泉を聴く

徹底的に、個性にこだわります。銘々の個が、普遍に至ることを信じて。

よだかの星

2020-12-21 18:55:02 | 読書
「すばる文学賞」を意識するようになり、一緒に意識に浮上してきた「よだかの星」を絵本で買って読みました。
 もう一冊ずつ買って、それは「ブックサンタ」しました。
「ブックサンタ」は、クリスマスの時期に恵まれない環境に置かれた子供たちに絵本を届けるチャリティー活動。提携した書店で買うだけで、あとはNPO法人の方々がサンタクロースになって子供たちに届けてくれます。
 左側は中村道雄さんの組み木絵、右側は佐藤国男さんの版画。どちらも味わい深い。
 この物語、自分自身が心を燃やして精一杯生きることが大事なんだと、私は読み取ります。
 でも、鷹に「市蔵」という名前に変えろと迫られ、そうしなければ殺すとまで脅され、よだかのとった行動。それは天高く舞い上がり、己が星となって輝き続けるというもの。「死」からは免れなかったんだと思う。死んでも輝き続けるという星の存在は永遠を想像させます。
 この物語も、賢治は結核で闘病中の妹に語って聞かせたのでしょうか? もしそうだとするなら、そこには救いがあります。
「死」は、理不尽にも向こうから強制される。鷹に象徴される死に、でも飲み込まれはしなかった。自らが舞い上がって星となる。鷹に殺されたのなら、星になることはできなかったでしょう。
 今でも輝いているのは宮沢賢治の物語。それこそが不死。兄と妹が願ったことでもあるでしょう。
 自分がいなくなった後の世界まで想像する。そこにまだ人々を支えうるものを残していけたか?
 ガソリンに頼る時代は終わろうとしている。本気で持続可能性を追求しないと地球で暮らせなくなってしまう。
 絵本もまた未来永劫輝くことを願って創造された星に違いありません。
 どうか必要な子たちに届きますように。
 星は人そのものだから。

 宮沢賢治 作・中村道雄 絵/偕成社/1987 宮沢賢治 文・佐藤国男 画/子どもの未来社/2017

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