木村長人(きむらながと)。皆さんとつくる地域の政治。

1964年(昭和39年)千葉生まれ。元江戸川区議(4期)。無所属。

江戸川区議会福祉健康委員会(8月18日)における議論の抄録(その2)

2011-08-19 17:32:05 | 地方自治
 委員会審議の最後に、委員長から次回9月16日の委員会の内容が示されました。

 すでに前回(8月9日)委員会の中でも予告されていたことですが、9月の福祉健康委員会では放射能に関する専門家による講演をその内容とするということでした。

 福祉健康委員会の委員が放射能関連陳情を審査するにあたり、あらためて放射性物質とその健康リスクについて学習することは決してムダにはならないので、講演の設置に賛意を示してきたものです。

 問題はどういった専門家を講師として招聘するか、という点です。8月9日の委員会時に講演会開催の提案が委員長から出された際、すぐに私は「どういった講師をお呼びするのかが重要。ぜひ講師の推薦をさせて頂きたい」と申し上げました。そして、迷うことなく一人の専門家に絞り、委員会終了後即、東大アイソトープ総合センター長の児玉龍彦氏を推薦しました。

 今や、7月27日の衆議院厚生労働委員会にて参考人として出席し、国の鈍い対応を厳しく批判した同氏の雄姿はあまりに有名。(16分にわたる児玉氏の参考人説明の発言をすべて文字起こしした「きーこ」さんのブログのページを貼り付けておきます。同ページには厚生労働委員会での動画も組み込まれています。)

 しかし、残念ながら、委員長から発表された9月16日に開催される福祉健康委員会講演会の講師は児玉氏ではありませんでした。

 確かに、講演開催日が最初から9月16日と決まってしまっていたことや、推薦提案するといってもこちらから児玉氏に日程の確認をとっていたわけではありません。一方的な、希望的推薦にすぎませんでした。また、委員会の設定についての最終調整は正副委員長に委ねざるを得ませんし、そのことには事前に同意もしておりました。仕方ないと言えば、仕方ないのですがね・・・。

 9月16日の委員会にて講演する講師は福祉政広氏だそうです。そうです、8月1日に区が開催した講演会「放射線・放射能を正しく理解しよう」の講師です。もう皆さんもご存じだと思いますので、あまり多くを申し上げませんが、基本的に福士氏は100ミリシーベルト以下の低線量は人の健康に影響なしとする安全宣言派でらっしゃるようです。

 ICRPの「しきい値なし直線仮説」に忠実な私の立場とは相入れるものではありません。統計学的に裏付けのない解釈を簡単に受け入れるわけにはいきませんから。

 まあ、それはそれとして、放射線学を専門とする同氏の知見について改めて予断を排して拝聴してみようとは思います。右も左も両者を知ることは有用でしょう。そうでなければ批判もできないし、それを乗り越えた発展も生まれませんから。

 しかし、あらためて思えば、江戸川区が招聘してきた放射線学の専門家にはある偏りが存在します。中川恵一氏にしても福士政広氏にしても、どちらも「安心して生活できるレベルです」「影響ない」と発言している安全宣言派です。

 こうした現象の下地は区長自身の立場にあります。区長自身が第二回定例会で「権威あるところに安全だと言ってほしい」「大丈夫です、これ以下なら大丈夫ですと言ってほしい」と明言していたので、その意向に基づき、識者が選択され、招聘されているのは間違いありません。(注2)

 しかし、福祉健康委員会は行政府の設置する委員会ではありません。区長を頂点とするヒエラルキーには属さない区議会の委員会です。行政とは別角度の講師を、ましてやまったく同じ講師ではない方を招聘してほしかったところです。

 そこで、私は委員会で、「次回9月16日講演会のみで終わりにするのではく、いろいろな立場の専門家がおられるので、安全宣言派とは別の方を講師に据え、ぜひ第二回目の講演会も調整してほしい」旨、申し入れました。他の議員からも同様の意見が出されました。

 「安全」「危険」などの解釈や信仰を訴える専門家より、「計測と除染」といった自治体がとるべき具体策を示唆してくれる専門家の話をぜひ身近で聞いてみたいものです。

 皆さんからも「こんなお勧めの先生がいるよ」など、ご推薦やご示唆頂戴できれば、とても嬉しく思います。私の存じ上げない専門家の方々もたくさんいらっしゃると思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 なお、9月16日の委員会は講演会としての開催になるため、陳情審査は行われません。陳情審査の傍聴を目的として議会に足を運ばれる方がいらっしゃったら、無駄足にならぬようご注意ください。議会予定表の9月のページにも「陳情審査は行いません」と記されています。

 ただし、講演とはいえ、通常の委員会という位置づけであることには変わりありませんので、当日先着10名までの傍聴は可能となっております。

 それから、もう一点。9月16日の委員会は通常の10時開催ではなく、9時30分からの開催です。ここのところ、福祉健康委員会が毎回3時間半近くに及んでいることから、当面、開始時間を30分早めるという方向になりました。お間違えのないようお願いいたします。


(注2)「権威あるところに安全だと言ってほしい」「大丈夫です、これ以下なら大丈夫ですと言ってほしい」という区長の発言は、6月30日の瀬端議員の質問に対する答弁部分で述べられています。具体的には同議員の議会中継画像の37分30秒~40分20秒の間で発言されています。放射線の問題をめぐる区長の考えやスタンスが、ある意味、よく読み取れます。「なるほど、だから江戸川区の対応はこんななんだ」って感じです。




江戸川区議会議員 木村ながと
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