飾り気のないショートカットで落ち着いた大人の雰囲気の清子と、記憶の中の小学校6年の少女
を継ぎ合わせるのには、さして時間はかからなかったが、4つ下の幼かった千恵と赤いマフラーの
女子学生を結び付けるのは少し遅れた。
あやは改めて自分がこの地を去ってから流れた、時の長さを知った。
中学を出て直ぐ札幌の高校に入るために離れてからの10年は、激しい変化の10年だった。
その間、姉妹とは一度も会っていない。
小学校から中学を出るまでの冬の間は、二人の家で暮らした。
一緒の学校に通い、文字通り赤間家の家族となり、二人の姉となって暮らした。
それなのに冬が訪れ、まるで枯れ葉がハラリと落ちるように、二人との関係は途絶えてしまった。
多分に意識的に断ち切ってしまった過去の中に、清子も千恵も入っていた。
あやは二人を眼の前にして、そのことに改めて後めたさを感じた。
清子と千恵の方には、何の拘りもなかった。姉のように接してくれたあやが、自分達を完全に忘
れてしまったのではないかと考えることは悲しいことだった。
恨めしい気持ちもあった。
しかし、彼女は都会という新しい環境の中で、自分達の知らない大人の世界に踏み入ったのだと
思うと、諦めるしかなかった。
その懐かしいあや姉が突然眼の前に現れ、二人は驚きと喜びですっかり混乱していた。
何から話してよいやら、何を話してよいやら分からず、呆然としていた。
「久し振りね、元気でしたか」
清子は気を取り直すように言った。
その言葉を聞いた途端あやは、ああ、彼女はもう社会人として仕事をしている女性だと気付いた。