
"Hundstage"
2001年オーストリア
監督)ウルリヒ・ザイドル
出演)マリア・ホーフステッター アルフレート・ムルヴァ エーリヒ・フィンシェス ゲルティ・レーナー フランツィスカ・ヴァイス ルネ・ヴァンコ クラウディア・マルティーニ ヴィクトール・ラートボーン クリスティーネ・イルク ヴィクトール・ヘンネマン ゲオルク・フリードリヒ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
シアター・イメージフォーラムにて
無目的にヒッチハイクを繰り返す女。異常に嫉妬深い恋人に悩む若い女。子供を交通事故で亡くし離婚した後も同じ家に同居する元夫婦。家政婦に亡き妻の服を着せストリップをさせる偏屈な老人。酒に酔った恋人とその友達によって乱暴な仕打ちを受ける女教師・・・。
夏のある日、ウィーン郊外の住宅地で繰り広げられる異常な人間模様を描いた群像劇。
2001年度ヴェネチア映画祭審査員特別大賞受賞作。
かのヘルツォークが「私はザイドルほどには地獄の部分を直視してはいない」とのたまわった、という不快作。
ウィーン郊外の小奇麗な住宅地、登場人物達はまあ普通の人々。
群像劇とは言え全ての挿話が最後に鮮やかにつながったり、ドラマチックに展開したるするわけでもなく。
じゃあ、何が「地獄」なのかと言うと、それはもう登場人物達の存在そのものが地獄、としか言いようが無い。身も蓋も無いですが。
この映画の登場人物達、とにかくその一挙手一投足がとにかく醜い。
デップリした腹を見せながらストリップするメイドの女性とそれを見つめるやはりデップリした老人。
乱交パーティに出入りする中年の女性。
若い恋人を待つ間念入りに化粧をする女教師。
その体型、その行動、その言葉、全てがとにかく醜悪。
そして狂言回し的に登場するヒッチハイカー・アナ。ある意味無垢な存在である彼女にも監督は容赦ありません。拾って貰った車の中で無邪気に人の欠点を指摘したり、聞かれても無いのになりやすい病気ベスト10をべらべら喋り続ける彼女もとにかく不快。
物語の終盤で彼女にある悲劇が訪れるわけですが、それさえも当然の報いにさえ見えてしまう。
この作品の登場人物、ほとんどが演技経験の無い素人の方々が演じているようです。
僕はこれがこの作品のミソだと思います。つまり、これがプロの役者が演じていたら、不快さをうまく演じてしまい、もっとフィクショナルになってしまったような気が。
素人だからこそ、自然に不快さを出せたというか。
もっと言ってしまえば、演じなくても普通の人間というのはそこにいるだけで不快なものなのかもしれず、それがまさにヘルツォークがこの作品に感じた地獄なのかもしれません。
>普通の人間というのはそこにいるだけで不快なものなのかもしれず
これはまた、とんでもない作品みたいですなぁ。『不快感』のオンパレードという訳ですか。
取り合えず、自称『前向き志向』がモットーの私ですが。こういった不快感に満ちた作品も実は興味がありますね。DVD化したら覗いてみますよ。果たして、不快感の嵐オンパレードの中で、挫けずに前向き発言できるのでしょうか。我ながらミモノでございます。
私もこの作品見ましたー。
素人の役者がほとんどだからあの
現実的な嫌な感じが出せたんだと私も思います。
アナの不快なトークは後半はもう笑ってしまいました~
色々なベスト10も知ってるし、バカと天才は紙一重?(笑)
あえてこの作品を前向きに見るのであれば、「不快感」という「快感」が感じられる、ということかもしれません。何しろこの作品、2時間ビッチリ不快なんですよね。しかもジワジワと。ここまでじっくり不快な作品を見せられると、逆に爽快になってくる!という気がしなくもないです。
あ、あと、あえて言えばラストの場面が若干ホッコリするかもしれないです。相当若干ですが(笑)。
しかしこれ、DVD化されるのかな・・・。
だけど、『バッシング』も随分きつそうな作品ですよね。予告編を観ましたが、これはこれで相当滅入ってしまいそうな・・・。
アナの不快トーク、あそこまでやられると確かに笑っちゃうしかないですね。
しかし、ヒッチハイクで乗せた相手もよく途中までは付き合ってあげるよなあ、なんて別のところでも関心してしまいました。
>バカと天才は紙一重?(笑)
この作品も、不快感と快感は紙一重?な味があったように思います(笑)。
不快なかんじをうまくだしているなーと、結構楽しんでみてしまったりしました。
映倫はどうなっているのか?と思ったり。
>ほとんどが演技経験の無い素人の方々が演じているようです。
そうなのですか。
素人ならではのぎこちなさみたいなものを、不快感としてうまく映画に定着させたのですね。
監督のうまさを感じます。
不快な人間達と不快なエピソード。
どこかでマトモな人たちが出てくるのかなあ、と思っていたら最後までこの調子で。
何だか途中からそれが快感に変わってしまうような妙な感覚を覚えました。
しかしこの映画に出た素人の人たち、出たこと後悔してないかな(笑)。