私の町吉備津

岡山市吉備津に住んでいます。何にやかにやと・・・

千引石

2016-12-27 16:38:26 | 日記

 黄泉の八雷神や千五百の黄泉軍たちは、桃の実に恐れおののき、一斉に逃げ帰ります。仕方ありませんから、その後、イザナミは一人でイザナギを比良坂まで追い掛けて来ます。その時、イザナギは黄泉の鬼どもに登って見せた大石(千引石<チヒキイワ>)を引きずって比良坂に置きます。黄泉の国への出入り口を塞いで、完全に黄泉国と顕国<ウツシクニ>を分けてしまいます。そこへ、イザナミがやってきて、その石を挟んでこの二人は対峙します。
 その時、千引石を挟んで、夫であるイザナギはイザナミに

                “度事戸<コトドヲワタス>”


 古事記伝には、「度」は「申し渡す」の意で、「事戸」については、「事解事<コトトケゴト>」が詰まって出来た言葉で有り、「夫婦同室に住しが、離れて別戸<コトト>に渡り行く」意だと説明が有ります。要するに、「これを境に夫婦の縁を切る」、即ち、三行半をイザナギがイザナミに突きつけたのです。

 でも、イザナミは、その石ため、にっくき夫であるイザナギは姿は見えず、何もできません。悔しくて悔しくてなりません。しかし、女性です。暴言を吐くわけではありません。やおら、言葉優しく、その怒りを押し殺すように、

               “愛我那勢命<ウツクシキ アガ ナセノミコト>”

 と云います。この辺りの文の構成の巧さと云ったら何に例えたらいいのでしょうか。古事記を読む時、私の一番好きな場面です

 “愛我那勢命”と云う声が、周りは何も見えない、しかも、大きな石を声だけが済んだ黎明の風になって飛び越えて聞こえてくるのです。その声を聞いたイザナギの心情はいかばかりだっとことでしょうか??・それについては何も古事記は、残念ですが、伝えていません。私だったら、恐ろしさも何もかも忘れ、大石を飛び越えて、イザナミを我が胸に抱きこむのではと思うのですが。あなたなら?????


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