山はしろがね

ロシア文学/スキー@稚内(~2017.3)

井の中の蛙

2017-03-20 00:49:46 | 魚眼図
 今週末に稚内を離れることになった。  東京の大学には10年間いたが、稚内の21年間ではそれ以上のことを学んだ。稚内に赴任した当時の私はまだ20代で、1920年代のロシア文学についてはそれなりの知識はあっても、自分なりのロシア観もなければ、充分なロシア語運用能力もなかった。授業の運営も手探りだった。大学制度もよく分かっていなかったし、田舎の社会のルールもまるでわかっていなかった。  私が働き始 . . . 本文を読む

坂本保さん

2017-02-15 23:07:33 | 魚眼図
 82歳の現役パトロール、坂本さんのことを、『北海道新聞』夕刊のコラムに書いた。  執筆にあたって、本人に取材した。樺太生まれだとは聞いていたが、白主の出身だったなど、新しい情報を知ることができた。  坂本さん夫婦と知り合わなければ、私はここまでスキーを熱心にやっていなかったはずで、その場合、稚内での生活はもっと寂しい退屈なものになっていたはずで、だから大恩人である。周囲の条件を変えるのではな . . . 本文を読む

ロシア革命100周年

2017-02-01 18:31:52 | 魚眼図
 今年はロシア革命100年にあたるのだが、現代のロシア人はそれぞれの立場から何を思うのだろうか、という内容のエッセイを先月、北海道新聞に掲載した。プーチン政権が記念行事をするらしいことや、スラヴニコヴァ『2017』などにも言及している。  岩本和久「ロシア革命100周年」『北海道新聞』2017年1月24日夕刊、5面。  ロシア産カニの輸入に湧いた1990年代の稚内の活気もソ連解体の結果、つまり . . . 本文を読む

「戦争と平和」は成人向け?

2016-12-05 23:59:59 | 魚眼図
 ロシアの学校での文学教育だが、『戦争と平和』や『罪と罰』をきちんと理解するのは生徒には難しいからカリキュラムから外すべきではないか、それよりも聖書でも読ませた方がいい、という意見がこの秋にその筋の偉い人から出て、議論となっていた。http://www.mskagency.ru/materials/2593774  それについて北海道新聞のコラムで紹介したのだが、こういう中世回帰のような動きとい . . . 本文を読む

GTO

2016-11-04 20:44:49 | 魚眼図
 プーチン期になってから、ロシアでGTO(「労働と国防への備え」と呼ばれる、ソ連の体力テスト)が復活したのだけれど、これはソ連へのノスタルジーというわけではなく、どうやらスポーツ省が本気で取り組んでいるらしい、というエッセイを、『北海道新聞』のコラムに書いた。  岩本和久「GTO」『北海道新聞』2016年11月1日夕刊、5面。  スポーツ省に併設されたスポーツ博物館を10月に訪問したのだが、そ . . . 本文を読む

中国という鏡

2016-10-14 23:31:25 | 魚眼図
 9月13日に北海道大学スラブ・ユーラシア研究センターで開催された特別セミナー「現代中国におけるロシア文学受容」について、『北海道新聞』にコラムを書いた。  岩本和久「中国という鏡」『北海道新聞』2016年10月7日夕刊、5面。  今の日本よりも盛んにロシア文学を翻訳しているように見える中国だが、それはリアリズム的傾向の作品に顕著なのであり、ポストモダニズムの作品はさほど翻訳されていないらしい . . . 本文を読む

わがふるさとマップ

2016-09-15 22:50:03 | 魚眼図
 7月の初めに見つけた、雄武の道の駅の「わがふるさとマップ」について、北海道新聞夕刊のコラム「魚眼図」で紹介した。  岩本和久「わがふるさとマップ」『北海道新聞』9月9日夕刊、6面。  戦中戦後の少年時代の記憶が、ひとつの小宇宙を作っているように重ねられる。佐藤元治郎さんという北見の印刷所を経営されている方の作品で、地図の写真は「広報おうむ」にも掲載されている。http://www.town. . . . 本文を読む

ウィスキーの性別

2016-08-17 22:39:26 | 魚眼図
 ロシア語では е で終わる名詞は中性なのだが、кофе(コーヒー)は例外的に男性である。これは初学者がうっかりする部分で、大学1年生の前期末試験とか、ロシア語検定の4級とかでよく出題されたものだ。  同様に外来語の бренди(ブランデー)は男性なのだが、同じ и で終わる飲み物でも виски(ウィスキー)は中性だ。このあたりは教科書や試験で見た記憶はあまりないのだが、ソ連の人はブランデー . . . 本文を読む

鉄の町

2016-07-18 21:26:38 | 魚眼図
 昨年、東ドイツのスターリン化についての研究書の書評を書いていたのだけれど、その折、社会主義体制下の東ドイツに作られた労働者の町スターリンシュタット(現在はアイゼンヒュッテンシュタット)について調べてみたところ、最近は縮小都市論の世界で注目されているということを知った。  この春に刊行された服部圭郎『ドイツ・縮小時代の都市デザイン』(学芸出版社)でも、1章が割かれている。  そんな話を北海道新 . . . 本文を読む

リュリ兄弟商会

2016-06-03 23:54:02 | 魚眼図
 ゴールデンウィークの小樽訪問と、その後のミロノフさんとのやり取りについて、北海道新聞にコラムを書いている。  岩本和久「リュリ兄弟商会」『北海道新聞』2016年6月1日夕刊、5面。  コラムの中で触れたミロノフさんのブログのURLは以下の通り。ユダヤ人の立場から尼港事件について語られていて興味深い。  http://yehudi-yapani.livejournal.com/84395.h . . . 本文を読む

幻の橋

2016-05-16 23:59:59 | 魚眼図
 そういえば、もう10日も前のことだが、糠平のタウシュベツ川橋梁についてコラムを書いていたのだった。  岩本和久「幻の橋」『北海道新聞』2016年5月6日夕刊、7面。  廃線の風景の多くはかつてそこに列車が走っていた時代を想起させるのだけれど、タウシュベツの橋の幻想的な風景はそういう具体的な歴史を超越しているのだよなあ。ただただ白い雪原が広がっていて、ただただ美しい橋がその中に浮かんでいる。 . . . 本文を読む

運び屋

2016-04-02 23:56:08 | 魚眼図
 運び屋をマッチングするかのような海外の怪しげなサイトについて、千葉大の鳥山さんとの間でツイッターでやりとりがあったのだが、それをもとに新聞にコラムを書いた。  岩本和久「運び屋」『北海道新聞』2016年4月1日夕刊。  ロシア人は公的なサービスよりも赤の他人を信じるという、ロシアの郵便事情をめぐる鳥山さんの発言(ロシア人は郵送よりも、人に預けることを好むのである)は的を得たものだが、ロシア人 . . . 本文を読む

手を叩く

2016-02-25 00:55:33 | 魚眼図
 寒い夜が続くね。  スキー場のリフトの上で手を叩いている娘を見ていたら、『オネーギン』の一節(И кучера, вокруг огней, Бранят господ и бьют в ладони)と、その個所に触れた川端香男里先生の演習を思い出したので、それらについて北海道新聞にコラムを書いた。  岩本和久「手を叩く」『北海道新聞』2016年2月18日夕刊、5面。  東大の授業で寒い . . . 本文を読む

公正な競走

2016-01-27 10:34:23 | 魚眼図
 しばらく前のことなのだけれど、ロシアのドーピング問題について、北海道新聞にコラムを書いていた。  岩本和久「公正な競走」『北海道新聞』2016年1月12日夕刊、5面。  フェアネスというのは建前にすぎないのかもしれないけれど、その理想は大切にしなければならないと思うのだ。 . . . 本文を読む

広告のない地下鉄駅

2015-12-09 17:05:23 | 魚眼図
 10月にモスクワを訪れた時、地下鉄駅の広告が取り払われていることに気づいたのだけれど、それについて北海道新聞にコラムを書いた。  岩本和久「広告のない地下鉄駅」『北海道新聞』2015年12月8日夕刊、5面。  モスクワの地下鉄では構内にトイレを設置するという実験をしていたのだけれど、最近、その実験が終わったという報道も見つけた。今後、地下鉄駅にトイレが出現することはないかもしれないから、10 . . . 本文を読む