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セルロイドの英雄

ぼちぼちと復帰してゆきますので宜しくお願いしまする。

【映画】ポビーとディンガン

2005-12-04 16:08:38 | 映画は行

"Opal Dreams"
2005年イギリス/オーストラリア
監督)ピーター・カッタネオ
出演)クリスチャン・ベイヤース サファイア・ボイス ヴィンス・コロシモ ジャクリーン・マッケンジー
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
恵比寿ガーデンシネマにて

オーストラリアのオパール鉱山の町・クーパー・ペディ。アシュモル(クリスチャン・ベイヤース)とケリーアン(サファイア・ボイス)の幼い兄妹は、オパール掘りの父親の元暮らしている。空想の友達ポビーとディンガンと遊ぶケリーアンに兄のアシュモルはいつもイライラし、両親も心配気味。
そんなある日、ケリーアンは、ポビーとディンガンがいなくなったと言い出す。二人を探す振りをする家族だったが、空想の友達を見つけることはできず、父親レックス(ヴィンス・コロシモ)は盗掘の疑いまで掛けられてしまう。
元気を無くして次第に衰弱してゆくケリーアンに、最初はバカにしていたアシュモルも必死にポビーとディンガンを探し出そうとするが・・・。
原作は「21世紀の星の王子さま」とも言われベン・ライスの児童小説。


子供が空想の友達(imaginary friend)を持つことって結構あるそうです。僕自身に思い当たるフシは無いのですが、そういえば、特に欧米の小説や映画にはたまにこのモチーフが使われていたのを思い出します。例えばスティーブン・キングの『シャイニング』。”輝き”と呼ばれる特殊能力を持つ少年は、いつもこのimaginary friendに話しかけていました。

まあ、こういう、いわば子供の他愛ない思い込みというのは、子供が成長するとともに(イノセンスを失うとともに)忘れられてしまう訳ですが、この映画の感動してしまうところは、この子供のイノセンスが家族を救い、ひいてはささやかながらも頑なな大人たちの地域コミュニティーを救ってしまうところです。

美しくも荒涼たるオーストラリアの風景を舞台として繰り広げられるそんなプロット、何とも魅力的なのですが、結局こういう映画でポイントになるのは何と言っても子役俳優の演技力、というか存在感なんですよね。これを外すとどんなに良い題材でも全くダメな映画になってしまう。その点でこの映画は完璧。文句のつけようが無い。想像力豊かなケリーアン、妹を救うべくポビーとディンガンを探しまわるアシュモルとも説得力のある演技です。
とくに、アシュモルを演じたクリスチャン・ベイヤース。妹のimaginary friendを疎ましく思っていた彼が、最後には衰弱する妹の為に一所懸命になる姿、その健気な様が心を打ちます。子役俳優が大成するのってあまり見ませんが、この子は「もしかしたら・・・」と思わせる存在感を感じました。

時にユーモラス、時に乱暴な鉱山町の労働者たちの描写もカッタネオ監督らしい演出で魅力的。ガサツな町の環境とケリーアン&アシュモルの無垢さがコントラストを成し、さらに良い味を出しています。

単館上映というのはちょっと勿体ない、温かい映画。
原作も読んでみようと思います。
コメント (14)
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【映画】フリークス(デジタルリマスター版)

2005-11-17 23:21:26 | 映画は行

"Freaks"

1932年アメリカ
監督)トッド・ブラウニング
出演)ハリー・アールズ オルガ・バクラノヴァ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
ライズXにて

サーカスの一座。小人のハンス(ハリー・アールズ)は花形ブランコ乗りのクレオパトラ(オルガ・バクラノヴァ)に恋をする。サーカスで働くフリークス達を軽蔑しつつも、ハンスが莫大な遺産を相続したことを知ったクレオパトラはハンスと結婚した上で彼を毒殺しようとするが・・・。
実際のフリークス達を役者に起用し、そのショッキングなヴィジュアルから当時各国で上映禁止の憂き目に会った恐怖映画の古典。


当時の基準からすると恐怖映画なのでしょうが、今観るとその点ではそれほどのインパクトは無い。むしろ至極全うな勧善懲悪映画です。悪人がキチンと悪事の報いを受けるので後味はスッキリ。

そんなありきたりなプロットなのですが、この映画を古典化させているのはその役の振り方。世間からはみ出した者達を生き生きとしたヒーローに、ノーマルな者達をギスギスした悪役に据えたところですね。
この映画の精神、今の映画監督達にも相当影響を与えていると思います。
デヴィッド・リンチとかティム・バートンなんか大好きだろうなあ。
「コープス・ブライド」なんて発想が結構似てます。絶対意識してると思う。

なにしろ1932年の白黒映画。画面のフチが黒っぽくなってたり、映像のザラツキ感もまた味わい深い。60分強の小品ではあるけれど、こういう映画は映画館の暗闇で観てこそ味が出る、と僕は思います。
コメント (14)
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【映画】ブラザーズ・グリム

2005-11-09 01:31:23 | 映画は行

"The Brothers Grimm"

2005年アメリカ
監督)テリー・ギリアム
出演)マット・デイモン ヒース・レジャー モニカ・ベルッチ ジョナサン・プライス レナ・ヘディ ピーター・ストーメア
満足度)★★☆ (満点は★5つです)
ワーナー・マイカル・シネマズ市川妙典にて

18世紀末、ナポレオン体制のフランスに支配されたドイツ。グリム兄弟(マット・デイモン、ヒース・レジャー)は、いまだ魔女や魔物の存在を信じる迷信深い民衆を相手に、自作自演の魔物退治の詐欺をして金を稼いでいる。フランス軍に咎められ捕らえられた2人は本物の魔女退治をする破目に・・・。
グリム童話が随所に散りばめられた、グリム兄弟の架空の冒険譚。


「未来世紀ブラジル」「12モンキーズ」等、商業作品でありながらも異色作を作り続ける鬼才テリー・ギリアムの7年振りの新作。
しかも今回はテリー・ギリアムが本来得意としているちょっといかがわしい歴史モノ。いや、期待してしまいますよね。

そういう訳で評価基準も高くなってしまう訳なのですが、これ、微妙な出来でした。 カタツムリを使った拷問装置(?)とか、テリー・ギリアムらしい意匠はそこかしこに散りばめられており、その度にちょっと嬉しくなるのですが、そもそもプロットがちょっと退屈。魔女退治の為に何回も森に出たり入ったりするのですが、これがすごい冗長。クライマックスに行き着く前に疲れてしまいました。

また、僕は、ギリアムの魅力の一つは極端にカリカチュアライズされた人物造形にあると思っています。が、それも、まあ今回ピーター・ストーメア演じる拷問師カヴァルディが多少”らしい”感じはしましたが、肝心の主人公2人がどうにも魅力がない・・・。

ということで★★☆。
★★+モニカ・ベルッチの鏡の魔女に☆。
コメント (25)
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【映画】ハックル

2005-11-05 11:15:14 | 映画は行


"Hukkle"
2002年ハンガリー
監督)パールフィ・ジョルジ
出演)バンディ・フェレンツ ラーツ・ヨージェフネー ファルカシュ・ヨーゼフ
満足度)★★★★☆ (満点は★5つです)
シアター・イメージフォーラムにて

ハンガリーのある村。しゃっくりの止まらないチェクリックおじいさん(バンディ・フェレンツ)は今日もミルクを傍らに家の前のベンチに座っている。おじいさんの目の前を行き交う村人たちや動物たち。のどかな生活を送っているかに見える彼等。しかしよく見てみると、何かがおかしい・・・。
"Hukkle"はハンガリー語で「しゃっくり」という意味だそうです。


とんでもなく不思議な映画です。何ていうんでしょう、デヴィッド・リンチが脚本を書いてクストリッツァとキアロスタミが共同監督した感じというんでしょうか、とにかくカテゴライズしづらい映画です。
この作品、ジョルジ監督の映画学校の卒業制作らしいですが、だとしたら、とんでもない才能ですよ。

村人達と家畜や周辺に住む動物達の生活が淡々と描かれるのですが、その描写が細かくてリアルすぎて、逆にリアルに見えないんです。ヘビ、コウノトリ、テントウムシ、ブタ、ヒツジ、モグラ、ネコ、そして人間の営みが並列に、何の感興もなく、ただ淡々と画面に現れる。

そして、人(主に男)が不自然に死んでゆく。何か悪いことが村で起こっている気配なのですが、最後まで何の説明も無し。放りっぱなし。それとなくおぼろに仄めかされているような気もするのですが、それも定かではない。それだけに不気味。観賞後、騙されたような騙されていないような、妙な気分になります。

あ、この映画セリフは一言もありません。動物の鳴き声とか自転車とか機械の音のみ。人間もぼそぼそ喋っているのですが動物の鳴き声と同じ扱いです。だけど不思議と飽きない。

人に勧めるのに勇気が要る映画で、怒り出す人もいるのでは?という気もするのですが、変わった映画体験をしたい方は是非。
僕はこの映画大好きです。

コメント (10)
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【映画】ビッグ・ウェンズデー

2005-10-31 22:58:30 | 映画は行


"Big Wednesday"
1978年アメリカ
監督)ジョン・ミリアス
出演)ジャン=ミッシェル・ヴィンセント ウィリアム・カット ゲイリー・ブゼイ
満足度)★ (満点は★5つです)
WOWOWにて

サーフィンに明け暮れる3人の青年の成長を、1962年から1974年のアメリカ激動の時代を背景に描く青春物語。ただただバカ騒ぎをしていた1962年、時代と共にベトナム戦争に巻き込まれてゆく1965年、離れ離れになる1968年を経て、伝説の大波を迎えた1974年、3人は再びカリフォルニアに集まる。

サーフィン映画の、そして青春映画の古典としてよく紹介される映画ですが、うーん、あまり面白くない。この映画は、同時代を生きたアメリカ人じゃないとちょっと感情移入できないんじゃないでしょうか?1962年から1974年という興味深い時代を舞台にしているのですが、ただその時代をなぞってるだけでこちらに迫ってくる何かが足りない気がします。
さらに、主人公達が無邪気すぎて、イライラしてくる。

クライマックスで、伝説の大波を前に主人公が一人で挑戦しようとしている所に連絡の取れなかった仲間達が集まってくるのですが、これも何か白々しい。
全然乗れなかったなあ。ここまで乗れない映画も久しぶりです。

もしかしたらサーフィンをするする人は面白いのかな?
サーフィンのシーンは迫力があるように見えなくもないですが、もしかして凄いのかな?

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【映画】ブルース・オールマイティ

2005-10-18 21:42:26 | 映画は行


"Bruce Almighty"

2003年アメリカ
監督)トム・シャディアック
出演)ジム・キャリー モーガン・フリーマン ジェニファー・アニストン
満足度)★★★ (満点は★5つです)
WOWOWにて

ブルース・ノーラン(ジム・キャリー)はニュー・ヨーク州バッファローのローカルTV局のレポーター。アンカーマンの座をライバルに取られた彼は、自暴自棄になって局を追い出され、彼女のグレース(ジェニファー・アニストン)ともうまく行かない。街をさ迷い神を呪う彼の前に本物の神(モーガン・フリーマン)が現れ、「それならばお前が代わりにやってみろ」と全能の力を与えられる。有頂天になってその力を好き放題に使うブルースだったが、それがやがてバッファローの街に大きな混乱を惹き起こす。

「自分が神になったら?」という、ゴダールが撮ったらとっても訳がわからないモノになってしまいそうな題材を扱った映画。もちろん監督はゴダールではなく「ナッティー・プロフェッサー」「ライアー・ライアー」「エース・ヴェンチュラ」のトム・シャディアックですから、お気楽なポップコーン・コメディになっています。

「もし透明人間になったら?」と聞かれたら、「女子更衣室を覗く」とかお約束の下世話な答えってありますよね?主人公のブルースはそのレベルの男です。なにしろ全能の力を持ってもロクなことに使わない。彼女との夜をロマンティックにするために月を引き寄せたり、特ダネをものにする為に隕石を落としてみたり。神の自覚なし。そんなブルースを、ジム・キャリーが嫌味なまでに能天気に演じています。

神の力を使うとほぼ何でも出来てしまうのですが、唯一操れないのが人間の意思。そう、本物の奇跡は人間の意思が産み出すものなのだ!ということが神(モーガン・フリーマン)の口からありがたく語られ映画は大団円になだれ込む、という恐ろしく常道な終わり方をします。
何の破綻も無し。

観てる間は楽しいけど2時間後には何も残っていない、という潔いハリウッド映画ですね。悪くないけど、ジム・キャリーが出てなかったら観てなかったかも。

コメント (2)
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【映画】プライマー

2005-10-11 23:25:08 | 映画は行

"Primer"

2004年アメリカ
監督)シェーン・カルース
出演)シェーン・カルース デヴィッド・サリバン
満足度)★★★☆ (満点は★5つです)
ライズXにて

エンジニアのアーロン(シェーン・カルース)とエイブ(デヴィッド・サリバン)は仕事の傍ら仲間達とオリジナルの機械製品開発に勤しみ起業を目指しているが、開発は思うように進まない。資金繰りもうまく行かず身の回りのモノを部品として流用して開発を進める彼等だが、偶然タイム・マシーンを作り上げてしまう。
2004年サンダンス映画祭審査員賞受賞作。


尋常じゃなく難解、という評判を聞いて最悪寝る覚悟をして行ったのですが、いや、結構面白かったです。

内容は確かに難解です。意味がわからない。タイム・マシーンで行ったり来たりしている主人公達が、どいつがいつのそいつで、あいつはいつのあいつなのか、全く理解できません。ラスト20分ほどで謎解きらしきことをしているようなのですが、それが謎解きとは思えない。むしろ謎は深まるばかり。もう完全に置いていかれている自分に呆然とします。

だけど、ここで理解を諦めた所から「この映画面白いかも」という気がしてきます。そもそもこの映画、新人の低予算映画らしく手振れしまくりの粒子の粗い映像で、素人のような主人公達にも華がない(映像の雰囲気はブレア・ウィッチ・プロジェクトに似ています)。そこがドキュメンタリー的な面白さに繋がっています。
さらに、監督(兼主人公)は実際にエンジニア出身ということで、セリフも理系用語がバシバシ出てきます。そういうディテールに現実味があるので、ベンチャー起業者の開発の現場を観ているような趣があります。
雰囲気はちょっと変わった「プロジェクトX]。

本筋である、タイム・マシーンで過去と現在を行き来することによって何が起こるか、とかそういう部分をきっちり理解したい、という方には決してお勧めできるシロモノではありませんが、こういう映画も全然ありだなと僕は思いました。

しかし、サンダンスの審査員の人達ってこの映画、キッチリ理解できたのかな?
コメント (6)
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【映画】ヒトラー ~最期の12日間~

2005-09-04 13:58:58 | 映画は行

2004年ドイツ
監督)オリヴァー・ヒルシュビーゲル
出演)ブルーノ・ガンツ アレクサンドラ・マリア・ララ
満足度)★★★★ (満点は★5つです)
シネマ・ライズにて

-----あらすじ-----
第2次大戦末期。西進してきたソ連軍の猛攻に会い、ドイツ第三帝国の崩壊は目前に迫っている。総統ヒトラー(ブルーノ・ガンツ)とその側近達は首都ベルリン市内の総統用防空壕にこもり最後の抵抗を試みるが、ソ連がベルリンに迫るにつれ結束は崩壊、防空壕内は混乱に陥ってゆく。

-----感想-----
私人としてのヒトラーとはどのような人物だったのか?
アンケートで世界10大悪人を尋ねたとしたら間違いなくトップ5に入ってくると思われるアドルフ・ヒトラー。この人物の歴史的評価は悪人の一つの典型としてほぼ定まっていると思われます。

この映画は、観客が皆ヒトラーが行ってきた悪事を知識として当然持っている、ということを前提に作られています。汎アーリア主義の元苛烈に行われた「民族浄化」等について、この映画では全く言及されません。それは製作者がこの事実を無視、美化している訳ではなく、観客が認識していることを期待しているからだと思います。その上で、私人ヒトラーとはどのような人間だったのか、を丁寧に掘り下げてゆきます。

結果として、私人ヒトラーは弁舌巧みで押し出しが強く少々エキセントリックな、だけどまあ普通の範疇に入る人物であることが浮き彫りになります。そう、私人ヒトラーは普通の人物です。決して、その公人としての悪行に見合うドラマチックな人物ではありません。ここが恐ろしいところです。たまたま歴史的な運(幸運といって良いのかわかりませんが)によって、たまたま総統にまで登り詰めてしまったどこにでもいる人間。それがヒトラーであることに観客は思い至ります。もしかして、周りの人に思いを馳せて「ああ、あの人に似てるな」とさえ考えるかもしれません。

色んなことを考えさせる重たい映画ですが、戦争をめぐる群集劇としてもよく練れています。ブルーノ・ガンツはもうヒトラーにしか見えなくて、名演なのかどうか良くわかりません。。。
コメント (12)
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