kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

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ルンガ沖の閃光 ラッセル・クレンシャウ 大日本絵画

2023年12月04日 | Weblog
ルンガ沖の閃光 ラッセル・クレンシャウ 大日本絵画
2023/12 上高田図書館
原題 Battle of Tassafaronga

ルンガ沖夜戦(1942/11/30~31夜発生)のアメリカ側の解説書になります。筆者は実際に海戦に参加した前衛駆逐艦3番艦「モーリー」の砲術士官であった人である。このガダルカナル沖の夜戦ではアメリカ側は重巡洋艦「ノーザンプトン」撃沈、3隻大破の被害を受け、日本側は警戒駆逐艦「高波」撃沈として日本側勝利となった。アメリカ側司令官カールトン・H・ライト少将 、日本側田中頼三少将 、日本側はガダルカナル島への駆逐艦でのドラム缶輸送が結果的に失敗した。
本書はアメリカ側の視点で本海戦を詳細に評価している点が貴重である。特にライト少将の指揮、レーダーによる日本艦艇の把握、魚雷の不備(たくさん射出したにもかかわらず命中少ない)、砲戦の成果などを詳述している。自分自身が砲術士官として参加した著者による記録の解析などは大変印象深い。レーダーの運用が始まったばかりではあったが、夜戦の混乱した戦場での意義のある利用法など当時の日本では考えられない戦法を駆使した戦いであった。さらに魚雷の不備に触れており、多くの場合アメリカ側の魚雷は命中しても爆発しないことがあり、兵器局の官僚主義と指揮者の無自覚によるものであった。改良ができたのはこの海戦数年後であった。この魚雷不備のため日米開戦の初戦でアメリカ側は戦果が上げられなかったことが長期戦になった原因としている。
この海戦での日本側の指揮官田中少将は敵発見後すべての戦闘を部下に任せ、発した命令は「用意」「かかれ」だけとのことである。日本海軍は長年培ってきた夜戦、砲雷同時戦を自律的に行える訓練をしていたのでそれで足りたそうである。ただ旗艦「長波」が早期に離脱したことなどを含めて田中少将が弱腰とみられることになり結果的には左遷されている。
この海戦は日本海軍が勝利を収めた最後のものと認識されている。特に駆逐艦による夜戦の勝利は長年の訓練によるものであった。
アメリカ側からの詳細な分析とそれをきちんとまとめる能力、戦訓を含めた
軍内部の軋轢や不備の指摘など理知的されており、高く評価できる内容であった。