kkdaiyaの映画、ミリタリー・ハイテク小説

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ミッドナイト・スラスト上下巻

2012年07月13日 | 書評
 
ハロルド・キング著 創元ノベルズ 1989年6月発刊
 ブックオフで上下200円で購入したものですが、表紙にB-36編隊が描かれており珍しかったので手に取りました。B級小説かと思いしばらくほっておいいたのですが出張の際の時間つぶしで読み始めました。結構面白い内容で興味深く読みました。
 1953年代初頭、ソ連首相スターリンが脳溢血で倒れ亡くなるのは時間の問題となりソ連中枢部で権力闘争が開始されたことが事の発端です。当時冷戦の相手であったアメリカではこの事態に戦略空軍B-36、57機によるアメリカ本土爆撃演習「ミッドナイトスラスト」を実施してソ連東欧諸国に圧力をかけることを考えます。演習は大西洋浮かぶアゾレス諸島より超低空飛行でアメリカ東海岸を襲うというシナリオで、防空体制のチェックと戦略空軍の能力が試されます。演習準備の間にポーランド空軍のMig-15の亡命やアメリカ空軍のF-84戦闘機がチェコ空軍Mig-15に撃墜される、ベルリンと西ドイツ間の回廊で英空軍ランカスター爆撃機(まだ飛んでいたのでしょうか)が東ドイツMig-15に撃墜されるなどの偶発的な事件が起こり緊張がますます高まります。亡命パイロットの暗殺の試みをCIAエージントとデンマークの旧レジスタンス仲間が防ぐなどのエピソードも挿入されます。
 アメリカ本土爆撃演習ミッドナイトスラストは大西洋上に発生した大型台風のためにB-36の飛行経路に狂いが出て、多数の機がニューヨークの民間飛行管制区に迷い込み、あわや衝突事故発生かという緊迫場面もあります。さらに防空空軍の指揮系統の乱れでリーダーのB-36がF-84戦闘機により攻撃されて結果的に墜落することになります。
 状況は古いですが当時の戦略空軍、NATO空軍、防空空軍の緊迫した情景がよく書かれています。またスパイ戦の話も織り交ぜてあり楽しめます。特にシックスと呼ばれるB-36の離陸状況や飛行中のコックピット内の様子がよく描かれており、興味深いシーンが続きます。当時は慣性航法装置、GPSもなく推測や天測を使った航法を行っており、B-36が台風の中迷子になったり、300mの低高度飛行を行っているにもかかわらず気圧による高度の補正ができない危険な状態になることなどがよくわかります。
 読んでいて楽しい小説でした。

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