山はしろがね

ロシア文学/スキー@稚内(~2017.3)

少子化時代の人文研究

2016-07-04 12:05:20 | ロシア

 北海道大学で開催された日本ロシア文学会北海道支部会に行ってきた。

 この支部会に行くのも21年目になった。昔の中堅の先生方も、かつての大御所の先生たちと同じような年齢になっている。その頃、大学院生だった人たちも、今ではもう40代だ。

 この20年の間には育志賞を取った松下君のような優秀な研究者もポツポツと現われたが、習作的な発表もまだまだ多い。むしろ、鈴木淳一先生のようなヴェテランの方のコメントが際立ってしまう。大学院の修士課程という短い期間で実力を急成長させることはなかなか難しいし、社会に出ればいろいろな雑事に追われるわけだから、それも当然である。私なんか30年も研究の世界にいるのに、たいして成長していない。

 学部や大学院でロシア文学を積極的に学んでいる者の数は、かつてよりも大きく減ったように見える。『高学歴ワーキングプア』みたいな本が出たり、国が文系不要論を唱えたりするという事情もあるだろうが、そもそも少子化の上に大卒の就職状況も悪くないなのだから、大学院でドストエフスキイを研究しようとする学生が続出するというわけにもいかないだろう。

 ただ、これまでは第2外国語教育の観点から「ロシア語学習者」の減少を嘆く声が多く、メドヴェージェヴァのセーラームーンのコスプレが流布したりするだけで、うれしいなあと思ってしまったりしていたのだが、若い世代に「ロシア文学」に目を向けてもらうにはどうしたらいいか、ということも、少し考えた方がいいだろう。10年近く前のカラマーゾフ・ブームにいつまでも頼っているわけにもいくまい。

 そんなことを考えるのも支部長なんかさせられているからなのだが、これは私より下の世代の中堅研究者に引き継ぐためにと思って引き受けたものなので、学会の理事会に出たりするのも来年の夏までだ。ロシア文学研究を志す若手を大学院で育てる、という仕事に就く夢はかなわなかったようなので、それはその道の幸運な方々に任せ、私自身は文学研究からは距離を取って、初歩のロシア語教育の世界に沈潜することになる。それまでの短い間だが、できることがあれば何かすべきなのだろう。とりあえず、この秋には北大で全国大会があるのだが、それが終わったら支部活性化のために何ができるかをもう少し考えねば、とは思っている。