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田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

沖端水天宮の舟舞台と白秋の「思い出ー」

2025年05月12日 | 柳川

 ここ数年、五月の連休に沖端水天宮の春大祭見物で柳川を訪れています。時刻は夕方の五時、沖ノ端の近くではこの日の川下り運航を終えたどんこ船が舫われていました。

 沖ノ端の船着き場。掘割の両側には名物の鰻料理や飲食店が並んでいます。修景工事のため、一時的に柳並木が取り払われていて掘割の風景が変わりました。

 沖端水天宮はごく小さなお宮で、水天宮のほかに稲荷社、祇園社が祀られています。

 水天宮そばの掘割では三神丸で子ども達による水天宮囃子が始まっていました。三味線、笛、大小の太鼓による賑やかな囃子で、オランダ囃子とも呼ばれています。三神丸は六隻の小舟の上に釘を使わず舞台を組んだものです。

 明治生まれの詩人、北原白秋の母校は近くにある矢留小学校です。彼は「思い出ー抒情小曲集」の中で、「五月の水路(すゐろ)に杉の葉の飾りを取りつけ初めた大きな三神丸(さんじんまる)の一部をふと學校がへりに發見した沖ノ端の子供の喜びは何に譬へよう」と少年時代の思い出を懐かしく語っています。

 入れ替わりに旅芝居が始まりました。

 舟を飾る杉の葉、造花、艫にある化粧部屋との仕切り、幕間に下ろされる三方の御簾など舟の造作は白秋の時代から変わっていません。

 再びオランダ囃子が始まり、舟が動き出しました。法被姿の町衆が竹竿を操り、舟は水路を上がっていきます。

 「粹な町内の若い衆が紺の半被(はつぴ)に棹さゝれて、幕あひには笛や太鼓や三味線の囃子面白く、町を替ゆるたびに幕を替え、日を替ゆるたびに歌舞伎の藝題(げだい)もとり替えて、同じ水路を上下すること三日三夜」 (思い出ー抒情小曲集より)

 「三神丸」はこの掘割をお囃子を演奏しながら行きつ戻りつします。舟舞台は水天宮と沖ノ端地区の6町内それぞれに奉納するため、舟を止める場所は決まっています。この堀の正面は殿の倉と呼ばれている立花家史料館です。

 水天宮春大祭では、いまも夕方から夜まで三日三夜にわたって舟が行き来し、囃子や芝居が催されます。子どもたちは祭りのために練習を積んできました。

 今度は一座の踊りが始まりました。

 日が落ちて薄暗くなってきました。夜になり、舟舞台に明かりが灯ると水郷柳川の情緒がいや増してきます。

 沖端水天宮はこの時間でも参拝者が列をなしています。

 駐車場への帰り道。御花の西洋館が残照に浮かんでいました。

 「見物は皆あちらこちらの溝渠から小舟に棹さして集まり、華やかに水郷の歡を盡くして別れるものゝ、何處かに頽廢の趣が見えて祭の濟んだあとから夏の哀れは日に日に深くなる。

 この騷ぎが靜まれば柳河にはまたゆかしい螢の時季が來る」

                      北原白秋「思い出ー抒情小曲集」より

 

 

 

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5 コメント(10/1 コメント投稿終了予定)

コメント日が  古い順  |   新しい順
沖端 (FUSA)
2025-05-12 11:05:41
沖端にもしばらく行っていませんが、水天宮さんではこんなお祭りがあるんですね!
また近いうちに柳川行を計画したいと思います(^^♪
返信する
こんにちは (九州より)
2025-05-12 13:30:57
柳川は秋には三柱神社の「おにぎえ」があるなど、昔の祭りが継承されていますね。
いまだに旧藩主の存在感がある町です。
こんどは川下りの風景を撮りに行こうかと思っています。
返信する
柳川の祭り (FUSA)
2025-05-12 14:32:22
そうなんですね~
実は私の住まいは柳川藩ゆかりの地で、子供の頃から柳川に親近感があります。
できましたら、貴記事の写真をスクショして使わせていただけないでしょうか?よろしくお願いいたします。
返信する
FUSA様へ (九州より)
2025-05-12 18:34:07
柳川に関する記事は「柳川」のカテゴリーにまとめています。
写真はご自由にお使いください。
返信する
ありがとうございます! (FUSA)
2025-05-12 23:16:09
ありがとうございます!
近々、柳川関連の記事を書きたいと思っています。
カテゴリー「柳川」の記事も参考にさせていただきます!
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