木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

学校給食の課題と幸福追求権(前編)

2011-08-23 11:49:05 | 地方自治
 放射性物質の拡散による、牛肉をはじめとした食品の汚染が判明して以来、大人よりその健康リスクが2~3倍増加すると言われる子どもたちが食すことになる学校給食のあり方をめぐって、保護者から大きな不安の声とともに、システムの改善を求める声が日増しに強くなっています。その現象は、江戸川区でも例外ではありません。

 特に、放射性セシウムに汚染された稲わらを食べていないとみられる牛(福島県産)の肉からも、8月19日に放射性物質が検出されたことで、個体識別番号の確認だけで食品提供の安全性はコントロールできるとしてきた理屈も足下から崩壊したと言えます。

 このまま、産地制限や食材制限をしないまま、給食を提供して大丈夫なのか。消費者側(調理者側)でサンプリング調査をせずに給食を提供して大丈夫なのか。産地表示もしないけど、なぜなのか? 感じ方や表現方法に差はあるにしても、学校に子どもたちを通わせる保護者が不安を増大させたとしても無理はないと言えます。

 放射性物質による食品汚染と学校給食の安全性やその提供システムのあり方については、これまでも多くの方から課題が指摘されてきました。私自身も自分のブログで委員会発言の抄録として前回まとめました

 子どもたちの命を差し出すことはできないという保護者の立場を考えれば、理屈以前に、親としてごく自然な改善の欲求であると言えます。現在の江戸川区が提供している学校給食のあり方に対し、以下のような4点が指摘されている主な論点であると言えます。

①生産都道府県による検査という現行の国の食品検査体制にほころびが見られる状況下、消費者側である各学校が調理前に食材のサンプリング調査を行うべきである。

②食材の安全性および信頼性確保と保護者の心理的不安を軽減する意味でも、食材の産地表示を徹底し、詳細をホームページなどで提供する。

③出荷制限のかかる生産県の食材のみならず、場合によっては、いくつかの産地の特定食材については確定的な安全性が確認されるまで給食食材として利用しない。

④上記3つの対応が十分に実施されない間は、緊急措置として、希望する生徒の弁当や水筒の持参を許可すべき。

 以上の4点です。

 しかし、こうした区内の保護者からの高まる不安の声に対し、教育委員会は、水筒のわずかな持参許可の例外を除けば、ほとんどゼロ回答です。

 すなわち、サンプリング調査はしない、産地表示はしない、産地別排他主義はとらない、弁当の持ち込みは認めない。サンプリング調査などについては、議会のほぼ全会派から実施をすべきという催促の見解が福祉健康委員会の中で示されても、執行権を握る肝心の教育委員会だけが「給食は安全」「やらない」という頑なな態度の一点張り。

 先にも記したとおり、これらの要求は「親としてごく自然な改善の欲求」だと思います。子の健康を案ずるのは親の自然な気持ちです。①~④のことがらに対応していくことは多少なりとも事務や財政の増大には繋がるでしょう。しかし、できるところから段階的に手を付ければよいと思います。次代を担う子どもの安全に対する措置であり、法外な要求をしているとは思えません。

 しかし、それにもかかわらず、子どもたちの教育を司る教育委員会が、すでに汚染が広まっている現行の食品検査や給食システムに疑念を抱かず、半ば黙認し、子どもの健康保全に無頓着であるというのは、ある意味で、今の食品検査体制に勝るとも劣らないほどの問題だとも言えます。