切れ切れ爺さんの徒然撮影&日記

主に寺院や神社等を中心に、文化財の撮影と紹介。
時に世の中の不条理への思いを発言していく。

《地下鉄サリン事件27周年 語り継ぐ取り組み》  2022.3.21

2022-03-22 00:44:34 | 社会


★ 事件の被害者達と新たな世代に語り継ぐ活動

 昨日3月20日は1995年に発生した「地下鉄サリン事件」から27周年の日だった。ちょうどその年1月17日に阪神淡路大震災が発生し、関西一円は壊滅的な打撃を受け全国的に都市直下型巨大地震の恐怖を改めて思い知らされたものだ。それからわずか2ヶ月後に地下鉄サリン事件が発生。
 昨日の各テレビ局のニュースや新聞紙上などでも取り上げられていたというのも、事件の被害者たちが高齢になり被害者の会が取り組んできた慰霊式の取り組みなどが、今回で最後となるということも含め、一斉にニュースに取り上げられたようだ。同時に昨年11月3日には「坂本弁護士一家殺人事件」の慰霊の取り組みも、正式に昨年で最後となったと言う。おそらく後は各個人でお参りをしたりという具合になっていくんだろう。

 地下鉄サリン事件においては14名の死者。そして6000数百名に及ぶ重軽傷者が出た。中には後遺症に苦しんでいる人が今なお大勢おられる。そして意識不明のまま脳死状態に近い状態で寝たきりになっている人もおられる。そういった意味では日本の歴史史上稀に見ると言うか、全く初めてと言う無差別集団テロ事件となったのだ。
 無論言うまでもなく新興宗教を名乗る「オウム真理教」による集団殺戮事件であった。後に麻原彰晃をはじめとする幹部たちが次々に逮捕され、結果的に13名の確定死刑囚が死刑を執行され、今となっては主犯である麻原彰晃の考えていたこと、しようとしていたことが解明不十分なままに終わりを告げてしまった。



 もちろんオウム真理教が犯した事件はこれが初めてではなく、すでに長野県松本市においてやはりサリンという化学物質を発生させ、大勢の死者を出すという事件を起こしており、また個人に狙いを定めた殺人事件も何件か犯している。オウム真理教が言うところの「 ポア。」 これらも含めるとオウム真理教によって奪われた命はかなり多数に上り、なおかつ重軽傷者あるいは、その後の後遺症で未だ寝たきりの人は数が多い。未曾有のこんな事件に対して決してあってはならない異常な事件としてだけで捉えるのではなく、二度とこんなことがあってはならないとの思いに駆られて「被害者の会」が結成され、いわゆる事件を語り継ぐ取り組みが行われてきたと言う。
 やはり事件の性格上、そして被害者の規模があまりにも大きいことから、事件を風化させてはならないとの思いから語り継ぐ活動が続けられているものと思う。
 日本においてこのように「語り継ぐ取り組み」というのは、他にもいくつか存在している。国民のほとんどが知っているのが、広島及び長崎に落とされ何十万人という犠牲者を出した、アメリカによる原子爆弾の被害だ。日本が中国大陸侵略と言うことから始めた戦争が、結果的に原爆を見舞われるという形で敗戦に至った訳だが、その最後の部分で原子爆弾が初めて民間人の頭上に投下され、広島、長崎合わせて30数万人が一瞬に亡くなると言う甚大な被害を被った。
 あまりにもの惨状に、核兵器そのものを使ってはいけない、なくすべきだとの声が高まる中で、唯一の被爆国である日本においては、決して誰もが永遠に忘れてはならない重大な被災ということで、語り部の体験者達が長崎や広島に現れ、それが組織化されて語り継ぐ取り組みが行われてきた。しかしその語り部達も高齢となり語り継ぐ活動そのものが縮小されつつあった。そんな中で若者の中から、やはり世代が変わってもずっと語り継がなければならないということで、広島と長崎ではかなり積極的な形で平和学習を含め、語り継ぐ活動が続けられている。
 これとは別に自然災害における大被害についても、同じく語り継ぐ活動が行われている。特に1995年の阪神淡路大震災。そして2011年の東日本大震災については、未曾有の被害を出しており、これについても助かった人々により語り継ぐ活動が行われていると言う。もちろん自然災害に対して、どのように普段から対応すべきなのか、防災意識の向上を目指し、また具体的な対策なども含めてそこから得られた教訓を幅広く、また次の世代にも伝えていくという大事な取り組みだと言える。

 オウム真理教というのは、正式に宗教法人として申請され認められている。当初は麻原彰晃の特殊能力をを売り物に、大学生たちが次々に入信し洗脳され、大きな組織へと広がっていく。そして出家した学生たちは家族を捨てて縁を切り、自分自身の生涯をオウム真理教へと捧げるという事態に至って、残された親たちは「オウム真理教から子供達を取り返す会」といった組織がつくられ、具体的に力づくで自分の息子を娘を連れ出そうとしたものの、洗脳されたら学生たちはそれに応じることなく、膠着状態となった。冷静な親たちから見れば、麻原彰晃が厳しい修行の果てに空中浮遊ができるなどという、まったく馬鹿げた写真を見て最高学府で学んでいる学生たちが、簡単に麻原彰晃に心酔して信者となってしまうと言う奇妙な現象が起こったのだ。
 その結果オウム真理教は大きな組織となり、内部にまるで一つの国のような組織を作ってそれを維持拡大し、具体的に国政選挙にまで売って出るようになる。しかし様々な事件を犯す中でオウム真理教の名前が出てくることになるが、決定的な証拠がないということで、結局具体的な立ち入り調査ができずに、最後は地下鉄サリン事件を許してしまうことになった。これをきっかけにようやく警察は具体的に動いて、山科県にあるサティアンと呼ばれる施設に次々と捜査のメスが入り、幹部及び麻原彰晃も逮捕されるに至る。

 そしてこの事件を風化させてはならないということで、「事件を語り継ぐ会」が活動を続けているわけだ。
 だがニュースを見ていて、あるいは新聞を読んでいて、少し疑問が出てきた。確かに日本において見たことも聞いたこともないような、前例の無い特殊で極めて影響力の大きい事件であっただけに、語り継いでいくという事自体は大事だし、今後も続けていく必要があるとは思う。実際に語り継ぐ活動をされている方々は偉いと思うし、その労力には賛辞を送るものだ。ニュースなどではそのことは報道されていたものの、では「語り継ぐ内容」についてはどうなんだろうか。
 地下鉄でサリンを撒かれ大勢の人が死んだ、助かったが後遺症が残った、何ヶ月も入院した、今も影響は残っている、精神的な恐怖心がある、こういう事件を許してはならない・・・といった内容が語り継がれているのではないかと思う。実際にはその内容を聞いたことがないのでわからない。仮にこのようなものだとすれば、大切なことがすっぽりと抜け落ちてしまうということになる。
 私が感じていることが、実はきちんと語り継ぐ内容に入っているのならば非常に申し訳ないと思う。もしそれが入っていないのならば、是非語り継ぐ内容に入れて欲しいと願う。入れて欲しい内容は大きく簡略化して、ただ一点。その一点は少し内容について、事の是非を問われるような内容にもなろうかと思う。しかしこれを入れなければ語り継ぐ事件の内容の本質は、後世には教訓として伝わらないことになると思うのだ

★ 地下鉄サリン事件について語り継ぐ内容に入れておくべきこと



  端的に言ってしまえば、この未曾有の大事件は防ぐことができたはずだということだ。オウム真理教による具体的な犯罪の最初の大きなものは、1989年に起こった「坂本弁護士一家殺人事件」だ。
 坂本弁護士は故あってオウム真理教に取られた息子を取り返したいという親の願いを受け止めて、行動を始めた。その活動を通して様々な形でオウム真理教にアプローチしている。麻原彰晃はこの弁護士がオウム真理教の今後の活動に対して、大きな壁になることを恐れ、その行動をマークし始めた。一方このころマスコミもオウム真理教の出家信者に関する問題を少しずつ取り上げ始めている。そんな中から具体的な活動を始めていた坂本弁護士に TBS テレビが、単独インタビューを実施した。無論オウム真理教の問題についての内容だ。
 この情報を得たオウム真理教は TBS テレビに押しかけて、放送前のインタビュー内容のビデオを見せるように要求。ところがなんと驚くことに、 TBS テレビはオウム真理教関係者にそのビデオを見せてしまったのだ。当然オウム真理教側は強く抗議し、嘘の情報だということで放映中止を求め、 TBS は実際に放送中止してしまった。
 この TBS の対応が決定的な、そして重大なミスだったのだ。このビデオによって麻原彰晃は坂本弁護士をポアする(殺害)ことを決意し、部下に命令したということになる。そして結果的に坂本弁護士宅に乗り込み、弁護士、その妻、そして小さな子供、計3人を殺害した。坂本弁護士が所属する事務所に出勤しないことを不審に思った事務所側が、警察へ届ける。
 神奈川県警の管轄だ。家宅捜査をするものの3人の姿はなく、部屋の中には派手に争ったような感じはなかったが、オウム真理教のバッジが落ちていたことがわかった。しかし操作の結果は、結局何も分からずということで済まされた。マスコミ側が記者会見で追求するときにバッジの問題は、オウム真理教が信者の親に渡ったものが坂本弁護士の所にあったんだろうと答えた。つまりオウム真理教の言い分を鵜呑みにして、そのまま発表したのだ。3人が行方不明になったことについては、これもまた驚くべきことに警察は、「おそらく法律事務所のお金を使い込んだか何かで雲隠れしたんだろう、あるいは借金を返せなくて夜逃げしたんだろう・・・」等と全く何の根拠もない作り話をしてみせたのだ。

 坂本弁護士及び彼が所属していた法律事務所は共に、「自由法曹団」と言う法律団体に所属していた。特に弱い人の立場に立ち、民事裁判や行政裁判などでも大きな役割を果たしていた。警察や公安はこの自由法曹団という組織が、日本共産党との関係が深いということですべてをリストアップしており、日常的にマークしていたと言われている。つまり同じ司法界の中でも自由法曹団というのは、時の政権や権力に対しては危険な存在として、警察においては神奈川県警のみならず、全国の警察が共通認識を持っていたと言われている。つまり警察から見ても、自由法曹団の弁護士たちはいわば「敵」ということになるのだ。

 当寺、神奈川県警の本部庁舎の中では、どうせどこかに逃げて隠れてるんだろうと鼻で笑っていたと言う。県警の上層部や刑事たちも同様に、深刻な問題としては誰一人考えず、捜査は形式的にやっているような状態だったと言われている。こうした神奈川県警の予断と偏見が杜撰な捜査に終始し、真剣に取り組もうとはしなかったということなのだ。
 結果的にはこの時に真剣に操作していれば、オウム真理教の犯罪だということでサティアンの家宅捜索が行われ、逮捕されていた可能性も高かったのだ。
 このようにしてまず第1に、 TBS テレビと言うマスメディアのいい加減さ。第2に、神奈川県警本部の杜撰な捜査、いい加減な作り話の操作。これが結局オウム真理教をのさばらせ、組織を巨大化させ、内部でサリンと言う致死率の高い化学物質をを作らせ使わせ、「地下鉄サリン事件」へいたることとなる。

 この前に起こっている松本サリン事件においても、長野県警は重大なミスを犯し、全く無関係の人物を犯人として逮捕し、自白させようとしたが、結局は何も分からずに終わってしまった。これも含めれば少なくとも地下鉄サリン事件を防ぐチャンスは、3回もあったのだ。結局はマスメディアとか警察とか、周りがこぞっていい加減であり杜撰であり、いわばある意味、事件そのものが「人災」のような形で許されてしまったということなのだ。

 このことがどのように教訓化されているのかは、はっきり言ってよくわからない。少なくとも TBS テレビは責任をとって関係番組を終了させ、全国放送で謝罪をした。ただしその時の麻原彰晃をインタビューした人物は、今は国会議員になっている。今現在の TBS を時折見るが、あの時の教訓が生かされたような内容を放送できているだろうか。朝から見るに値しないどうでもいいような番組を放送しているのを見ると、腸が煮えくり返ってくる。
 神奈川県警に至っては、このように総括しました、なんてものは何も聞いたことがない。ただ時間が過ぎれば皆の関心は薄れ忘れていくだろう、といった調子だろう。その後も神奈川県警内では様々な警察官による不祥事が報道されている。とてもじゃないが教訓化なんてものは単なる言葉だけの問題なんだろう。そういえば神奈川県警の本部長による謝罪というのは記憶にない。

 地下鉄サリン事件後逮捕された幹部たちの証言により、初めて坂本弁護士一家3人が殺されたということが判明し、埋められた場所が特定され遺体が掘り出された。二人の遺体は骨だけになっており、一人の遺体は蝋化して無残な状況だったと言う。掘り出された現場に報道陣が入り込んで、警察官たちが脱帽しお辞儀をしていた姿が映し出されたが、はっきり言って何を今更、といった思いだ。当時のこの場面は今現在も、ニュースで報道されたものをよく覚えている。



 このように何度もオウム真理教を追い詰める機会があったのに、それを逃してしまっただけではなく、むしろ結果的にオウム真理教を助けてしまっているという、この無様なメディアと警察の失態を教訓化しない限り、語り継ぐ内容の教訓化ができないということになる。改めてそのことが盛り込まれているならばいいと思うし、もしそこまで入っていないのならば、是非とも入れて欲しいものだと切に願うものだ。


  (画像はTVニュースより)

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