and How It Can Renew America," Farrar Straus & Giroux
◆Smart Grid(スマートグリッド<スマートな送配電力ネットワーク>)の定義:米エネルギー省(英語)
Smart GridのIntroduction (スマートグリッド紹介):エネルギー省の冊子(英語)
◆欧州委員会共同研究センター・エネルギー研究所(IE of JRC)の欧州スーパーグリッド構想(英語)
◆畑良輔(2008年)「GENESIS 計画と高温超電導直流ケーブル~究極の持続可能な『新エネルギー』の活用について~」(日本語)