kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

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633爆撃隊スバートフィヨルド攻撃、633爆撃隊ラインメイデン作戦

2009年09月01日 | 書評
633爆撃隊―633スコードロン〈1〉 (光人社NF文庫) (文庫)
633爆撃隊 ラインメイデン作戦 (光人社NF文庫) (文庫)

 ともにフレデリックE・スミスによる航空フィクション小説です。633爆撃隊は架空のものですが、第2次大戦中のイギリス空軍の爆撃隊を想定しています。使用機はスバートフィヨルド攻撃編では当初ダグラス・ボストン軽爆撃機で途中デハビランド・モスキートFBⅥに機種更新しています。
 デハビランド・モスキートは木製構造の機体でマリーンエンジンを双発で装備し、軽爆、偵察、戦闘をこなす多用途機でした。この小説は軽爆撃機として精密爆撃を任務とする部隊の活躍を描いています。エリート部隊として633爆撃隊は設立され、敵地奥深くにある秘密施設を爆撃破壊することを命じられます。
 スバートフィヨルド攻撃ではドイツ占領下ノルウエーにある秘密施設をフィヨルド奥に探して、その頭上にある断崖を爆撃、崩落させることで任務を果たしました。対空砲火と敵戦闘機FW-190によりほとんどの機体が帰還しないという設定で、過酷な戦闘の様子が描かれたいます。
 後編のラインメイデンとはナチス・ドイツが密かに開発を進める高性能地対空ロケット「ラインの乙女」のことです。これが実戦配備されれば連合軍爆撃隊は相当の被害を受けることが予想されました。ドイツ本土にあるこの地下ロケット工場を探し出して精密爆撃する作戦が633爆撃隊に課せられ、現地のレジスタンス組織との連携、スパイとして送り込まれた美女による目標への誘導など難しい場面が続きました。この作戦でもかなりの犠牲を出し、帰還時にBf-110戦闘機に狙われるなど迫力ある筋書きです。
 パイロット、航法士、効果評価士官(本小説の狂言回し役)、指揮官間の思惑、基地外のパブ?における女性との華麗な恋愛も織り交ぜ、かなり濃密な人間模様が入れ込んであります。英国風小説の神髄を見るようなできあがりです。日本では当時の文化の違いや軍統制の相違から、航空攻撃部隊にかんしてこれだけの人間臭い航空小説は作れないのではないかと思います。
 633爆撃隊は映画にもなっており昔劇場で見た記憶がありますがすっかり忘れています。今度本物のモスキートが飛び交うDVDを見ようかと思います。

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