"Caché"
2005年フランス/オーストリア/ドイツ/イタリア
監督)ミヒャエル・ハネケ
出演)ダニエル・オートゥイユ ジュリエット・ビノシュ モーリス・ベニシュー ワリッド・アフキ レスター・マクドンスキ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
ユーロスペースにて
テレビの人気キャスター・ジョルジュ(ダニエル・オートゥイユ)と出版社に勤めるアン(ジュリエット・ビノシュ)は一人息子のピエロ(レスター・マクドンスキ)とともに、典型的な中産階級の家族として裕福な生活を送っている。
ある日、そんな彼らの家の軒先に何者かが置いていった1本のビデオ・テープ。彼らの家をただ延々と撮り続けただけのテープに初めは初めは取り合わないジョルジュ達だったが、続けて送り付けられてくるテープの中身は段々エスカレートしてゆき、その内容にジョルジュは徐々に幼少時の記憶を呼び起こされる。
冒頭、固定されたカメラで延々と写されるジョルジュの家。通りがかりの人々、時々横切る自動車、通勤に向かうアンの姿。
いつもと同じ朝の光景なのですが、そこに突然声がかぶさり、画面が巻き戻される。そこで観客はそれがビデオ・テープだということに気付く仕掛けです。
今まで観ていた平和な風景が突然何やら不気味なものに観えてくる、そんな軽い驚きを感じるウマイ演出。
自分達の日常だってもしかしたらこんな風に脆いものなのかもしれない、そんなことまで考えさせてしまう見事なツカミです。
それにしてもこの作品、感想が書きにくいです。
基本的にはミステリーなので、どうしてもその肝とも言えるオチに触れたくなってしまう。しかもそのオチがまた分かりにくい、というかどうとでも解釈できるようになっていて。
ラストで全ての謎が解決されることを期待していると肩透かしを食らいます。
むしろ本当の謎解きはそこからはじまるわけで、それは観客ひとりひとりが家に持ち帰らなければならない、という。
一人で観に行くのは辛い作品ですよ。
終わってからどうしても「あれはどういうこと?」と語り合いたくなる。
そこまで含めての作品、という気がします。
ちなみに僕はその「衝撃のラスト」、全く気付きませんでした。
かなり待ち構えていたんですけど、気付かないま画面が暗転。
あそここそ是非巻き戻して頂きたかった(笑)。
全く気付かなかっただけに、何と言うか、この映画の良さを半分も分かってないのではないか、なんて思わされてしまうところもあるのですが、分からなくてもこの作品は十分面白い。
それはこの作品がただの謎解き映画なのではなく、現在のフランス、ひいては世界の不安な空気をしっかり掴み取った、その骨太さにあるのではないか、と僕は思います。
記事の2連チャン、しかも1つは「隠された記憶」とは、恐れ入りました。
本作は、記事にするの大変でしたでしょ?アタクシと同じく、ラストに気がつかなかったのなら、尚更ですよ。この作品に関しては、かなり大胆な解釈をしている方もいらっしゃるので。何だか、益々頭から離れなくなってしまってます。もう、ハネケ監督の仕掛けた蟻地獄から抜け出せる日は遠いですわ。
「グッドナイト&グッドラック」へのコメントでも触れているのですが。アタクシ、この作品の前売り券をまた購入してしまいました。無謀にも、2回目の鑑賞に挑もうとしております。恐らく、2回観たからといって理解が深まるとは思えないです。何度も繰り返し見たからと言って、答えが見つかるタイプの作品ではない気がしております。コレがハネケ監督の罠でも何でもいいんです。この作品に深く感心を持った事に変わりはありませんです。
ところで。Kenさんはスッキリできましたか?この作品。アタクシはパンフレットを読んだだけではモヤモヤは解消できませんでしたよ(泣)。
この記事は確かに書くの難しかったです。
あのオチはこの作品の大テーマにも関わる部分だと思うので(観たときは気付かなかったけど・・・)、そこに触れずにこの映画の良さを語るのはとても難しくて。自分の記事をアップしてから幾つか他の方の記事も拝見したのですが、結構色々な解釈があって面白かったです。何か、改めてブログの良さを再確認してしまいました。
2回目観賞を決心されましたか!
確かにもう一回観たからといって何か新しい手がかりが見つかる、というタイプの作品ではないような気がしますが、謎解き部分を除いても作品そのものに力があると思うので、隣の評論家さんの気持ちはよくわかります。
ちなみに僕はパンフレットを読んでこの作品をわかったような気がしていましたが、皆さんの記事を読んでいてそれも危うくなってきたです(笑)。
いつもレビュー読ませて頂いてます。
私もこの連休中にコレ見てきました。
本当にこの監督の作品はレビューを書くのが難しいですよね。
私もハネケ映画祭に先月通って何作か見ましたが、
レビュー書くのがとても難しかったです。
私は友達と見に行ったんですが、
見終わったあとに色々語れて良かったです。
1人じゃ悶々としちゃうところでした。(笑)
また遊びにきます。
TBもさせて頂ました。
まだ観ていないのでネタバレがなくて
ほっとしましたw
「ブロークンフラワーズ」も謎がありましたが
ぜんぜん違うんでしょうね。
地方なのでまだ公開も決まっていませんが(TT)
楽しみです。
TBもさせていただきました。
そういった心理サスペンス大好きで楽しみにしておりました。ラストはホント訳わからなったですが、“観た人それぞれに解釈していただきたい...”のような監督のコメント記事があったので、自分なりに納得すれば良いのかな?と思いました。
最近理解に苦しむフランス映画は、観た中にはなかったので、これインパクトありました。冒頭のシーン惹き付けられましたよね。
いつも読んで頂いている、ということでありがとうございます!
何を書いてもどこかで映画のオチに触れたくなってしまうんですよね。ただ、そのオチに気付かなかった自分でもこの映画は面白かったですし、また、観終わってから皆さんのブログを拝見するのもまた楽しくて。
これ、ブログが無かったら相当悶々としてたと思います(笑)。
こちらこそ今後とも宜しくお願いします!
考えてみたら、『ブロークン・フラワーズ』も結論放りっぱなしなラストなんですよね。
そういう点では共通する両作品ですが、あまりにも違うテイストの作品なので思いも寄らなかったであります(笑)。
ヤスーさんの記事にもコメントさせて頂きましたが、ハネケの他の作品にも興味が湧いてきました。
特にカフカの好きな僕は『城』とかかなり観てみたいですね。
監督が「観た人それぞれに解釈して頂きたい」と仰っているということですが、うーん、そもそも気付かなかった(笑)。
冒頭のシーン、良かったですよね。何気ない日常が突然不気味なものに見えてくる、という。あそこから一気にひきつけられて、ラストが分からなかったこともあまり気にならなくて。
いや、悔しかったんですが(笑)。
この作品が初ハネケだったのですが、気になる監督がひとり増えてしまいました。
三つもTB連続しちゃいました
ハネケの凄さにあらためて気付かされて
ハネケ映画際でも3つも観てしまいました
もうどんよりですよ
でも、いつも何らかのハネケ流メッセージが込められているところが大好きです。。。。
この作品は今のところ、ワタシの今年のNo1です
理解の薄さを露呈させないためか、
複数人数で観賞している人もあまり語り合っていなかったように思えますw