ヒマジンの独白録(美術、読書、写真、ときには錯覚)

田舎オジサンの書くブログです。様々な分野で目に付いた事柄を書いていこうと思っています。

「リスボンに誘われて」を観る。

2017年02月05日 19時03分06秒 | 映画
先日は数回に渡って、「ある天文学者の恋文」という映画と小説のことを記事にしました。
その映画でエド役を務めたジェレミー・アイアンズが出演していた「リスボンに誘われて」を観ました。と言ってもDVDでの鑑賞です。

「リスボンに誘われて」の主人公ライムント(ジェレミー・アイアンズ)はスイスのベルンの高校教師です。
勤務先の学校へ行く途中で橋の上から身を投げようとしている女性を助けることから、この物語は始まります。

ライムントは女性が着ていたコートのポケットに残された一冊の本に誘われるように、リスボン行きの夜行列車に乗ってしまいます。
若い女性が持っていた本の著者はポルトガル人のアマデウという青年でした。
アマデウが何故この本を書いたのかにライムントは興味を持ち、この本に誘われるようにリスボンへとやってきます。
そして、アマデウが関わった当時のポルトガルでの青年たちによる反政府活動を知ることになります。
アマデウはすでに死亡していましたが、当時の関係者は存命の人たちもいました。

ライムントがこの本を読み解く中で1970年代前後のポルトガルでおきた出来事が、明らかにされていきます。
著者の人生が明らかにされると同時に、それに触発されライムント自身が変わっていくさまが描写されていきます。

この映画の主人公は二人おります。一人は高校教師のライムント。もう一人は反政府活動をしていた青年医師のアマデウです。
この映画のテーマはライムントが著者のアマデウの人生を訪ねることにより、自分も変わってゆくというところにあるわけです。
ライムントの心の変化の物語の中にアマデウの物語が「劇中劇」としておさめられている構成になっています。
これはどっちの劇が主なのかはわかりませんが、しいて言えばライムントの心の変化をもたらしたのが、アマデウと彼の著作にあるのですから、アマデウの物語が主と考えることは出来ます。

ここでライムントの心の変化に大きな役割を果たしている人物がおります。
眼科医のマリアナという女性です。ライムントが自分の眼鏡を壊してしまい、マリアナのもとで新しい眼鏡に変えてもらいます。
実は眼鏡を変えたあたりからライムントの心情に明らかな変化が表れてきているように思われます。
眼鏡を変えたことにより、見えてきたものがあったのかも知れません。

ライムントはリスボン滞在中にアマデウにかかわる実に多くの人々を訪ね、話を聞いてゆきます。そうして、アマデウと彼が生きた時代のリスボンを知ることになります。
それらのあらましがわかったところでライムントはスイスに一度戻る決心をします。

スイスに戻るライムントを、親しい仲となっていたマリアナが駅に見送りに来ます。アマデウをはじめとする当時の人々の人生と比べて何もなしていない自分の退屈な人生を嘆くライムントに、マリアナはリスボンに残るように誘ったのです。

この場面です。




この映画にはもとになった小説があります。それは邦題が「リスボンへの夜行列車」と言います。
映画の原題はNight Train to Lisbonとなっていて小説の題そのものです。
著者はスイスの作家パスカルメルシエという人です。この小説は「哲学小説」と言われているそうです。

原作の小説も読んでみたくなる映画の出来です。わが国ではそんなに話題に上らなかったようですが良い映画でした。
ライムントを演じたジェレミー・アイアンズが感情を表に出さなくても観る人を納得させるのはやはり、ベテランの渋みなのでしょう。



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