kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

このブログは、映画、ミリタリー・ハイテク小説の私的な感想を記したものです。

続マッハの恐怖

2013年09月23日 | 書評
続マッハの恐怖 柳田邦夫著 新潮文庫 1986年

 柳田邦夫の書いたマッハの恐怖の続編である。最初のマッハの恐怖は全日空Boeing 727-100羽田沖着水、墜落を主に扱っていたようで、発刊当時読んだ記憶がある。この続編は羽田沖事故の数年後に起こった東亜航空YS-11ばんだい号の函館での墜落事故、日航DC-8のニューデリー墜落、ソ連モスクワ空港での墜落を扱っている。主点はばんだい号墜落の事故調査方法と報告書作成について絞られている。レーダー記録などをもとにして函館の手前で旋回して墜落したとする運行路誤認か、函館上空を飛行したとする証言を重視して復航航路をとって墜落したとする調査委員会での対立が取材されている。函館空港の離着陸援助施設がお粗末な点を主張して、その当時の各地方空港での整備の必要性を説いているようである。
 また日航DC-8の墜落事故は外国空港で起こった事故で2つの事故が1か月もたたないで続けて起こった点に特異性があるとして、その原因にパイロットの能力が低かったのではないかとやんわり書いている。しかし事故原因をパイロットミスに落とし込むのはいかがかという主張もある。当時の日航の航空機運航、管理能力が低いとの指摘である。
 現在は航法や離着陸支援装置は主要空港にはそろっており、本が書かれた当時とは比べ物にならないと思うが、依然として事故は起こっている。機材の不具合以外ではパイロットの能力欠如によるものがやはり多いと思われる。

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風立ちぬ

2013年09月17日 | 映画評価
 スタジオ ジブリ 風立ちぬ  宮崎駿 製作・監督

 評判の「風立ちぬ」を豊島園シネマで見ました。零戦の設計者、堀越二郎と作家、堀辰雄の話をまぜこぜにしたものです。堀越二郎は三菱重工の航空機設計者、堀辰雄は作家で「風立ちぬ」が代表作、この二人の話を時間軸で織り交ぜながら進む内容です。飛行機マニアからいえば二人の話がが混じってしまって逆に散漫になった印象です。逆ガル翼タイプの9試単戦試作機1号機(1935年初飛行)の製作過程ももっと描いてほしかったと思います。女性向きにも作るには結核に罹った彼女との話も織り交ぜる必要があったと思いますが、結構退屈な映画でした。最後にあるユーミン「飛行機雲」もどうかなーというところでした。

追加:結核の女性は「菜穂子」という堀辰雄の有名な小説からとったようです。小説で菜穂子は八ヶ岳山麓のサナトリウムで療養するように描かれて、病院抜け出して夫に会いにゆく場面もあるそうです。映画と一緒です。知らないことは恐ろしい。小説読んでいた人は納得の映画でしょう。



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零戦燃ゆ

2013年09月09日 | 書評
零戦燃ゆ 1~6巻 柳田邦夫 文春文庫 1983年1月第一刷
 柳田邦夫氏著、零戦の開発、活躍、終焉までを大戦の経過を織り交ぜながら記録したノンフィクションです。当然海軍サイドの記録に偏重していますが、主要な海戦経過をバックにゼロ戦を含む海軍機の活躍が書かれています。特に主要な戦いごとに零戦パイロットにインタビューしてあり、生の声が聴けます。またパイロットの近況が同時に記載してあり、戦後の各パイロットの生き様もわかってきます。現在2013年ではこれらの方々はほとんどが鬼籍に入られていると思いますので、彼らの話は貴重な証言です。真珠湾攻撃やミッドウェー海戦はよく知られていますが、大戦後期のマリアナ沖海戦、レイテ沖海戦、台湾沖航空戦、神風特攻、沖縄戦などの戦いと零戦の活躍は戦死者も多いことから記録が少なく、あまり知られていないと思います。この本ではこれら戦いに参加したパイロットの証言をもとに事実に沿って書かれていて貴重なものです。アメリカ側の対応も調べ両者を突き合わせてあり興味深い点が多いと思います。戦果評価が日本軍はいい加減で、戦争後期にその弊害が顕著になって作戦指導を誤らせたなど鋭い指摘があります。この本が上梓された1980年代初頭は日本が先進諸国に追いつくころで、産業などの経営の在り方をアメリカの大戦中の方針を紹介してアドバイスしているなど時代を感じさせます。
 文庫版は1~6巻に分かれていますが、各巻のボリュームも大きく読破するのに1か月以上かかりましたが、それだけ勉強になりました。1冊105円しめて630円でこれだけためになる歴史を学べることは幸せです。

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