kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

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空母瑞鶴から新興丸までー海軍軍医日記抄ー

2015年10月03日 | 書評

宮尾直哉 著 近代文藝社 1992年刊

著者は東大卒・外科医として教育を受け、卒後すぐに海軍軍医として任官して空母瑞鶴に乗り組み大戦を生き抜きました。父親と同じ医局出身の先生でしたのでこの本を送られたようです。戦後は豊島区で開業していましたが、平成元年に亡くなられました。先生が豊島医師会の会報に連載した日記抄を奥様がまとめられたのが本書です。

 

軍医として瑞鶴乗り込みすぐに真珠湾作戦、インド洋作戦、珊瑚海海戦、南太平洋海戦などに従軍しました。緒戦の重要な作戦、海戦に軍医として参加して、その様相を日記として記述しておりおり貴重な記録となっています。軍医は通常の兵科の将校とちがい平時は救急患者などの対応などがあるのみでのんびり艦内で過ごしたようです。

一年半ほど瑞鶴に乗り組んだ後、北洋航路に従事してい海軍補給船新興丸の軍医となり小樽や大湊、千島列島各地間の往復航海に従事しました。当初は何も起こらぬ安全な航海でしたが、昭和19年になると潜水艦による魚雷攻撃を危うくかわすなど緊迫した状態となりました。

著者は艦勤務のヒマを見てはスケッチにいそしみ、各地の情景を絵で記録している点もよい点です。今はもう簡単に見れない千島列島の風景を記録しているのは貴重です。

著者は舞鶴海軍基地で終戦を迎えました。戦時中の軍医としての生活を日記として記載しているのは当時の時局を知ることに役立ちました。社会的地位が高かったためと思われますが、悲惨な感じは少なくノーブルに生きてこられたようです。ある意味このような生活を過ごした人もいたことを知ったことは戦時中の生き方のバリエーションが多かったことが認識されました。

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