ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

「文化産業」という考え方。

2019年07月07日 19時19分29秒 | 美術 アート
映画産業や音楽産業という分野があります。
誰もが知っているザ・ビートルズなどのグループは音楽産業の筆頭です。彼らはイギリスの輸出に大きく貢献した功績により女王陛下より勲章まで授かっています。
映画や音楽は一つの作品で100億円もの売上高を上げることもあります。
映画や音楽以外でそのような位置を占めているものはあるのでしょうか。
演劇はどうでしょうか。オペラ座の怪人の舞台を観た観客の数は初演以来一億二千万人にも上るそうです。また我が国の劇団四季は複数の演目のミュージカルを自前の劇場でいつでも公演しています。ミュージカルを舞台芸術ととらえればこれはいまや立派な芸術産業と言えるでしょう。 

さて、文学をもっと広く捉えて「出版業」と考えればそれは一応「産業」と呼べるかもしれませんが、文学産業や絵画産業などと言うものはあるのでしょうか。美術や演劇を産業であると言う人はおそらくいないでしょうね。

ここで、わが国の浮世絵を考えてみましょう。浮世絵に対して私たちが一般に持つ印象はそれが「美術品」だという事です。江戸時代後期に作られた浮世絵がヨーロッパに輸出され、それがヨーロッパのの画家たちに影響を与えたことは周知のことです。後期印象派の画家たちにはそれをジャポニスムと呼びました。
ここでわたしたちが注目しなければならないのは、輸出入に関わった画商にとっては、浮世絵という美術品は商品でもあった事です。また浮世絵の流通は下絵を描く絵師と版を彫る彫り師とそれを印刷する摺師という人たちによる業務分担による出版事業だったのです。浮世絵は画家が自らの内からほとばしるものを表出させる営みであったと同時に、出版という事業だったのです。

商品を制作・流通させることを産業と言いますが浮世絵の出版はまぎれもなく産業であったのです。ですから浮世絵という美術品を創作する営みは「文化的産業」と言えるでしょう。
浮世絵などの「美術品」を制作する側も、それを鑑賞する私たちも、その意味では「美術産業」の一翼を担っているという事もできるでしょう。
ビートルズの楽曲の流通が「音楽産業」であるならば、絵画の創作と鑑賞も「美術産業」と言えるでしょう。




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